***第二話 初めての接吻は突然に***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』







**** 第二話 初めての接吻は突然に ****





東門のあたりがざわついたようで、あたしは知らずに居ずまいを正した。

今は未の刻(午後2時)あたり。

日に日に強くなる陽ざしが、この東の対屋の庭にも降り注いでいる。

三月(やよい)も後半になってくると、どうかすると夏とみがまうほどの暑さのときがある。

でも、あたしがじんわりと汗をかいているのは、何もこの突然の暑さのせいばかりじゃない。

「姫さま、もうじき高彬さまがこちらにお渡りになるそうですわ。今は融さまのところにいらっしゃいます」

小萩がやってきて、高彬を迎えるために部屋を整え始めた。

(う〜〜む、とうとう来たか・・・)

几帳をずらしたり、円座を用意する小萩を横目に、あたしはわれ知らず、扇を持つ手に力をこめた。

あの日から、1週間。

そろそろ来るころじゃないかと思っていたのだ。

あの日、と言うのは、高彬が風邪で倒れて三条邸に泊っていった日のことである。

高彬はあたしと話している時に熱のためにぶったおれて、その日はそのまま三条邸で休んでいくことになった。

あたしは寝る前に何の気なしに高彬を部屋まで見舞いに行き、なんとその時に、童の時に高彬とある約束・・・つまりは結婚する約束をしていたことを思い出してしまったのだ。

あたしはコロッと忘れていたんだけど、高彬はずっとそのことを胸に刻んでいたとかで、あたしに

「今度、会う時までに結婚するかどうかの返事を聞かせてくれ」

と言う宿題を残して行ったのだ。

高彬は翌日には白梅院に帰って行ったけど、それでも3日ほどは参内せずに自宅で療養していたらしい。

融の話で、参内を始めたと聞いていたし、そろそろ「返事」を聞きに来るころじゃないか、と思っていたのだ。

返事と言われても、ほんと困ってしまう。

何と言うか、あたしは、あの日からちょっとおかしいのだ。

何をしていても集中できなくて、それでぼんやりしていると、手首に、高彬につかまれた時の生々しい感覚が急によみがえってきたり、ふいに抱きすくめられた時の思いかけずに強かった力とか、高彬から感じた殿方の匂いとか、それとか、頬に触れた高彬の唇の・・・温かさ・・・とか・・・

そんなことを思い出すと、なんだか「きゃっ」と叫んで逃げ出したくなるような気持ちになってしまうのよ・・・ほんと、困る、こういうのって。

あたしがいつになくぼんやりしたり、おやつの団喜や水菓子(果物)を残したりする様子を見た小萩は

「もしや姫さまは奇病では・・・?」

と父さまに進言したとかで、そのせいか、父さまはすっかり風邪は治ったけれども、さすがに例の「結婚しろ」攻撃を控えているということだった。

おやつを残したくらいで奇病と疑われるなんて心外だけど、確かに普段のあたしは健康そのもの、食欲旺盛だからね。

そう思う小萩の気持ちもわからなくはないのよ。

そんなことを考えていると、ふいに渡殿のあたりがざわついて、女房に先導された高彬がやってきた。



          ***************************************



「こんにちは。瑠璃さん」

軽く頭を下げて、いつものように円座に腰を下ろす。

高彬は衛門佐で大内裏を守る武官だから、しぐさもどこかしらきびきびとしている。

きっと高彬のことだから、武術も真面目に鍛錬しているに違いない。

う〜〜ん、困ったな。

何だかまともに高彬の顔が見られないではないの。

チラチラと扇越しに高彬を見やると、高彬も少し上気した顔をして、そわそわと落ちつかない様子だ。

どうやらやつも同じらしい。

さすがのあたしも何と言って切りだして良いかわからずに黙っていると

「瑠璃さん。ずっと黙っているけど、この間のことを怒っているの?怒ってるんなら・・・・ごめんなさい」

思い切ったように話しかけてきた。

この間のこと、とひと口に言われても、それが手首をつかんだことなのか、急に抱きすくめたことなのか、はたまた頬への接吻なのか、それとも「約束だよ」なのか、さもなければ「柔らかいね」なのか、わからないではないの。

