***短編*** 月下の恋人~<続々>One spring day【後編】 ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




注)このお話は一話完結です。


※多少セクシャルな表現がありますので苦手な方は閲覧ご注意下さい※  
           




***短編*** 月下の恋人~<続々>One spring day【後編】 ***








「やっぱり高彬が言ってた通り、明るいわね」

すっかり寝静まっている山荘を抜け出し、二人して夜道を歩く。

ほぼ真円の月は山際すれすれの低い位置にあり、春霞のせいなのか、ぼんやりとした輪郭で驚くほどに大きい。

月明かりは夜の吉野の隅々まで届き、足元も十分に明るく、思い付きで言ったとは言え確かにそぞろ歩きにもってこいの宵である。

「瑠璃さん、足は大丈夫?」

「大丈夫よ、小萩に薬草すりこんでもらったら痛みがひいたわ」

「うん」

「あの子、調合が上手なのかも」

「そうか」

「女房辞めても大丈夫かも。案外、そっちの道で大成するかも知れないわ」

「でも辞められたら困るじゃないか」

「まぁね。でも小萩の幸せを思ったら・・」

「小萩の幸せを思うんなら、まずは瑠璃さんが我儘言わなくなるのが一番だと思うけど。小萩、いつも言ってるよ。姫さまの我儘にはいつも振り回されてばっかりって」

「・・やぁねぇ」

隣の瑠璃さんが頬を膨らませた気配があり、ぼくは笑いながら手を取った。

そのまま手をつないでゆっくりと歩きながら、とりとめのない会話をする。

行く当てなんかないから、花の香りに足を止めたり、聞き慣れない鳥の泣き声に耳を澄ませたり、のんびりとした時間が過ぎていく。

「あ、太刀・・」

ぼくが佩帯している太刀に気が付いた瑠璃さんが言い

「まぁ、一応ね。夜だし」

何となくぼくは瑠璃さんから見えないように太刀をずらした。

ある意味ロマンチィックとも言える春の宵のそぞろ歩きに、いかにも太刀は不似合だった。

だけど、夜ともなれば物騒だし、物取りはともかく、どんな獣が徘徊しているか分からない。

瑠璃さんのことはぼくが守らなくちゃいけないわけだし・・・

ちらりと瑠璃さんを見ながら、ふと、昔のことを思いだす。

そう言えば、元々ぼくが瑠璃さんに最初に抱いた感情は「この子のこと、守らなくちゃ」だったんだよなぁ。

それが恋心と気付くまでには少し時間が掛かったけど、だけど、今もその気持ちはずっと続いている。

どんなに撥ねっかえりで気が強くて、どれほど年上風を吹かせても、やっぱり瑠璃さんはぼくにとっては「守ってあげたい女の子」だ。

「守ってあげたい」と言う気持ちがやがて淡い恋心へとなり、それがどんどん強くなって、気が付いたら自分では手が負えないくらいに好きになっていて。

こんな風にただ歩いているだけで楽しくて、仕事の疲れなんか吹き飛んでしまうんだから、やっぱり瑠璃さんはすごい。

ぼくにとってはいつまでも特別な人で、だけど限りなく普通なんだ。

特別で普通。

この、ちょっと人には説明しづらい感覚は、ぼくの中では矛盾なく成立してる感情である。

「ねぇ、高彬」

ぼんやりと月を見ていた瑠璃さんが、視線をそのままに改まった声で言ってきた。

「仕事、無理しちゃだめよ。あんたって止める人がいないとどこまでも暴走しちゃうって言うか、そう言うとこあるから」

それは瑠璃さんだろ、と思ったけど、何となく口をつぐむ。

「いくら出世したって身体壊しちゃ意味ないんだし」

「・・・」

仕事、頑張ってるの別に出世のためってわけじゃないんだけどな・・

「あんたに病気になられたりしたら、あたしだって困るし」

「・・うん」

「・・・先に死なれたりしたら・・・」

一瞬、唇を引き結び

「淋しいし・・・」

少し声が震えてた気がして、気が付いたらぼくは瑠璃さんを抱き寄せていた。

「死なないよ、そう簡単には」

「でも、あんたって結構抜けてるとこあるし、気が付いたら死んでたってことありそうなんだもん」

「ないよ」

笑いながら、瑠璃さんの背中を更に強く抱きしめる。

抱きしめながら

(やっぱり瑠璃さんの中では、ぼくはどこまでも弟分で年下のガキなんだなぁ)

