***短編*** しらうめの咲く頃<番外編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






             注)このお話は一話完結です。
               
        






***短編*** しらうめの咲く頃<番外編> ***








「若君」

ふいに声を掛けられて振り向くと守弥が控えていた。

「どうした。呼んでないぞ」

ぱらぱらとめくっていた漢詩の本から顔を上げてそっけなく言うと、守弥は気にすることもなく平然と膝を進めてきた。

「ひとつ確認したいことがあるのですが」

「なんだ」

「若君が寝言をおっしゃったと、邸内でもっぱらの噂になっております」

「・・・・」

さては大江のやつ・・・

「いいだろ、誰だって寝言くらい言うさ。悪いか」

「いえ、悪くはないのですが。ただ・・・」

「ただ、なんだ」

「若君の権威にお傷が付くかと思われ・・」

「お傷って・・・おまえは大げさなんだよ。寝言言ったくらいで権威もなにもないだろう」

呆れて言い返すと

「ですが、あのような寝言を・・・」

「あのような、ってなんだよ。ぼくはただ・・・」

そこまで言いかけて、ふとある疑念がわいた。

「守弥。おまえが聞いてる寝言って何なんだ」

そう言うと、守弥にしては珍しく躊躇を見せた。

「言ってみろよ」

促すと、守弥は咳払いをしてから口を開いた。

「<瑠璃さん。ぼくは瑠璃さんが大好きなんだ。だからもう少しこのままでいさせて。こうしていると瑠璃さんの匂いがして安心するんだ>・・・と伝え聞いております」

「はぁ?!」

なんだよ!それ。

ぼくはそんなこと言ってないぞ。

そもそも、そんなきっぱりはっきり長い寝言なんてあるわけないだろ!

「そんな寝言、言ってないぞ・・・」

「ですから、権威にお傷がつくと申し上げたのです」

「申し上げたのですって、おまえ・・・」

そうか、だからここ数日、邸内で家の者にすれ違うと、皆、目をそらして、そのくせ含み笑いをしてるんだな。

「まぁ、いい。どうせ大江が女房たちに言いふらして・・・」

「いえ、女房だけではありません。従者も下男も、門衛までもが皆、知っております。ひょっとしたら犬までも」

「犬は知らないだろ!」

くっそー、守弥のやつ。心配してると見せかけてからかってやがる。

「もういい、退がれ」

じろりと睨みつけると、立ち上がりかけた守弥が、ふと皮肉な笑いを浮かべた。

「昨日、車寄せにいらした藤原清成どのが、この話をお聞きになり、大層喜ばれておりました。堅物で知られるあの右近少将が、と」

「・・・・・」

藤原清成どのは噂話が大好きで、これじゃあ宮廷に広まるのは時間の問題じゃないか・・・。

ぼくは頭を抱えた。

「・・・若君。どうか御身、お大切に」

守弥は丁寧に一礼をすると、うっすらと笑いながら退出していった。

くそ。

守弥といい、大江といい、揃いも揃って・・・!

気晴らしに弓でも引こうと庭に下りると、寝殿の方から犬がやってきてぼくの足にまとわりついてきた。

辺りを見渡して人がいないことを確認し、しゃがみこむ。

「おまえもぼくの寝言知ってるのか?頼むから、これ以上広めないでくれよ」

頭をなぜながら小声で言うと、犬は「くぅーん」と鳴いて不思議そうに首を傾げたのだった。







       
                 <終>



(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

アルシュさま

> 守弥&大江兄妹、最高すぎですねvvv

兄が兄なら、妹も妹って感じですね。
2人して、違い角度から高彬をいじってる(笑)

> 高彬の噂も、きっと宮中に広まり、あげくのはてには鷹男に呼び出されて、またからかわれるのでしょうね、

安定のストーリー展開ですよね。皆、これを願っているはずです(笑)

> いつも楽しいお話をありがとうございますv

いえいえ、楽しんでいただきこちらこそありがとうございます!