まさか

「この間のことって、どれのことよ」

と聞くのもはしたないし、ほんと、こういうところ、どうにかなんないのかしら。

「別に怒っちゃいないわよ」

ぼそっと言うと、高彬は見るからに安堵したようだった。

「よかった」

そう言ってニコッと笑う。

そして力を得たように

「瑠璃さん。それで、瑠璃さんの返事は?今日は聞かせてもらえるんだよね」

身を乗り出すように聞いてきた。

はぁ〜〜〜〜。

あたしはがっくりと肩を落とした。

もう、どこまで朴念仁なのよ。

「怒っていない」

って言うのが、もう返事みたいなもんじゃないの。

それを更にダメ押しで確認してくるなんて。

女の身で、いったいどう言えって言うのよ。バカ。鈍感。

あたしが黙っているのを、またもやどう勘違いしたのか

「言いづらい答えなの?ぼくは大丈夫だよ。はっきり瑠璃さんの口から聞きたいんだ」

な〜んて強張った顔して言い出すんだもの。

あたしは意を決して口を開いた。

「・・・するわよ」

「え」

「だからするわよ。結婚」

「えっ。誰と」

「誰とって・・・。あんた以外にいないじゃない」

もう、恥ずかしいわね。

あたしは真っ赤になった顔を扇で隠しながらそっと高彬を見ると、高彬もあたしに負けず劣らずの真っ赤な顔で、さらには耳や首筋までもが火が付きそうなくらいに赤い。

あたしよりも真っ赤な高彬を見ていたら、にわかに姉のような気分が戻ってきて、あたしは高彬に念を押した。

「高彬。わかってるとは思うけど、あたし、浮気な男はきらいよ」

「わかってるよ、瑠璃さん」

「妻は生涯、あたし1人じゃなきゃいやよ」

「もちろんだよ。妻は生涯、瑠璃さん1人だよ。誓うよ」

顔を赤らめたまま熱心に言う。

うふふ。カワユイじゃない、高彬ってば。

そして急に何を思い出したか

「ごめん、瑠璃さん。また今度」

と行ってそそくさと部屋を出て行ってしまった。

高彬のあまりに突然の退出にポカンとしていると、後ろで控えていた小萩がびっくりしたように話しかけてきた。

「んまぁ・・・!姫さま、今のお話は本当でございますの?高彬さまとご結婚されると言う・・・」

「うん、まぁね。ほんとにほんとなのよ。えへへ」

照れくさいやら恥ずかしいやらで、扇をもてあそびながら言うと、小萩は深い深いため息をついた。

「それでここのところ、姫さまは人が変わられたように小食でいらしたのですね」

合点がいったというように頷いている。

少しの間、感慨深げにしていたが

「本当にようございましたわ、姫さま。小萩も嬉しゅうございますわ。これで大納言さまも心安くなられますわね」

実直そのものに言う。

どうやら小萩は小萩で、毎日のように繰り広げられるあたしと父さまの丁々発止のやりとりに心を痛めていたらしい。

「高彬さまは、お家柄の良さもさることながら、その誠実なお人柄やお振舞いが人づてにも伝わって、わたくしどものような女房や下々のものにまで、とてもご評判がよろしい方ですのよ、姫さま。そのような殿方が姫さまの婿君になられるなんて、小萩も何やら誇らしい気分ですわ」

「へぇ〜〜、そんなに高彬って人気があんの」

初めて知ったわ。グズな弟、くらいにしか思っていなかったから。

「聞いたところによりますと、右大臣家の女房たちは、先を競って高彬さま付きになりたがるそうですわ。ところが、高彬さまにはそりゃあ口うるさい供人がいらっしゃるらしくて、その供人のお眼鏡に適わないものは、高彬さまに近付くことさえも許されないとか。その供人は、右大臣家の女房に煙たがれてるそうでございますわ」

