**現代編***  You Can't Hurry Love !<番外編> ***

『なんて素敵にジャパネスク~二次小説*現代編』




注)このお話は現代編です。
時は現代、二人は大学生!
「妄想もここに極まれり」のスペシャル・バージョンです。
どんな妄想もウェルカム!な方は、スクロールしてどうぞご覧ください。  
             




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You Can't Hurry Love !<番外編>







「お名前はなんてお入れいたしましょうか?」

やたらと愛想の良い店員に甲高い声で聞かれて、口を開きかけたぼくは、思わず言葉を飲み込んだ。

店内にあるカフェコーナーに座っている女性2人組みがこっちを見ている、ような気がする。

ベビーカーを押しながらケーキを物色している若い母親もぼくを見ている、ような気がする。

「瑠璃さん、で」と答えるのは、何とも気恥ずかしい。

いや、しかし「瑠璃さん」以外に書く名前はないわけで、ぼくは覚悟を決めた。

「る・・・る・・・」

「・・・・」

口ごもるぼくを店員が怪訝そうに見ている。

「る・・・る・・・」

「る・・・?」

店員の顔から愛想笑いが消え、代わりに困惑したような表情が浮かんだ。

「・・・いや、やっぱり、いいです。何も書かなくて。そのままで」

ため息まじりに言うと、店員の顔に再び愛想笑いが浮かび、そのままの顔で手際よくケーキを箱にしまった。

支払いを済ませ店を出たぼくは、停めてあったクルマに乗り込み大きく吐息し、ハンドルに突っ伏した。

どっと疲れが襲う。

ホールケーキを買うなんて、人生初ではないだろうか。

いや、しかし緊張したな。

店に入ってショーケースを見出した途端「お決まりでしたらお伺いいたしますが」と、良く通る声でいきなり言われて、度を失ってしまった。

今、入ってきたばかりで「お決まり」なわけがないじゃないか。

お決まりだったら、言われなくても声を掛けているさ。

そもそも、少し放っておいてもらいたいんだよな。

こっちはケーキ屋初心者なんだから。

なんとか瑠璃さんが喜んでくれそうなケーキに目星をつけ、店員に告げると

「ご自宅用でしょうか?お届けもの用でしょうか?」と聞いてきた。

そんなことまで聞いてくるのか?!

