拍手お礼SS<3>

*** 拍手お礼SSの寄せ集めです。投稿順に載せています ***








*** 今宵あなたと~side T~ ***





「遅かったな、高彬」

渡殿を足早に歩き詰め所まで向かう途中、角を曲がろうとしたところで、同僚の左近少将源重行が突然現れた。

ぼくの顔を見てニヤリと笑うと

「急用を思い出したから実家に戻ると言って出ていったわりには、やけに時間がかかったじゃないか」

「・・・悪い。・・・少し・・・手間取った」

「ふぅーん」

意味ありげに鼻を鳴らして見せた。

「・・・・紅」

「は?」

「付いてるぞ、紅が」

紅?!

慌てて首筋に手を当てると、重行はげらげらと笑い出した。

「ほんっとにおまえは判りやすいな。カマかけただけなのに、図星だったってわけか。しかもそこか」

ぼくの首を指差すと

「なるほどねぇ、そこに紅、付けられたのか。・・・・ずいぶんといい思いしてきたみたいだなぁ、高彬」

ニヤニヤと言い、肘でぼくの脇腹をつついてきた。

「堅物で勤勉な右近少将殿が、仕事抜けてオンナ抱いてきたなんて、大スクープだな」

「おまえ、まさか・・・!」

ぎょっとして重行を見ると

「安心しろ、俺は口が堅い。ただし・・・俺の時も手を貸せよ。男にはイロイロ緊急事態があるし、な」

「・・・・・」

確かに緊急事態と言えばそうだけど・・・。

でも、ぼくの場合はふいに瑠璃さんの声が聞こえた気がして気になったわけで、こいつの緊急事態とはちょっと違うんだけどな・・・。

「そういえば、今上がおまえを探してたみたいだぞ」

「え」

「急ぎってわけではなかったみたいだし、上手いこと言い繕っておいた」

「・・・済まない」

「まぁ、あとでご下問くらいあるかもな」

「・・・・・」

重行は、黙り込むぼくの肩に手を置くと

「いい思いの代償だ。人生は甘くない」

おごそかに言い放った。

「・・・・・」

重行の言う通りと言えば言う通りで、ぼくはがっくりと肩を落としたのだった。















*** 今宵あなたと~side R~ ***





うとうとしていた所を、にぎやかな鳥の声で目を覚ました。

室内はすっかり明るくなっており、格子からは朝の光が射し込んで来ている。

冬の朝の、澄んだ空気の気持ちの良さは格別よね・・・。

思う間もなく、ふと、高彬のことが気になってくる。

────高彬、大丈夫だったかしら。

明け方、まだ暗いうちに戻って行ったんだけど。

──それは瑠璃さんが心配することじゃない───

なんて言われたときは、その凛々しさに思わず惚れ直してしまったけど、だけどやっぱり心配しちゃうわよ。

忙しい中、仕事、抜けてきたって言うし。

あの人、上手に嘘がつけるタイプじゃないし、上手く言い繕えてるのかしら・・・。

妻心であれこれ気を揉んでいたら、几帳のすぐ向こうから小萩の声が聞こえてきた。

「姫さま、そろそろお起き遊ばされませ」

「起きてるわよ」

返事をすると、すぐに小萩が几帳を回り込んできた。

そうして、すぐに「あらっ」と言う顔になり、何事かと思っていたら

「今日はまた、ずいぶんと夜具が乱れておいでですのね・・・」

独り言のような、呟く声で言った。

ぎょっとして夜具を改めて見てみると・・・・

た、確かに、普段より・・乱れて・・る・・かも、知れない・・・。

「その・・・ほ、ほら、何だか寝苦しくて、何度も寝返り打っちゃったのよ」

「こんな冬に、寝苦しい・・・ですか・・・」

「そ、そうなのよ。最近、あたし運動不足だし・・。たまには几帳でも蹴飛ばそうかしら、なんてね。はは・・は」

「はぁ、几帳を・・でございますか」

不審げな顔で振り返った小萩は、あたしの顔を見ると、またしても「あらっ」と言う顔になり

「御髪が・・」

「え」

「御髪が・・・絡まれておりますわ」

「・・・・・」

じぃっとあたしの顔を見ていた小萩は、ふと目をそらし

「今朝、庭師が申しておりましたの。姫さまの庭に、昨夜まではなかった足跡がある、と」

「・・・・・」

「そういえば門衛も申しておりましたわ。明け方、東門あたりで馬のいななきを聞いた、と」

「・・・・・」

小萩は何も言い返せないでいるあたしの顔を見て、にっこり笑うと

「さ、朝餉の用意でもして参りましょう。何か精の付くものをお持ちしますわ」

「・・・・・」

さわやかに立ち去る小萩の後姿を見ながら、あたしはがっくりと肩を落とした。

────高彬の心配してる場合じゃなかったわね。

と言いつつ、やっぱり高彬が心配になってくる。

変な同僚にでも、からかわれてなきゃいいけど・・・。












*** My Girl ~Happy Christmas~ ***







目が覚めて、すぐに首元の違和感に気が付いた。

指を這わせて見ると、鎖骨のくぼみにぴったりと貼りついているものがあって・・・。

───── ペンダントヘッド?