小萩も気が高ぶっているらしく、聞いてもいない話を楽しそうに話している。

「まぁまぁ、小萩ったら。右大臣家の家人のことなど、姫さまのお耳に入れても詮無いことでしたわね」

まるで自分の結婚が決まったかのようなはしゃぎっぷりである。

と思う間もなく、ドタドタと渡殿を走る足音が近づいてきたかと思うと、転がるように父さまが部屋に入ってきた。

「瑠璃やっ。今、高彬どのが寝殿に来られてな。る、瑠璃と、けけけ結婚したいと申されておったが、それは本当なのかっ。瑠璃も了解していると言うんじゃっ」

卒倒しないのが不思議なくらいに取りみだしている。

「まぁ、そうよ。高彬と結婚するのよ」

「瑠璃や〜〜〜〜〜」

そう言ったなり、おいおいと泣きだし、かと思ったら泣きすぎて咳き込み、慌てて近付いた小萩の手を取っては

「今日は佳き日じゃ、佳き日じゃ。な、小萩もそう思わんか」

とまた泣き崩れている。

高彬のやつめ、慌てて部屋を飛び出していったと思ったら、さてはあたしの気が変わらないうちに父さまに早々に報告に行ったんだな。

まぁ、それもこれもあたしと是が非でも結婚したいって言う表れだから、心が和むけど。

少しすると、ようやく父さまは落ち着きを取り戻し

「高彬どのとの結婚が決まっていたのなら、早くにわしに知らせても良いではないか。瑠璃も水くさい」

「水くさいって言われたって、ついさっき決まったばかりだし・・・」

あたしの言うことなんか全然耳にはいってないみたいで

「管弦の宴はもう必要ないから止めじゃ。延期ではなくて中止です、中止ですぞ。おおそうじゃ、明日にでも権少将どのにもお断りしておかなくては・・・」

などと、わけのわからないことを言い

「めでたい、めでたいですぞ、瑠璃。高彬どのはな、もう少し官位が進んでから正式な結婚を申しこんでくださるということじゃ。そこまで気を使っていただけるなんてありがたいことじゃ。なぁに、高彬どのなら次の除目ですぐにも昇進されるに決まっとる。瑠璃も心しておくようにな」

言いたいことだけまくしたてると、来た時と同じくらいの慌ただしさで出て行ってしまった。

小萩と言い父さまと言い、よくもあれだけ人の結婚で盛り上がれるわよ。

・・・と言いつつ、あたしもいつになく気持ちが高ぶってるんだけどさ。

童の頃からずっと想っていてくれてたって言うし、何よりも浮気しないと誓ってくれてるんだもの。

あたしだってそりゃあ、少しはときめいちゃうわよ。

高彬と結婚かぁ。

官位が進んでからっていうんなら、今すぐどうこうってわけじゃなさそうだけど、でも、これから日取りやら準備やらで忙しくなるんだろうな。

こもごも考えていると

「あのぉ、姫様」

おずおずと言った感じで小萩が話しかけてきた。

「こんな日に申し上げるのは心苦しいのですが、いつぞやお話した里帰りのことなのですが・・・」

肩をすぼめ、本当にすまなそうに言う。

「あぁ、わかっているわ。里帰りするのよね。私は大丈夫だから、ゆっくりしてらっしゃいよ」

一月ほど前に、小萩は今日から4、5日、里帰りをしたいと申し出ていたのだ。

「申し訳ありませんわ、姫様。こんな佳き日に」

「いいのよ。今すぐ何かするわけじゃないし。忙しくなるのはもう少し先よ」

正直、結婚が決まったこの気分を小萩と浮かれて話したいって気持ちはあるけど、普段、小萩は良くやってくれているんだし、なんて言ったってあたしの大切な腹心の女房。

労えるときには労いたい。

すみません、すみませんと何度も頭を下げる小萩を、あたしは気分よく送り出した。




      *********************************************************



その夜、すっかり邸中が寝静まった頃。

あたしは1人眠れずに脇息にぼんやりと寄りかかっていた。

もう亥の刻(午後10時)はとうに過ぎているに違いない。

寝所を整えた女房たちもずいぶん前に下がっていき、あたしも横になったのだけど、どうにもこうにも寝付けなくて起き出してしまった。

あたしもまだやっぱり気が高ぶっているみたい。

そりゃあそうよね。

つい最近まで独身主義者だったのに、あれよあれよという間に結婚が決まってしまったんだもん。

その相手が筒井筒の高彬って言うんだから、ほんと、人生なんてどう転ぶかわからない。

高彬なんてガキの頃からの付き合いで、公達として意識したことなんて一度もなかった・・・はずなんだけど、でも、何だかあたしも妙にときめいちゃったりしたしさ。

ほんと不思議よ、人生って。

あたしはふと思いついて二階厨子から物語巻を取り出した。

これは「源氏物語」と言う都で評判のお話で、いつだっかた遠縁の叔母君があたしにくれたものだ。

でも、あたしはもともと物語なんて辛気臭いものは好きじゃないし、特にこの「源氏物語」はあたしの大嫌いな浮気な男が主人公のお話だったから、ろくに読みもせずに二階厨子に適当に放り込んでおいた。

