拍手お礼SS<2>

*** 拍手お礼SSの寄せ集めです。投稿順に載せています ***









*** しらうめの咲く頃<超・番外編> ***





「おかえりなさいませ、少将さま」

車から降り、出迎えた小萩に軽く合図をする。

ちらりと小萩がぼくの顔を見たような気がして目をやると、気のせいだったのか小萩はすでに歩き出していた。

渡殿を歩き瑠璃さんの部屋へと向かう。

瑠璃さんは、いた。

ぼくを見ると、ちょっと笑って、でもすぐにじっと顔を覗き込んできた。

「何?」

まるで何かを検分するかのような目つきにびっくりして言うと

「・・・ねぇ、高彬」

前に座ったぼくに向かって瑠璃さんが、改まった口調で話しかけてきた。

「仕事・・・忙しい?」

探るような確かめるような、慎重な言い方だった。

「仕事?うん、まぁ、相変わらずってところかな」

「・・・・体調は・・どう?」

「体調?悪くないよ」

「変なものとか、食べてない?」

「食べてないよ」

「・・・最近、どこかで頭ぶつけたとかは・・・ない?」

「頭?・・・ぶつけてないけど。・・・なんだい、さっきから」

緊張したような顔で、ややしばらくぼくを見ていた瑠璃さんは、ふぅっと大きく息を吐くと

「聞いたのよ」

先ほどとは打って変わって、困惑したような口ぶりで言った。

「聞いたって・・・何を?」

────来たな。

そろそろ来る頃じゃないかと思ってたんだ。

融あたりから、例の壮大な寝言の話が瑠璃さんの耳に入ったに違いない。

とりあえずは、しらばくれて返事をする。

大丈夫、どう返答するかは考え済みだ。

少し言いずらそうに口ごもっていた瑠璃さんは、やがて思い切ったように口を開いた。

「あんたが・・・・」

「うん」

「犬と会話してたって」

「は?」

「だから。犬に向かって、ぶつぶつ長いこと話し込んで、しまいには涙ぐんでたって」

「・・・・・」

「ねぇ、高彬。あなた、ちょっと疲れてるんじゃないの?」

「・・・・・」

「何か悩みがあるんなら言ってよ」

「・・・・・」

「ねぇったら!」

長いことぶつぶつって・・・。涙ぐむって・・・。

誰がそんなこと言ったんだよ!

大江か?・・・犬か?!

皆、あることないこと、言いたい放題言いやがって!

