***短編*** 秋の宵夢~The next day ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






             注)このお話は一話完結です。
               初夜編第三十四話「秋の宵夢」の翌日のお話です。
        






***短編*** 秋の宵夢~The next day ***









秋の虫の音を聞きながら脇息によりかかってぼんやりしていると、妻戸を小さく叩く音が聞こえた。

咳払いしてやると、音もなく妻戸が開いて、高彬が入ってきた。

目が合い、お互い、小さく合図をする。

あぁ、照れくさいったらありゃしない。

昨日の今日で、いったい、どんな顔して迎えたらいいのよ。

それは高彬も同様らしくて、ちらりと見ると、うっすらと顔が赤い。

高彬とは長い付き合いだけど、昨日したイロイロなことは、初めてだったわけだし・・・。

恥ずかしかったり痛かったり、本当に昨日は大変だったわ。

相手が高彬で良かった、という思いと、高彬にあんな姿を見られて恥ずかしい、という思いが交差して、ほんと、乙女心は複雑よね。

こもごも考えていると

「瑠璃さん。・・・身体はどう?」

「え」

「その・・・まだ痛む?」

心配そうに聞いてきた。

痛い思いをさせた張本人として、それなりに責任を感じているらしい。

責任感の権化の高彬らしいといえば、らしいんだけど。

怪我をしたわけじゃないから、痛みがあるわけではないんだけど、でも、違和感って言うのか、そういうのはまだある。

「・・・うん。少し、ね。痛いっていうか違和感が・・」

ぼそぼそと言うと

「痛みは・・ないんだね?」

探るように、確認するようにさらに聞いてきた。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って。まさか、高彬・・・今夜も・・?」

お互いに顔をのぞきこむ。

妙な沈黙が流れ、と思ったら

「もちろん、そのつもりだよ」

と手を取られてしまった。

「三夜通うのが、結婚の証だからね」

「それはそうだけど、でも、別に三夜ともコトに至らなくても・・・通ったってだけでいいんじゃないのかしら・・・」

昨夜の痛さを思い出して、つい怖気づいてしまう。

「なんかそこらへんのこと、公達仲間から聞いてないの?」

昨日、男女の契りについてやけに詳しかったことを思い出して、すがる思いで聞いてみると

「さぁ、聞いたことないな」

なんともそっけない答えが返ってきた。

言いながらも高彬はじりじりと近づいて来ており、気が付いたら寝所がすぐ後ろにしつらえてあるではないの!

もう!小萩ったら、まさか高彬に袖の下でももらってんじゃないでしょうね!

「ま、待ってよ。高彬。身体が・・・」

「大丈夫だよ。若いから」

馬鹿!誰があんたの身体の心配なんかしてるのよ。

心配なのはあたしの身体よ!

高彬に今まさに押し倒されそうになったとき、あたしはあることを思い出して声をあげた。

「そういえば!ねぇ、高彬。あの後朝のお歌はなぁに?」

苦手な歌のことを振られて、高彬の動きがぴたりと止まった。

「すぐに届いたと思うんだけど・・」

なんとも自信なさげな声で言う。

「えぇ、早さには問題はないわ。でも、あたしが言ってるのはお歌よ、お歌。あれは前に作ったものじゃないの」

そうなのだ、今朝、一番に届けられた後朝の歌は

『筒井筒 契りのかなふ今日なれば 逢い見し後は 絶えて惜しまん』

と言う、以前に高彬が作ったものだったのだ。

「手抜きもいいとこじゃないの」

文句を言うと

「手抜きじゃないさ。色々考えたんだけど、でも、やっぱり、これが一番、自分の気持ちにぴったりきたんだよ」

代作は瑠璃さんもいやだろうしさ、なんて呟いている。

「本当に『絶えて惜しまん』って気分だったし・・・」

言いながら肩に手を回してくる。

「・・・・・」

「・・・あの歌、そんなにだめだった?」

「・・・・」

「もしかして・・・怒ってる?」

黙って頭を振る。

「じゃあ、笑って」

ね、なんて顔をのぞきこまれて、思わずうつむいてしまう。

「瑠璃さん。顔を見せてよ」

両手で頬を持ち上げられて、目が合うと、高彬はにっこりと笑った。

その笑顔が近づいてきたと思ったら、あっと言う間に接吻をされていた。

あーあ、こういうのを惚れた弱みっていうのかしら。

すっかり高彬のペースだわ。

そのまま高彬が覆いかぶさってきて、当然、そこは夜具の上で、身体の向きと言い、手の位置と言い、なんのことはない、高彬にとってのベストポジションではないの。

嫌なわけではないのよ、決して。

でも、昨日の今日だし、何よりもあの痛みがねぇ・・・。

思う間もなく、高彬の手によって単がほどかれ、秋の少しひんやりとした空気がじかに身体にあたった。

高彬の手がなぜるように身体を伝い、なんとなく目を開けると、高彬が・・・・

あたしのあらわになった身体を見ているではないの!

