*** 筒井筒のお約束をもう一度・・5<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






*** 筒井筒のお約束をもう一度・・5<高彬・初夜編> ****










一緒に寝ましょうよ、って・・・。

見る見る顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。

馬鹿。こんなところで赤くなるなよ!

そういうことを考えていたと勘違いされるじゃないか。

いや、まったくの勘違いというわけではないんだけど・・・。

いや、しかし・・。

頭の中でめまぐるしく考えていると

「童の頃は、融と3人でよくお昼寝してたんだし・・・」

まるでぼくの心を見透かしているかのような瑠璃さんの言葉が聞こえ、ぼくは苦笑いしてしまった。

背伸びをしてみても、やっぱりぼくは年下なんだな。

お見通しってことか・・・。

そう思ったら、言い繕ってもしょうがないと思えてきて

「今、瑠璃さんの隣で寝たら、何するか・・・自信がないから」

と正直に言ってしまった。

あのまま接吻を続けていたら、きっと歯止めが利かなくなっていた、と思う。

「だから、あちらにいるよ。瑠璃さんは安心して早く休むといい」

瑠璃さんの返事を待たず、倒れていた几帳を直しながら回り込むと、格子のそばに腰を下ろした。

今夜はここで宿直だ。

権少将との応酬や、瑠璃さんとの初めての接吻で、気持ちが浮き足立っているのが自分でもわかる。

権少将のことはともかく、瑠璃さんと接吻をしたと言うことがまだ現実の出来事とは思えない。

まずを心を落ち着かせなくては。

月の見えない夜、釣燈籠の灯りだけが部屋に差し込んできており、ぼくはその灯りが作る格子の影をじっと見つめた。

どれくらいの時間がたったのか、瑠璃さんが眠りについたような気配を感じ、ぼくはそっと立ち上がった。

散乱したままになっている巻物を拾い上げ、なんとはなしに文字が目に入ると、それは今、都で評判の「源氏物語」で、ぼくは眠っている瑠璃さんの方をまじまじと見てしまった。

瑠璃さんは日頃から「物語を読むなんて大嫌い」と豪語していて、確か、遠い親戚から届けられたという源氏物語に見向きもしてなかったはずだ。

その瑠璃さんが源氏物語を・・・・。

なんとなく微苦笑を誘われて、同時に嬉しくなってくる。

いったい瑠璃さんにどんな心境の変化があったのか、それはわからないけれど、なんだかぼくには少しだけわかる気がして、このことは瑠璃さんには言わないでおこうと思った。

なぜなら、この一週間の間、ぼくはがらにもなく古今和歌集なんか広げてしまっていたからだ。

もしかしたら、恋の歌でも詠む場面が増えてくるんじゃないか────、なんて思って。

そして、もしそのことを瑠璃さんに知られてしまったら、死ぬほど恥ずかしいと思うからだ。

結婚の返事ももらっていないのに恋の歌の勉強をしているなんて、そんな先走るような心弾みを、やっぱり好きな人には知られたくないし。

好きな人、か・・・。

そっと瑠璃さんの顔を覗きこんでみる。

ふっくらとした頬に少しほどけた唇の、なんとも無防備な瑠璃さんの寝顔があった。

正直、瑠璃さんとの接吻を・・・想像したことはあった。もしかしたら、それ以上のことも。

だけど、それは想像してるだけで、瑠璃さんを目の前にすると、とてもじゃないけどそんなことは出来ないと思えてくる。

それは接吻をした今でも同じで、例えばこうして目の前に瑠璃さんがいるのに、ぼくは絶対に手が出せない。

さっきの権少将のように力にものを言わせて女の人をどうこうしようなんて、本当に最低なやり方だと思うし、それよりも本当のこと言って───

そんなことして瑠璃さんに嫌われるのが怖い。

もしぼくが瑠璃さんを力づくで自分のものにしたとしたら、そんなぼくのことを、きっと瑠璃さんは一生許さないだろうと思う。

紳士的だとか、行儀がいいとか、そんなんじゃなく、ただただ嫌われるのが怖い。

無理強いして嫌われるくらいだったら筒井筒のままでもいい、なんて思う気持ちすらある。

どれだけ瑠璃さんが好きなんだ、とちょっと自分に呆れてしまう時もあるけど、まぁ、しょうがない。

ぼくは瑠璃さんに、ぼくのことを好きになってもらいたい。ぼくが瑠璃さんを好きなように。

かっこつけた言い方になるけど、ぼくが欲しいのは瑠璃さんの心だからだ。

その上で、まぁ、ロコツな言い方になってしまうけど・・・その・・・抱きたいと・・・思っている。

やっぱりぼくは男だし、そういうことを考えてしまう。

結婚の約束が果たせた今、そう遠くない時期にそういうことになるのかも知れないけど・・・・。

だけど、ぼくが瑠璃さんを抱くなんて・・・そんな日が本当に来るのかなぁ・・・。

ぐっすりと眠る瑠璃さんの顔を、ぼくはもう一度、覗きこんだのだった。








<続>


ちょっと小休止して、次回は「現代編・バレンタインSS」を更新する予定です。
いつもご訪問ありがとうございます。



(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Cさま)

原作でも「普段のポーカーフェイスも吹き飛んで・・」と言う表現がありましたよね。
冷静に見える高彬も、内心はドキドキしてたはず。
だって15歳ですも~ん(笑)
バレンタインSS、更新しました!続きは14日にアップしますので、また読んでくださいね。

非公開さま(Kさま)

Kさん、こんにちは。

氷室先生も「高彬を男性作家にお貸しして、男心を書いてもらいたい」と言う様なことを、あとがきで書かれていましたよね。
ほんとのところの「男心」は・・・う~ん、ほんと、どうなんでしょうね。
人それぞれと言ってしまえばそれまでですが、気になりますよね!

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みそさま

こんばんは!

> 情けない気もするけど、人間くささが感じられてすんなり納得できました。

高彬の「情けなさ」を愛でるのが、初夜編のコンセプトです!
と言うのは、半分は冗談ですが、でも、この「情けなさ」って高彬の誠実さから来てるような気がするんです。

行きつ戻りつしながら、情けなさ全開の高彬・・・。

でも大丈夫、高彬はただの情けない男ではありません!
決めるところでは、ばっちり決めてくれますからね~。

>(でも食っちゃう高彬も見てみたい)

私も見てみたい!!

夜、好きな人と二人きり、『一緒に寝ましょうよ』の誘い(?)文句!
ここまでの据え膳を前にして、理性が勝つ15歳男って……。
信じられん!どれだけ紳士なの~っ。
高彬、あっちのほうは大丈夫!?(≧ε≦)
と疑いの目を向けたくなりましたが、『そんなことして瑠璃さんに嫌われるのが怖い』に思わず頷いてしまいました。
情けない気もするけど、人間くささが感じられてすんなり納得できました。

据え膳食うだけが男じゃないよ。
グッジョブ、高彬!!(でも食っちゃう高彬も見てみたい)
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