「源氏物語」って言うのは、簡単に言うと恋愛物語で、あっちこっちでくっついたり別れたり、のお話なのだ。

独身主義者の頃は、恋愛自体に興味がなかったら鼻もひっかけなかったんだけど、結婚することが決まった今となっては、ちょっと興味が出てくるのが乙女心ってもんよ。

どうせ寝付けないんだし、少し読んでみようかしら・・・・

あたしははらりと巻物を紐解いた。

カタン。

何かが揺れる音がして、あたしはハッと振り向いた。

しばし耳を澄ませても何の物音もしない。

気のせいかと思って身体を戻したとたん、几帳の陰からヌッと人影が現れた。

「誰っ」

言うより早く腕をつかまれてしまった。

誰よ、この男!

「姫、お静かに。わたくしは権少将と申すものです。姫に恋しているものです。どうかわたくしに情けをかけてください」

とっさに顔をそむけ、何とか顔だけは見られないようにしたのだけど、男はあたしの身体ごと抱きしめようとしてくる。

ふざけんじゃないわよっ。

「やめ・・・」

やめてよ、と叫ぼうと思ったのに、なんということ、口を手でふさがれてしまった。

「瑠璃姫への思慕は、お父上である大納言どのもすでにご存じなのですよ。どうかそう、かたくなにならずに」

冗談!何の話よ。

そういえば今日、父さまが権少将がどうとか言ってた気がする。第一、どうしてこの男はあたしの部屋を知っているのよっ!

それにどうして妻戸に鍵がかかってなかったのかしら。

きっと女房の誰かがかけ忘れたに違いない。小萩がいないと、からっきしダメなんだから!

いやいや、今はそんなことを考えてる場合じゃないわ。

几帳のすごそこには寝所がある。

このままでは引きずり込まれるのも時間の問題だ。

あたしは自由になる足をばたつかせて、何とか抵抗を試みたんだけど、そこはやっぱり女の力の物哀しさ。

ずるずると寝所に引っ張られてしまった。

権少将が覆いかぶさってきた。

足をばたつかせているうちに、運よく几帳にあたったみたいで、ものすごい音をたてて几帳が倒れ、その音に驚いた権少将の手が一瞬、あたしの口から離れた。

「助けて!」

喉も裂けよとばかりに叫ぶと、権少将は血走った眼であたしに顔を近づけてきた。

接吻される!

あたしはおもいっきり首をよじり、なんとか逃れたのだけど、吐く息が近くて、気持ち悪くて、あたしは泣きそうになった。

もうだめだ・・・。

そう思ったら高彬の顔が浮かんできた。

(高彬・・・高彬・・・助けて・・・)