ご自宅用とお届けもの用で、何がどう違ってくるというのだろう。

そんな疑問が頭の中でグルグル回ったけれど「自宅用で・・・」とぼそぼそと答えると、今度は

「お誕生日用のプレートはお付けしますか?」

と聞いてきた。

なんで瑠璃さんが誕生日だと言う事を知っているんだ?!とびっくりしたけれど、そうか、ホールケーキを買うのは誕生日が多いのだろうと・・・と納得して、ぼくは頷いた。

すると今度は「お名前はなんてお入れいたしましょうか?」と聞いてきて・・・・

はぁ・・・。

もう一度、大きく吐息してから、ぼくは顔を上げた。

助手席の瑠璃さんがいつも座る場所には、ケーキの入った四角い白い箱が置いてある。

何はどうあれ、目的は達成したんだ。

ぼくは小さく頷くと、エンジンをかけた。

瑠璃さんが待つ家に早く帰ろう。帰って2人だけの誕生会だ。

そう。

今日は瑠璃さんの20歳の誕生日なのだ。








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「おかえり」

ドアを開けると瑠璃さんが立っていた。

連絡したわけじゃないのに、よく帰ってくる時間がわかったな、と思っていると

「テラスから、高彬のクルマが駐車場に入っていくのが見えたから」

瑠璃さんは言い訳するように言って、そのままスタスタとリビングに入っていった。

見れば瑠璃さんは、ぼくが出ている間に着替えたのか、見慣れない服を着ている。

程よく襟ぐりの開いた柔らかそうな白いブラウスは、色白の瑠璃さんに良く似合っていた。

瑠璃さんの心弾みを見たようで、ぼくは嬉しくなってしまった。

「すごいでしょ。全部、あたしの好きなものばかり。さすが志乃さんだわ」

テーブルに並んだ料理を指し示しながら、瑠璃さんは楽しそうに言い

「さ、高彬も座って。温かいうちにいただいちゃいましょうよ」

ぼくに座るように促した。

「いただきます」

2人で声を合わせてそう言い、目が合いにっこりと笑いあう。

昨年の今頃は、正真正銘の<幼馴染>だったわけで、こんな風に2人きりで誕生日を祝うのは初めてのことだった。

いや、そもそもきちんと瑠璃さんの誕生日のお祝いをしたのも、これが初めてかもしれない。

もちろん瑠璃さんの誕生日は知っていたけれど、プレゼントはもとより、「おめでとう」の言葉さえ恥ずかしさが先にたって言ったことはなかった。

朝夕の通学時に「今日は誕生日だね」くらいは、言ったことはあったけど。

「で、瑠璃さん、プレゼントは何が欲しいの?」

食事もおおかた終えた頃、ぼくは気になっていたことを切り出した。

瑠璃さんにはかなり前から、何が欲しいかを聞いていたのだけど、そのたび瑠璃さんは

「当日になったら言うから」

とだけ答え

「それじゃその日に渡せないだろう」

と言うぼくに、意味ありげに

「準備の必要なものじゃないから」

と笑って見せるのだった。

あれこれ考えてみると、どうにも自分に都合の良いことばかりが浮かんでしまったのだけど、だけど瑠璃さんが

「誕生日には、高彬が欲しいの」

などと言うことがあるはずもなく、ぼくは過剰な期待はしないようにしていた。

期待はしてないのだけど、だけど気になってしょうがなく、ぼくはそういう意味でも今日と言う日を心待ちにしていたのだ。

「何が欲しいの?」

重ねて聞くと、瑠璃さんはぼくをじっと見て、ふいにいたずらそうな目をした。

「高彬にね、歌って欲しいの」

「は?」

「歌よ、歌。ハッピーバースデーの歌」

「・・・・・」

「知らない?ローソク消す前に歌う歌。ハッピバースデー、トゥーユーって歌」

「知ってる」

「それをね、歌って欲しいの」

にっこりと言う瑠璃さんを軽く睨みつける。

「・・・瑠璃さんも知ってるだろ」

「何を?」

「ぼくが・・・音痴なこと」

ぶすっとして言うと

「音痴らしいってことは聞いてるけど、考えてみたら高彬の歌って聞いたことないんだもの。聞いてみたい」

「いいよ、聞かないで」

ぼくは物心ついたころから音痴だったらしい。

らしい、と言うのは自分に自覚がなかったというわけで、どうやらぼくは人に比べて音痴なんだと気が付いたのは、小学2年生の音楽の時間だった。

音楽の授業では最初に必ず校歌を歌うのが決まりで、その日も皆で合唱していたのだけど、歌い終わったときにクラスメートの1人が

「藤原くんは、人と違うようにふざけて歌っています!」

と先生に進言し、ぼくは1人で歌わされるはめになった。

ぼくはもちろん真面目に歌っていたのだけど、歌うほどに先生の顔は険しくなるし、クラスメートは笑い出すしで、ぼくはクラス中から「音痴」の烙印を押されてしまったのだ。(そういえば、ぼくがふざけて歌っていると先生に進言したやつは代田だった!)

「ね、いいでしょ。お願い。あたしも一緒に歌うから」

瑠璃さんに手を合わせてお願いされて、さらには一緒に歌うからとまで言われたら、もう断ることはできなかった。

しぶしぶ頷くと、瑠璃さんはいそいそとローソクに火をつけ

「ハッピーバースデー、トゥーユー・・・」

と小さく手を叩きながら歌いだした。

ほら、高彬も一緒に、と目で促されて、ぼくは仕方なく小声で歌いだした。

瑠璃さんは心持ち身体を前に乗り出して、ぼくの声を聞き取ろうと耳に意識を集中しているのがわかる。

何となく瑠璃さんの口元に笑いが浮かんでいるのも気になる。

「・・・ディア、瑠璃さーん」

のところで、とうとう瑠璃さんは声をあげて笑った。

くっそー、何だか敗北感だな。

何とか歌い終わると、瑠璃さんはふぅーっとローソクの火を吹き消し、自分で手なんて叩いている。

ぼくも付き合いで手を叩きながら、それでも恥ずかしさからそっぽを向いてしまった。

「高彬、ありがと」

上機嫌で言う瑠璃さんの声がふいに近くに聞こえ、気が付くといつのまに来たのか瑠璃さんが隣にいた。

「高彬の歌、聞いちゃった」

嬉しそうに肩をすくめる瑠璃さんに心が和みながらも

「・・・下手くそだっただろ」

ムスッと言うと

「聞きたかったら、嬉しい」

「・・・・」

「怒ってる?」

「・・・・別に・・」

「からかったわけじゃないのよ。ほんとに聞きたかったの。聞いたことなかったから」

「・・・うん」

「じゃあ、こっち向いてよ」

ゆっくりと体ごと瑠璃さんに向き合うと、瑠璃さんは

「ありがと、高彬」

そう言って指を絡めてきた。

目が合い、見つめ合う。

「誕生日、おめでとう」

「・・・うん。ありがとう」

「瑠璃さんの方がふたつも年上になっちゃったね」

「やあね、おばさんって言いたいの」

唇をとがらす瑠璃さんが可愛くて、そっと引き寄せる。

「そんなんじゃないさ」

「ふふ」

「ねぇ、瑠璃さん。秋にはぼくの誕生日が来る」

「うん」

「プレゼント、今からリクエストしてもいいかな」

「いいわよ。早めに準備しておけるし」

「準備の必要なものじゃないんだ」

「・・・・・」

そっと瑠璃さんの身体を離して、顔をのぞきこむ。

「何だかわかる?」

瑠璃さんの目がくるりと回った。

「芝刈り?」

「こら」

鼻をつまむと、瑠璃さんは笑い、ぼくも笑った。

そっとキスをすると、黙って瑠璃さんもされるがままになっている。

「ぼくが欲しいプレゼントは瑠璃さんだ」

唇を離して心をこめて言うと、瑠璃さんの頬がさっと赤く染まり、一度、ケーキに目をやってからぼくを見て小さく頷いたのだった。





***fin***




(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

maiさま

> そっか、「お歌」ですね(笑)