なんて考える。

その認識が覆ることはどうやらこの先もなさそうで、それは嬉しくもあり悔しくもあり、と言った感じだ。

背だってぼくの方が高いし、力だってぼくの方が当然強い。

さっきだって瑠璃さんはぼくの腕の中で息も絶え絶えになっていたと言うのに。

別にそれで男らしさを誇示したいってわけじゃないけど・・・

いや、それもあるかもな。

「瑠璃さん」

顔を上げさせて接吻をする。

両頬をはさみ少し強めに吸うと、瑠璃さんの喉の奥が「・・ん」と鳴った。

唇に舌を割り入れて行くと、少し戸惑いながらも瑠璃さんも応えてくる。

接吻をしながら

(接吻ひとつ取ったってぼくがリードしてるってことに瑠璃さん気付いてるのかな)

なんて思う。

更に激しく接吻をしながら胸の膨らみに手を伸ばすと

「あ・・」

驚いた様に瑠璃さんが身を固くして唇を離した。

気にせず、それどころか瑠璃さんを抱き上げ、近くの樹に背中を預けさせ接吻を再開する。

胸を揉みしだいていくと

「高彬、ちょっと・・」

戸惑う声で瑠璃さんが言い、上目づかいでぼくを見てきた。

ぼくの真意を計りかねているのかも知れない。

合わせに手を滑り込ませ、胸を手の平で直に覆うと、今度ははっきりと

「だめ・・」

瑠璃さんは身を捩り、小声で「こんなところで・・」と呟いた。

「誰も見てないから・・」

京だったらありえないことだけど、吉野と言う地、夜と言う時刻に、ぼくも常ならぬ気持ちになっていたようで、気が付いたらそんなことを言っていた。

さっき中途半端に遮られた欲望に火が付いてしまったようだった。

どこまで瑠璃さんが受け入れてくれるかを試したかった、と言う気持ちもあったかも知れない。

「でも」

「こんなこと言うの今日だけだから」

「・・・でも」

何かを言い掛けた唇を封じ、そのまま舌で口中を掻き混ぜる。

瑠璃さんの小さな舌は逃げるように動き、だけど瑠璃さんは舌どころか身動きすら出来ないほどぼくは束縛を強めた。

強烈な接吻を続けるうち、やがて瑠璃さんの身体から力が抜けて行き、それを合図にぼくは首筋へと唇を這わせる。

合わせを弛め肩を出すと

「・・高彬・・、や・・・」

弱々しい声で頭を振りながら言い、ぼくの肩に手を置いてきた。

だけど、その手はぼくを押し戻すことはなく、ただ置かれているだけだった。

瑠璃さんも流され掛けている───

そう思った瞬間、荒々しい気持ちが突き抜けた。

流されろ!