ぼくがいったい何をしたって言うんだよ・・・。

「悪い、瑠璃さん。疲れてるから、もう寝る・・・」

ぼくはヨロヨロと几帳を回り込み、そのままふて寝を決め込んだのだった。















*** ため息の時間~夜明け前~ ***




ひんやりとした冷たい空気に目を覚ました。

薄暗い室内、ぼんやりと開けた目に飛び込んできたのは高彬の顔。

そっか、昨日は高彬に抱きついたまま、眠っちゃったんだわ・・・。

そろりと腕を引き抜いて、その時に当たった高彬の肩の冷たさにびっくりしてしまった。

あたしが変な風に抱きついていたから、高彬の肩はすっかり冷え切ってしまっているようだった。

慌てて衾を掛け直し、ふと手を止める。

あたしなんかより、よっぽど骨ばっている肩。

そこから伸びている、程よく筋肉の付いた腕。

太くはないけど、だけどしっかりとした首。

人差し指で、そっと鎖骨をなぞってみる。

喉を伝い、そのまま輪郭をたどる。

閉じられた目に、鼻、そして、うっすらと開かれた形の良い唇。

「瑠璃さん」とあたしを呼ぶたびに動く唇。

数えきれないほどの、たくさんの接吻もした。

そうして─────。

あたし自身より、きっとあたしを知り尽くしている高彬の唇・・・・。

「・・・どうした?目が覚めちゃったの?」

ふいに唇が動いた。

「肩が出てるよ。もっとこっちにおいで、瑠璃さん」

衾を直しながら高彬が言い、あたしを抱き寄せた。

「うん」

高彬の裸の胸に顔をうずめると

「・・・少し明るくなってきた。もうじき朝かな」

独り言のように高彬が言い、顔を上げると確かに室内はさっきより明るくなってきているようだった。

格子から、ほんの少しのあるかなきかの夜明けの気配が伝わってくる。

─── 夜明けが、近い。

あたしは唇を噛んだ。

「・・・まだ、夜だわ」

もう一度顔をうずめて小さな声で言うと、少しの間があり

「・・・うん、まだ夜だね」

高彬の優しい声が聞こえてきた。

「朝は嫌い」

呟くと

「・・うん。ぼくも嫌いだ。朝はいやだね」

さっきより、もっと優しい声だった。

高彬はあたしを抱き寄せると

「夜明けにはまだ間がある。瑠璃さんは少しお眠りよ。こうしていてあげるから」

頭ごとあたしを抱え込んだ。

「今日、新しい衣装が来るって楽しみにしていたじゃないか。ぼくも早めに帰るから」

髪を撫ぜながら言い、額に接吻をした。

夜明け前の室内はしんと静かで、ほんの少しの身じろぎの音さえも耳に響いてくる。

 ────夜明けにはまだ間がある。
   
 ────こうしていてあげるから。

高彬のその言葉に、あたしは安堵し、そっと目を閉じたのだった。















*** Wonderful time ***





天井に届きそうなツリーの飾り付けを始めて、かれこれ2時間。

夕飯を終えてからだったから、もう時計は10時を回っている。

先週、一緒に買いに行き、その時に瑠璃さんがどうしてもこれが欲しいと言って決めたツリーだ。

大量の飾りも、全部、瑠璃さんが選んだ。

まだまだ飾り付けは終わりそうにない。

土曜の夜。

時刻は10時過ぎ。

そろそろ・・・。

「まだ寝ないの?瑠璃さんは」

さりげなく切り出すと

「うん、飾り付け、終わらせちゃうから。眠かったら先に寝てていいわよ」

なんとも素っ気ない言葉が返ってきた。

返事をしないでいると

「大丈夫よ。高彬を起こさないように静かにベットに入るから」

まかせて、と瑠璃さんは笑った。

そういうことを言いたいわけじゃないんだけどなぁ・・・。

「いや、眠いわけじゃないから、ぼくも起きてるよ。まだやることがあるし」

「そう?じゃあ、高彬も手伝って」

ぼくの言葉の意味にはまったく気付かないのか、屈託なく笑った。

やれやれ・・・。

ぼくは内心、肩をすくめた。

相変わらず、瑠璃さんは鈍いんだよな。

その上、瑠璃さんはきっかり24日後にやってくるクリスマスに夢中で、どうやらそのことで頭がいっぱいのようだった。

「ねぇ、高彬。ケーキはどうする?おまかせでいいんなら、美味しいの探してくるけど」

ツリーに、キラキラと光る綺麗にカットされたガラスのベルを飾りながら言い

「チキンはどうしようかしら。志乃さんに頼んでもいいし、それかお取り寄せにしてもいいし・・・」

小首を傾げて考え込んでいる。

ケーキもチキンも、もちろん楽しみだけど。

「あと、ここら辺にキャンドル置いたら素敵よね」

リビングをぐるりと見回して目を輝かせている。

「クリスマスのこと、いろいろ考えるのってなんでこんなに楽しいのかしら」

ね、なんて言いながらぼくに笑いかけてきた。

クリスマスは、もちろん素敵で楽しいことだけど。

でも、24日後じゃなくても、もっと近くに素敵で楽しいことってあるだろう。

「瑠璃さん」

「なあに」

ぼくは瑠璃さんをそっと引き寄せた。

「飾り付けは、明日、手伝ってあげるから」

瑠璃さんの手からガラスのベルを取り上げ、かがんで小さなキスをする。

「・・・寝室、行こ」

「・・・・・」

瑠璃さんの顔がみるみる赤くなった。

「ね」

顔を覗き込むと、瑠璃さんは。

─────コクンと小さく頷いた。













*** 秋の、もみじ葉~上弦の月~ ***





「それにしても・・・団喜を見てあたしを思い出すなんて失礼しちゃうわね」

茜色に染まる空の気配が入り込んできている室内で、思い出したように瑠璃さんが言った。

<結婚とはどんなものか>と小萩が聞いたことに対してのぼくの回答に、どうやら納得がいかないらしい。

ふくれっ面の瑠璃さんの顔に、ぼくは小さく笑った。

────瑠璃さんは知らないんだ。

一年前のちょうど今頃、ぼくたちが結婚した日、ぼくの身に何が起きたのかを。

一夜明けたら世界は一変し、革命が起きていたんだ。

瑠璃さんはそれを知らないだろうし、一生、言う気もない。

「高彬、見て。空の色が見る見る変わっていくわ」

刻一刻とその色を変えていく夕暮れの空を見て、瑠璃さんが弾んだ声をあげた。

「うん、綺麗だね」

返事をしながら、ぼくは内心、自分に苦笑した。

────早く夜が来ればいい。

見事な夕焼け空を見ながら、本当はこんなことを考えていたから。



*****



秋の日は短く、あっと言う間に夜がやってきた。

もみじの葉が、闇に包まれ始めた三条邸の庭の中で影絵のように浮かび上がっている。

ぼくが、生涯忘れないと思った景色だ。

「瑠璃さん、こっちにおいで」

几帳を回り、寝所へといざなう。

素直にやってきた瑠璃さんの髪をなぜ、単に手をかける。

ぼくは男だから、男としての方法でしか瑠璃さんを愛せない。

瑠璃さんを抱き寄せ、肌を重ねる。

瑠璃さんの肌は柔らかく、とてもいい匂いがした。

きつく抱きしめると、瑠璃さんの口から言葉にならない声が漏れた。

ぼくにしか出来ない瑠璃さんの愛し方だ。

「瑠璃さん・・・」

耳元で、あの日と同じ誓いを立てると、瑠璃さんが身体をすり寄せてきた。

甘えるしぐさが可愛くて、さらに抱きしめる。

─────あの日と同じ、上弦の月が浮かぶ秋の宵だった。




(←お礼画像&SS付きです)

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