そう、高彬にとっての鬼門、お歌です。
パーフェクトじゃない高彬は最高だと思います(笑)

No title

楽しく読ませていただきました。そっか、「お歌」ですね(笑)こちらのコメント欄をみて、ああ、と納得。現代編のふたりも初々しくていいですね。

霧氷さま

> 「武士か!!」と突っ込んでしまいました(笑)

確かに!(笑)

代田くんは、高彬が大好きなんでしょうね。
高彬の第2ボタン、一番欲しがっていたのは代田くんだったりして・・(笑)

かいちゃんさま

お~、かいちゃん様でしたか!

>今回も胸がキュンキュンしました

キュンキュンしてくれてありがとうございます~♪

No title

とっても笑わせていただきました!
高彬、可愛すぎます!!
ケーキ一つ買うのにあの煩悶・・・
「武士か!!」と突っ込んでしまいました(笑)

それにしても、代田くんとの関係性がイイですね☆
どんだけ高彬のことを構いたいんでしょう(笑)
そして、高彬の誕生日に願いは叶うんでしょうか・・・?
気になります!

No title

失礼しました(><*)ノ~~~~~かいちゃんでした(><*)ノ~~~~~ 今回も胸がキュンキュンしました(*^^*)続編あれば楽しみです(*^^*)

Re: No title

> 楽しく読ませて頂きましたp(^-^)qケーキ買うのに大照れの高彬可愛すぎ(*^^*)私も高彬に買って来てほしい(^o^)いいなぁ(^o^)瑠璃さん(^o^)

コメントありがとうございます!
すみませ~ん、お名前が書かれていなかったので・・・。
楽しんでいただけて良かったです!

「夕暮れに」にもコメントいただきありがとうございました♪

No title

楽しく読ませて頂きましたp(^-^)qケーキ買うのに大照れの高彬可愛すぎ(*^^*)私も高彬に買って来てほしい(^o^)いいなぁ(^o^)瑠璃さん(^o^)

ヨッシーさま

> 瑠璃さん笑ってたし、そんなに下手なのかな?

多分、かなり・・・(笑)
逆に、高らかに歌い上げてる高彬のほうが思い浮かびませんもん。

>ふてくされる高彬可愛いO(≧∇≦)O

可愛いですよね!
高彬は<素>で振る舞ってるときが、一番、のびのびと可愛いですよね。
(お仕事モードもかっこよいけど)

みそさま

> 音痴な高彬…。
> なんとなく納得!ってな感じです。

ですよね!らしいですよね。

> それにしてもケーキひとつ買うのに、あのぎこちなさ。

堅物だから、ケーキなんて「女子ども」の食べ物だと思ってたんだと思われます(笑)
華奢なフォークを使ってしゃれたケーキを食べてる高彬って思い浮かびません。
高彬が唯一食べる甘いものは・・・・瑠璃にもらったチョコくらいかなぁ?・・・と言うイメージです。

あさぎさま

あさぎさん、こんばんは!

> そして現代版でも、高彬はやっぱり「お歌」が苦手なんですね(爆)

そうなんです(笑)
音楽全般が苦手なんです。
リコーダーとか、吹けません。
ピアノなんて、絶対無理!
カラオケなんて誘われても行きません!逃げます(笑)


No title

高彬の一人問答面白い。そんなに緊張しなくても。でも、瑠璃さんのためだもんね。二人で初めて祝う誕生日初々しかった♪高彬が音痴だとは、瑠璃さん笑ってたし、そんなに下手なのかな?ふてくされる高彬可愛いO(≧∇≦)O ラブラブの二人が見れてニヤニヤしちゃいました。高彬の誕生日に瑠璃さんは、何をあげるか楽しみ。高彬の期待通りになると良いですよ。

音痴な高彬…。
なんとなく納得!ってな感じです。(ごめんね、高彬)
それにしてもケーキひとつ買うのに、あのぎこちなさ。
高彬、可愛いなぁ…。
秋が待ち遠しいですね!

かわいい~!

こんばんは~。

初々しい二人が素敵だった現代版のその後、楽しく読ませていただきましたv
決死の覚悟でホールケーキを買う高彬が、とってもかわいかったです!
現代版本編でルリマツリを贈っていたのは、同じような理由で花束を買うのが
恥ずかしかったからかしら・・。
そして現代版でも、高彬はやっぱり「お歌」が苦手なんですね(爆)

高彬の19歳の誕生日が、素敵な一日になるのを祈ってますvv
脈はかなりありそうですが、二人の事だから、油断は出来ませんよねぇ(笑)
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Author:瑞月
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