慌てて身体を起こし、手鏡に映して見る。

ダイヤモンドをあしらったハートの凝ったデザインのもので、もちろん、あたしの持ってるものじゃない。

と言うことは・・・推理するまでもなく高彬だわ。

夜中に着けてくれたんだ・・・。

ちらりと高彬に目を落とすと、仕事の疲れがたまっているのか、まだぐっすりと眠っている。

起こさないように、あたしはそっとベッドを抜けだした。



*****



洗面台の前に立ち、もう一度、鏡に写して見る。

窓から入ってくる朝日を受けて、キラキラ光ってとっても綺麗。

高彬ったら・・・・。

でも、どうしよう。

あたし、プレゼントなんて買ってない。

プレゼント交換しようなんて話してなかったし、昨日のクリスマス会の準備で手一杯だったし・・。

ほんと、どうしようかしら。

自分にリボンをつけて、じゃーん、プレゼントはあたしでーす!なんてやっても、高彬、今さら喜んでくれないだろうしねぇ・・。

笑われるのがオチよ。

1年目だったら、少しは驚いてくれたかも知れないけど。

・・・結婚して最初のクリスマスって、どんな風に過ごしてたんだっけ?

「おはよう」

つらつらと7年前に思いを馳せていると、ひょっこりとサンタクロースが、もとい、高彬が顔を出した。

「これ・・・」

「気に入ってくれた?」

ネックレスを指さすと、高彬は心配そうに聞いてきた。

「うん、とっても」

「良かった」

心底、ホッとしたように言う高彬に

「ごめん。あたし何も用意してないのよ」

正直に言うと

「いいよ、別に」

高彬は笑って見せた。

「でもあたしだけ悪いもの。何でもいいのよ、何かない?」

「そうだなぁ」

高彬は考え込む顔つきになり、次いで眉を上げると

「瑠璃さんが欲しい」

「・・!」

「と、言いたいところだけど、昨夜、プレゼントの前倒しで、瑠璃さんはたっぷりいただいちゃったからなぁ・・・」

真顔で言い、腕なんか組んでいる。

「・・・それじゃ、これがそのお礼みたいに聞こえるわ」

ネックレスを指しながらムスッと言うと、高彬は声をあげて笑い

「そういう憎まれ口は叩かない」

あたしの頭をポンと軽く叩いた。

こういう対応には慣れてるって・・・こういうこと?!

「そうだなぁ・・欲しいものか・・・」

天井を見上げ、再び考えていた高彬は

「よし、決まった」

「なぁに」

「今度、瑠璃さんと2人で水族館に行きたい」

「え」

「たまには瑠璃さんを独り占めしたい」

「・・・・」

いい?なんて顔を覗きこまれてしまった。

独り占めなんて、何をバカなことを言ってるのよ。あかりじゃあるまいし・・・

そう言ってやるつもりが、なぜか口からは

「・・・あかりを融に預ければ、半日くらいなら・・・」

そんな言葉が出てしまっていた。

もうっ、あたしったら!

「それがいいよ。由良もいるし。あかりもなついてるから安心だ」

高彬は大きく頷き

「じゃあ約束だよ、瑠璃さん」

小指を出してきた。

指きりなんて・・・と思いつつ、またしてもあたしは、高彬のペースに乗せられて、しっかり小指を絡めてしまっていた。

シャワーを浴びるために高彬は出て行き、1人きりになった洗面所で、あたしはもう一度、鏡に目をやった。

朝日を受けて、ネックレスがキラキラと光っている。

今さら2人で水族館なんて・・・デートなんて・・・・。

一体、どんな顔して歩いたらいいのよ。

まったく急に変なこと言い出すんだから・・・。

でも。

───── 何、着て行こうかしら?

ネックレスの映える服をあれこれ考えつつ、あたしは上機嫌でリビングに向かったのだった。













*** Change the World ***   







「高彬、早く早く!」

キッチンで飲み物をついでいた高彬に、あたしはソファから声をかけた。

テレビではカウントダウンが始まろうとしていて、もうじき年が明ける。

「5、4・・・・」

隣に座った高彬から飲み物を受け取ったあたしは、テレビの声に合わせて一緒にカウントダウンを始めた。

「3、2、1・・・」

テレビからクラッカーの音が聞こえ、でも、あたしはその瞬間の画面を見ることが出来なかった。

なぜなら高彬にキスをされていたから────。

長い長いキスで、ようやく唇が離れた時、あたしは酸欠寸前だった。

「・・・もうっ!長い」

文句を言うと、高彬は

「おめでとう」

と澄まして言った。

「クス球の割れる瞬間、見逃しちゃったわ。何も今、キスしなくても」

ブツブツ言うと

「アメリカなら普通だろ」

だからここは日本でしょ・・・そう言いかけて、ふとイタズラ心が顔を出す。

「確かにね、アメリカで年越しした時はキスするの普通だったし」

サラリと言って何気なく隣を伺うと、高彬の横顔がピクリと動いた、ように見えた。

そのまま返事もせずに黙り込んでいる。

ふいに立ち上がったかと思うと、ダイニングテーブルに移った。

片肘ついてテレビなんか見ている。

面白くなさそうな顔。

テレビで繰り返される「おめでとうございます」の言葉を、全然おめでたくないって顔して見てる。

─────ちょっと冗談が過ぎたかしら?

反省するそばから、<大好き>の気持ちがこみ上げてくる。

あたしの見えすいたウソを真に受けて、機嫌悪くなっちゃうなんて。

こんなにあたしに影響力があるなんて。

馬鹿ね、うぬぼれちゃうじゃない。

あんまり喜ばせないでよ。

ソファから立ち上がり、あたしは高彬に近づいた。

「高彬」

そっと後ろから抱きついてみる。

「ウソよ。誰ともキスなんかしてないもの」

高彬だけよ、つぶやいてギュッと力を入れる。

こちらを向かせ、あたしからキスをした。

3、2、1・・とカウントダウンして唇を離すと、高彬は世界が一変したような顔をしていた。

目が合い、にっこりと笑いあう。

新しい年。新しいキス。新しい笑顔。

たった一瞬で世界は変わる。

あけましておめでとう。






***********



本年もよろしくお願いいたします。

2014年 1月1日

瑞月


(←お礼画像&SS付きです)

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