守弥が最高です!!

こんにちはv
いつもほんと読み逃げですみません(汗)

守弥&大江兄妹、最高すぎですねvvv
妙に照れながら高彬の寝言を再現するのも、すっごく面白くって、こちらもニヤニヤしてしまいましたv
しかも「犬まで知っている」って(笑)

大江ちゃんも、高彬の乳姉妹だけあって、高彬の理解者なのですが、噂好き、おしゃべり好きなのが玉にキズですよね(笑)
高彬の噂も、きっと宮中に広まり、あげくのはてには鷹男に呼び出されて、またからかわれるのでしょうね、きっとv
想像しただけで、ニヤニヤしちゃいますv

高彬が普段、真面目で堅物と思われているだけに、よけいに広まっていきそうですよねv

いつも楽しいお話をありがとうございますv

ラムティさま

> オーダーしちゃってもいいんですか?(笑)

喜んで!(笑)

> でもでも瑞月さんの作るお話は私にとってとっても素敵な作品なので更新されるのを楽しみに待ってます! (求婚している高彬が瑠璃の返歌を待つように...)

まぁ!
では私が色よい返歌を送ったら、ラムティさんと私は「ぶっちぎりの仲」になれると言う事でよろしいのですね?(笑)
返歌、送っちゃいますよ~。

オーダーしちゃってもいいんですか?(笑)

でもでも瑞月さんの作るお話は私にとってとっても素敵な作品なので更新されるのを楽しみに待ってます!
(求婚している高彬が瑠璃の返歌を待つように...)←なんかすみません(照)

みそさま

> 噂話に尾ひれどころか背びれ、胸びれまでついて後宮に広まりそうですね。

いったいどんな寝言を言ったことになってるんでしょうね。
すでに白梅院で、あの尾ひれですもんね(笑)

> 可哀想だけど楽しい。

おっしゃるとおりです・・・(笑)


噂話に尾ひれどころか背びれ、胸びれまでついて後宮に広まりそうですね。
そしてめぐりめぐって融あたりから瑠璃まで伝わったりしちゃうのかしら。
可哀想だけど楽しい。
高彬、ご愁傷様。(笑)

ヨッシーさま

> 後宮までとは。これからさんざんからかわれるんだろうな。


ふふふ。そうでしょうねぇ。
有能公達も、さすがに寝言には無防備でしたね(笑)

タマさま

> 宮廷でさらに寝言に尾ひれがついてすごいことになりそうですよね〜

でしょうね(笑)

> 鷹男の帝にからかわれる高彬が目に浮かぶようですw 

苦労人、高彬・・・・。

ラムティさま

> 守弥・大江兄妹いいですね~

いいですよね!この二人で長編アニメ、作れそうですもん。(ドタバタコメディ風)

> ラブラブ話もいいですが、ユーモアたっぷりのお話も大好きです(笑)。

これはオーダーが入ったということで良いのでしょうか?(笑)

No title

面白いです\(^o^)/ 高彬をおちょくっちゃって守弥も楽しそう。屋敷の皆が知ったとは、聞いたら、言っちゃいますよ。あの真面目な若君って、考えたらニヤニヤしちゃいました♪ 後宮までとは。これからさんざんからかわれるんだろうな。

No title

あはは〜笑わせてもらいました!
宮廷でさらに寝言に尾ひれがついてすごいことになりそうですよね〜
鷹男の帝にからかわれる高彬が目に浮かぶようですw 

朝からニヤついてしまいました(笑)
守弥・大江兄妹いいですね~

高彬が守弥の言葉に突っ込みを心の中でいれてるのには笑いました!
確かにあんなに長い寝言はないし、犬もさすがに知らないだろうともうもうニヤニヤしまくりです!!

ラブラブ話もいいですが、ユーモアたっぷりのお話も大好きです(笑)。
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