「高彬・・・!」

あたしは高彬の名を叫んでいた。

次の瞬間、ドンと言うすごい音がして、誰かが部屋に飛び込んできた。

そのままズカズカと部屋を横切り、あたしに覆いかぶさっている権少将の肩に手をかけ、物も言わずに強引に身体を引き離した。

灯台のあかりに浮かぶその顔は・・・・高彬だった。

ふいを突かれた権少将はうろたえたようだったけど、相手が自分より官位が下だとわかると

「こんなところで何をしている、衛門佐」

と横柄に言った。

「何をしているとは、これはまた無粋なことを、権少将どの。こんな夜半に宮中の任務で女性のもとを訪れるわけはないでしょう。恋人に会うためにやってきたのですよ」

権少将の方が官位も年も上なのに、高彬はいやに落ちついた受け答えをしている。

「恋人だと?大納言どのから、瑠璃姫に通う男はいないと聞いている。見え透いた嘘をつくな」

「瑠璃姫とは筒井筒の頃からの恋なのですよ。今までは秘めてきましたが、本日、大納言さまにも正式にお話をしました。そうですよね、瑠璃姫。さぁ、姫、こちらに」

高彬の言葉に促されて、あたしは這うように高彬のそばに行き、そのまま背中に隠れた。

「何と言うこと・・!大納言どのも恥知らずな!」

「権少将どのにも、人に聞かれたは困る醜聞がおありなのではないですか?」

図星だったのか、権少将はグッと言葉に詰まり、そのまま悔しそうに顔をゆがめて出て行った。

助かった・・・

あたしはヘナヘナと座りこんでしまった。

「瑠璃さん、大丈夫だった?」

心底、心配そうに高彬があたしの顔をのぞきこんだ。

「何か変なことはされなかった?」

コクコクと頷くと

「良かった。本当に良かった・・・」

と目をつむった。

「宮中でね、権少将どのが従者らに三条邸に行くように命じているのが聞こえたんだ。こんな時間にどうして・・と、胸騒ぎがして、ぼくも急ぎ退出して来てみたんだよ。もっと早くに来れればよかったのに・・・ごめんよ」

優しくそう言う高彬の顔を見ていたら、ふいに涙が溢れてきた。

「高彬ぁぁぁ」

わ〜〜〜ん、怖かったよぉぉぉ。

あたしは高彬にしがみついてポロポロと涙を流した。

「ごめんよ、瑠璃さん。怖い思いをさせてしまったね、ごめんよ」

高彬はあたしをしっかりと抱きしめて、ごめんよ、ごめんよ、と繰り返した。

あたしの肩に手を置いて身体を離し、長いことあたしの顔を見ていた・・・と思ったら、顔が近付いてきて、高彬の唇があたしの唇に触れ、すぐに離れた。

これが接吻なのね・・・

ぼぉっとしていると、高彬は少し顔を傾けて、もう一度あたしの顔を見た。

そして両手であたしの頬を優しく包むと、もう一度、唇が触れてきた。

今度は、もっと長く・・・・。

権少将のやつが近付いてきた時はぞっとしたのに、高彬は違うのね。

うっとりしていると、ふいに高彬が立ち上がった。

「どうしたの?高彬。帰っちゃうの」

「いや、あんなことがあった後で今日は瑠璃さんも不安だろう。ぼくが宿直してあげるよ」

そういって歩き出そうとする。

「待ってよ、高彬だって仕事の後で疲れてるんでしょ。一緒に寝ましょうよ」

言った途端、高彬の顔が夜目にもすぅっと赤くなった。

い、いや・・・そういう意味じゃないのよ。何もそういうつもりで言ったわけじゃなくて・・・・

「わ、童の頃は、融と3人でよくお昼寝してたんだし・・・」

恥ずかしくて俯いたまま言うと、高彬は少し笑い

「今、瑠璃さんの隣で寝たら、ぼくも・・・何するか・・・正直、自信がないから、だから・・・」

照れたように言い、そして顔を引き締めて

「だから、あちらにいるよ。瑠璃さんは安心して早く休むといい」

と続けた。

そのまま几帳を回り込み、格子のほど近くに腰を下ろす。

あたしは夜具に身を横たえ、少し身体をずらして座っている高彬の方を見た。

釣燈籠の灯りに、高彬の横顔が浮かんでいる。

高彬、何を考えているの・・・・

ふいに聞いてみたくなり、それでもあたしは何だか言葉が出なくって目をつむった。


高彬の気配を感じながら、あたしはやがてそのまま眠りに落ちた・・・・。




         *********************************************




翌朝、目を覚ますと、高彬の姿は影も形もなかった。

あたしは朝一番で父さまの部屋に駆け込み、管弦の宴の企てを全て白状させたわよ。

本当に呆れた話じゃない。

いくら結婚させたいからって、夜這いの手引きまで考えてたなんてさ。

あそこで高彬が来てくれなかったら、あたしは今頃・・・・

そう思った瞬間、昨夜の高彬との接吻を思い出してしまい、あたしは1人で赤くなってしまったのだった。






<終>






〜あとがき〜

というわけで、次回はズバリ「初夜」です。

と行きたいところですが、やっぱり自粛します。どこまでも筆がすべりそうで怖いです。

頭の中ではちゃっかりできあがっているんですけどね(笑)




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