***短編*** 甘い誘惑 ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




注)このお話は一話完結です。

『らぶらぶ万歳サークル』さまに出品した作品の再録です。
今回のお題は「霜」でした。




***短編*** 甘い誘惑 ***








御前会議も終わり、殿上の間を後にしようと歩き出したぼくは、融に話しかけられて足を止めた。

「昨日からさ、姉さんが熱だして寝込んでるんだよ」

「瑠璃さんが?小萩から何も聞いてないけど・・・」

忠義者の小萩は、瑠璃さんにちょっと変わったことがあるとすぐに文で教えてくれるのだが、その小萩からは何の連絡もきていない。

「小萩も寝込んでるからだよ、姉さんの巻き添えをくってさ」

「小萩も?いったい、どうしたんだ」

悪い病でも流行りはじめているのかと言う心配と、巻き添えと言う言葉が気にかかって、少し強い口調で聞き返すと

「この寒い中、明け方に庭でぼんやりしてたらしいよ」

「明け方に?なんでまた」

「さあ?いつもの気まぐれじゃない?ほら、姉さんって少し変わってるだろ。ほんと、高彬も物好きだよな」

融は暢気に笑って肩をすくめて見せた。

これ以上、融に聞いても何もわからないみたいだし、今日は瑠璃さんのところに帰るつもりだったから、ぼくは落ち着かない気持ちで仕事を終わらせ、そのまま三条邸へと車を走らせた。

いつもなら小萩が出迎えてくれるのだが、今日はあまり馴染みのない女房に案内されて瑠璃さんのいる東の対屋へ向かう。

「姫さまはさきほどお薬湯を飲まれ、今はお休みになられております」

頷いて部屋に入る。

女房を下がらせて几帳を回り込むと、夜具の上に横たわる瑠璃さんの姿があった。

汗ばんでいるのか、首筋に髪がまとわりついている。

熱のせいかうっすらと頬は紅く、薄く開いた口からは浅く短い息がもれ、少し苦しそうに眉根を寄せて・・・・

そんな瑠璃さんに、ぼくはぎょっとしてしまった。

なぜなら、この顔は見覚えのある顔だったから。

つまり、その・・・・ぼくの下で、ぼくの動きに合わせて、瑠璃さんは良くこんな顔をするから。

誰が見ているわけじゃないとわかっているのに、ぼくは辺りに目をやり、心持ち身体で瑠璃さんを隠すようにした。

まったく瑠璃さんは・・・・

「瑠璃さん、瑠璃さん」

たまらず声をかけて、それでも起きない瑠璃さんの肩を揺さぶった。

「・・・・・たか、あきら?・・・どしたの?」」

「どしたの、じゃないだろ。寒い中、長いこと外に出てたんだって?どうしてそんなことしたんだよ」

「・・・が、きれいだったのよ。それで、近くで見たくなって・・・」

「何がきれいだって?」

「霜、よ。霜が降りて・・・・きれいだったの」

途切れ途切れに言う瑠璃さんはいかにも辛そうだった。

あまり責めるのも可哀相だな、そう思っていると瑠璃さんが何事かをつぶやいた。

「なに?」

耳を近づけると

「高彬に会いたいと、思っていたのよ。だから・・・嬉しい」

そう言って小さく笑う。

ぼくにも経験があるからよくわかる。熱を出して寝込んだとき、無性に瑠璃さんに会いたかったから。

額に手を当てるとじっとりと汗ばんでいて驚くほど熱い。

「冷たくて、気持ちいい・・・」

目を閉じたまま瑠璃さんはつぶやいた。

額から頬へ、そのまま首筋へと手を移すと、よほど気持ちいいのか、うっとりとした顔で小さなため息をもらしている。

調子に乗って単の合わせに手を滑り込ませようとしたところで、瑠璃さんにやんわりと手を掴まれた。

「・・・今日はダメ、みたい」

熱っぽく潤んだ目でぼくを制する瑠璃さんは、ぞくぞくするほど色っぽい。

いったい瑠璃さんは、いつからこんな目をするようになったのか。

・・・参ったな。

言葉を失って返事をしないでいると、黙っているのをぼくが怒ったとでも勘違いしたのか

「ごめんね・・・高彬。風邪・・・治ったら、いっぱい・・・して、ね」

目を閉じたまま、恥ずかしそうに小声でつぶやいた。

数秒固まり、ぼくはがっくりと肩を落とした。

あまりのストレートパンチに完全にノックアウトだ。

こんな瑠璃さんを前にして手が出せないなんて・・・・!ちくしょう。

ぼくはひそかに吐息した。

今夜は長い夜になりそうだ。

襟元を緩め座りなおし、ぼくはそう腹をくくった。




                          
<終>




にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

Re: 読ませていただきました。

慧唯李さん、コメントありがとうございます。

> 高彬、ちょっぴり可哀想ですね。

ふふふ、そうですね。
あの状況は辛いと思います。

> 高彬、がんばれ!と、応援します。

慧唯李さん、応援ありがとう。
ぼくはそんな慧唯李さんが、好きなんだ。(By高彬)

またお立ち寄りくださいね。




読ませていただきました。

こんにちは~。
高彬、ちょっぴり可哀想ですね。
瑠璃さん、早く治るといいかも。霜が綺麗で、寒い中外に出る、瑠璃さん、やんちゃですね。

でも、仲のいい2人を見ることができ、ちょっと淋しい感じもあるけど、よかったです。

高彬、がんばtれ!と、応援します。
プロフィール

瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

ランキングバナー

  ↑
ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたら
クリックで応援をお願い致します。
1日1クリック有効です。
初めにお読みください
**当ブログの簡単な説明です**
当ブログは「なんて素敵にジャパネスク」の二次小説を掲載しております。 二次小説と言う言葉を知らない方や苦手な方は閲覧ご注意ください。 また読後のクレームはお受けできません。 「ごあいさつ<最初にお読みください>」も合わせてご一読下さい。
カテゴリ
別館
乳姉妹ブログ
日記ブログ
掲示板
なんて素敵にサイト様 
最新記事
ご訪問ありがとう(H23.11.28-)
**オンラインカウンター**
現在の閲覧者数:
コメントありがとうございます
お礼SSや「他己紹介」があります。
web拍手 by FC2
** あれこれ投票所 **
お好きなジャンルをお選びください。 投票は何度でも可能です。
*** あれこれ投票所2 ***
メールフォーム(ご用の方はこちらから)

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
月別アーカイブ