ぼくの欲望に、瑠璃さんも巻き込まれてしまえばいい。

絶対に普段の瑠璃さんならしないようなことをしてしまえばいい。

そして、それを見れるのはぼくだけだ───

「瑠璃さん、横になるのと、立ったまま、どっちがいい?」

ハッとしたように瑠璃さんがぼくを見て、その口が小さく動いた。

(そんな・・・)と動いたように見える。

「どっちか瑠璃さんの好きな方でいいから」

「・・・」

何も言わずに瑠璃さんはぼくを見つめ、その目は濡れたように光っている。

月明かりのせいなのか、瑠璃さんの中に灯った欲望のせいなのかは分からない。

「誰も見てない。2人だけの秘密だから」

「・・・」

「瑠璃さん」

瑠璃さんがふと目を逸らし、やがて聞こえないくらいの小さな声で

「横で・・」

と言い、月明かりでもわかるほど顔が赤くなっている。

瑠璃さんを抱き上げ、野草が茂る柔らかい場所にそっと横たえた。

瑠璃さんの回りにはたくさんのたんぽぽがあり、折りからの月光を受け銀色に光っている。

瑠璃さんの山吹色の袿も同じように銀色に発光しているように見え、ぼくはしばし見惚れてしまった。

守ってあげたいはずなのに、同じくらいに荒々しい気持ちになるのは何故だろう───

瑠璃さんの笑顔が好きなのに、困らせ泣かせてみたいとも思ってしまうのは何故だろうか・・・

少し考えて、すぐに考えることを放棄した。

月明かりと瑠璃さんの色香に酔っている今のぼくに、正確なジャッジなんか出来るわけないのだ。

今は何も考えずに、この常ならぬ状況に溺れたい・・・

瑠璃さんに覆いかぶさると、ぼくはゆっくりと肌けた華奢な肩に唇を寄せて行ったのだった。






<終>



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コメントの投稿

Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> 夜のデートも大成功♡
> デキる男はチャンスを逃さない!(笑)

さすが有能公達!
何だかんだ言って自分のペースに巻き込んでますよね。(そんな高彬が好き)

> ズバリ包容力のある男ですよ!

確かに高彬って包容力の塊みたいな男ですね。
口うるさいこと言うこともあるけど、でも、最終的には瑠璃の全てを受け入れてますもんね!

> 、、、、で、守弥なんかゼロでしょう?どこで学んだのかなあ!?

守弥!
なんか今の今まで彼のこと、すっかり失念していました(笑)
守弥、母上・・・、この二人に包容力はなさそうですしねぇ。
按察使あたりですかね??

nenicaさま

nenicaさん、こんにちは。

> 高彬の盛り上がりっぷりに流される瑠璃さん良いですね~。

はい、今回の瑠璃は流されてみました!

> 屋敷に戻っていたす選択肢は無いわけですね、なるほど。

あ、そうですね。そう言う選択肢もありましたね(笑)

> 番外編に前回の小萩のレポートが来るのでしょうか。
> PCの前で正座して楽しみに待っています(笑)

小萩レポート、いいですねぇ。
ぜひぜひ、小萩に提出してもらいましょう!

ありちゃんさま

ありちゃんさん、こんにちは。

> 京でなら間違いなく室内です。(笑)

そうですよね~。
場所による開放感ってありますよね。
日本の海ならワンピースだけど、海外ならビキニ着れちゃうとか(笑)

> 追伸 言葉なき(?)リクエストに応えてくださって、重ねて御礼申し上げます。(笑)

いえいえ、こちらこそありがとうございます!妄想が刺激されました(笑)

夜のデートも大成功♡
デキる男はチャンスを逃さない!(笑)
高彬って幼少期の瑠璃さんが一番心細い時に一緒にいたんですよね。高彬からしたら本当に「守ってあげなくちゃいけない女の子」なんですよね、どんなに強がっても。
ズバリ包容力のある男ですよ!
、、、、で、守弥なんかゼロでしょう?どこで学んだのかなあ!?

No title

高彬の盛り上がりっぷりに流される瑠璃さん良いですね~。
そしてほんのりエスっけのある高彬もw
屋敷に戻っていたす選択肢は無いわけですね、なるほど。

番外編に前回の小萩のレポートが来るのでしょうか。
PCの前で正座して楽しみに待っています(笑)

吉野でしかできないこと。

瑞月さん おはようございます。
朝 一番で艶なお話 堪能しました。♡

京でもやろうと思えばできるけど、やっぱ吉野でないとできそうにないこと。素敵です!
て言うか、京ではこうはならないでしょうね。
人目とか理性ではなくて…
二人の想いが滲み出るのは常のことですが、
京でなら間違いなく室内です。(笑)
三条邸の庭もそれなりに美しそうですが、こんなにも優しく更に美しく映るのは、やはり吉野の地だからこそ。

素敵なお話をありがとうございます。

追伸 言葉なき(?)リクエストに応えてくださって、重ねて御礼申し上げます。(笑)
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