慌てて単をかき寄せると、びっくりしたように高彬が顔を上げた。

「どうしたの、瑠璃さん。寒いの?」

「違うわよ。そんなに・・・見ないでよ」

「え」

「だから!そんなにジロジロ見ないでよ」

恥ずかしいじゃない。

「ジロジロなんて・・・」

「見てた!」

「そりゃ、少しは見たけど・・・」

「ほら、やっぱり」

「そりゃ見るだろう・・・目の前に・・あれば・・・」

「いやよ」

「なんで」

「なんでって・・・恥ずかしい・・・わよ」

ぶっきらぼうに言うと、高彬はふきだした。

「今更なんで。昨日だって・・・」

「いやよ。だめったら、絶対にだめ」

昨日はあたしも緊張していたし、まぁ、ちょっと細かいことに気が回らなかったっていうのが本当のところよ。

でも、昨日は昨日。

今日は何でだが、いやなんだもの。

単をぎゅっと握り締めると

「瑠璃さん・・・手をよけて」

聞き分けのない子に言い聞かせるような、そんな口調で言いながら、高彬が単に手をかけてきた。

「いやっ。見るんだったら、もうやめる」

「え」

あたしの強い口調に、高彬は手をとめて、あたしの顔をのぞきこんだと思ったら、慌てて手を引っ込めて

「わかった。ごめん、もう見ないから」

神妙に謝ってきた。

長い付き合いの勘なのか、それともオトコの勘なのか、ここで機嫌を損ねたらまずい・・・と思ったらしい。

「だから・・・やめる、なんて言わないで。瑠璃さんが嫌がることはしないから」

どこまでも優しい声で言う。

「絶対よ。見ちゃだめよ」

「うん。でも・・・どうしたらいい?」

「目をつぶって」

「は?」

「高彬も目をつぶるのよ」

「・・・・わかった」

重々しくいうと、高彬は大真面目に頷いた。

目をつぶった高彬の手が動き出し(薄目を開けて見張ってたんだから!)、やがて、身体の向きを変えて次の動作に移ろうとした。

「・・・・・」

あぁ、やっぱり無意識に身体が逃げてしまう。

「瑠璃さん。身体の力を抜いて」

「・・・・抜いてるわよ」

「瑠璃さん。息。息しなきゃ」

「してる!」

高彬が必死なら、あたしも必死だった。

「そんな色々言われても困る。あたしが悪いみたいに言わないで。そんなに言うんなら、もうやめ・・」

「ぼくが悪かった。瑠璃さんは何も悪くない」

「・・・・」

即答すぎる高彬の言葉に、切羽詰ったような高彬の顔に、ふと我に返ってしまった。

あたしも高彬も当然、裸で、高彬はあたしの上にいると言うこの状況。

今、これから二人して一致団結してしようとしてるコトのばかばかしさ。おかしさ。

ふつふつと笑いの種が湧き上がってくる。

堪えきれずに両手で顔を覆うと、何を勘違いしたのか、ぎょっとしたように高彬が声をかけてきた。

「瑠璃さん。何も泣かなくても・・・」

「・・・ふふ・・・ふ・・」

「瑠璃、さん?」

笑いを堪えているために肩が震えてしまう。

「笑って・・・るの?」

恐る恐ると言った感じで聞く高彬の言い方さえもおかしくて、あたしはたまらず笑い出した。

「どうしたの、瑠璃さん」

「だって・・・だって、高彬・・・必死なんだもの」

笑いながらつかえつかえ言うと、一瞬、あっけに取られた顔をした高彬が

「そりゃ、必死になるよ」

真面目に答えるのもおかしく、あたしはまた声を上げて笑った。

「必死過ぎるわよ」

あたしがあまりに笑うので、笑いが感染したみたいに高彬も笑い出した。

「瑠璃さんだって必死だったじゃないか。見ちゃだめ!って。今にも泣きそうな声出して」

「だって、恥ずかしくなっちゃったんだもの。・・・あっ、目!開けてるじゃない。つぶるって言ったのに」

「瑠璃さんだって開けてるじゃないか」

「あたしはいいのよ」

「なんで。ぼくだって・・・見られたら恥ずかしいよ」

「うそおっしゃい」

「本当だよ。男心は複雑なんだ」

「じゃあ、せーので目をつぶりましょ」

「いいよ。・・・せーの!」

ぎゅっと目をつぶり、ひぃふぅみぃと心の中でみっつ数えて薄目を開けると、同じく薄目を開けている高彬と目が合った。

「ほら!やっぱり、目を開けてる!」

「瑠璃さんだって」

二人して笑い出す。

そのまま高彬が接吻をしようとして、でも、笑っているので唇が合わず、それがおかしくて、また二人で笑う。

「そろそろ真面目にやろう」

真面目な高彬が、真面目に言うのがおかしくて、あたしはまた笑ってしまう。

「こら。瑠璃さん、笑い過ぎ」

そう言いながら、高彬はあたしの額に、頬に、唇に、接吻を繰り返す。

指を絡めて、髪を梳き、じゃれあって、見つめ合う。

その日、あたしたちはたくさん笑って、たくさん接吻をして。

気が付いたら、痛い思いも緊張もせずに、あたしは高彬を受け入れていたのだった。







                     <終>




~あとがき~

やっぱり瑠璃と高彬が大好きです。

設定は「秋」ですが、2人は「春」ですね。仲が良くってうらやましいったら。

皆さん、花粉は大丈夫ですか?

聞くところによると、今春に飛ぶ花粉の7割はもう飛んだそうです。

ピークは過ぎたってことなんでしょうか。

明日は祝日ですね。

皆さん、楽しいお休みをお過ごしください。お仕事の方はがんばってくださいね。

いつも拍手やコメント、ありがとうございます。



(←お礼画像&SS付きです)

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Re: 真面目な高彬?

maiさま

三日目、書きましたよ~♪

真面目な高彬?

楽しく読ませていただきました。初々しい初夜の翌日はやっぱり初々しい二夜目ですよね。真面目にちゃんと三日通って、でも、三日ともしっかりコトを成し遂げようとしているあたり、高彬、真面目というか、やっぱりオトコねっ、て感じですかね。やっぱり真面目にエッチなのかなっ(爆)そんな高彬の懸命な様子と、ほんとうに奥手でうぶな瑠璃の様子が微笑ましいです。ぜひ三日目もお願いします

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