社会人・恋人編<68>
「瑠璃さん!」
新幹線から降り立った高彬は、すぐにあたしを見つけてニコニコと笑いながら近づいてきた。
「はい、これ。由良からのお土産」
紙袋を手渡され
「ありがと」
受け取りながら高彬を見ると───
─Up to you !Ⅱ─side R <第68話>
「瑠璃さんが迎えに来てくれるなんて嬉しいな」
「・・・」
嬉しさを隠そうともしない高彬の口調に、あたしは心の中では(うーむ)と唸ってしまった。
こんな風に手放しで喜ばれちゃうと、何だか言い出しづらいわねぇ・・
何を隠そうあたしが迎えに来た目的は───
ズバリ、学生時代の外泊の理由を聞くためなのよ。
だって気になるじゃない。
<外泊>に<寝不足>に、極めつけは<疲れた顔>よ!
モテモテだったって言うし、これはもう考えられることと言ったらひとつしかないじゃない!
どうやって聞きだそうかしら。
いきなり「あんた、高校時代の外泊って何よ。何してたのよ」なんて聞くのも唐突過ぎるしねぇ・・
なんて思っていたら
「それにしても驚いたよ。大江と小萩が知り合いだったなんて。しかも昨日、瑠璃さんとこに泊まらせてもらったんだって?」
タイミング良く、高彬の方から大江の話を持ち出してくれた。
高彬にはメールで大江のことを伝えてあったのだ。
「そうなの。びっくりよねぇ」
「大江は少し前の新幹線で京都に帰ったんだろ?」
「うん」
そう。
結局、昨日、小萩を待ちがてら渋谷をブラブラし、そうしてその後、ホテルに泊まるからと遠慮する大江を半ば強引にあたしのマンションに泊まらせた。
もちろんマンションでは、小萩の初デートの話で盛り上がってしまったわけなんだけど。
小萩も満更でもなさそうだったけど、かと言って次に会う約束をしたとかそういうわけでもなさそうで、まぁ、政文の片思いの行方は、今の段階では「杳として知れず」って感じかしらね。
「どうする?これから。まだ早いからどこか行ってもいいし、ぼくのマンションに来てもらってもいいし」
チラリと意味ありげに横目で見られ、またしても(うーむ)と唸ってしまった。
どうしよう。
聞きだすなら2人きりの方がいいかしら。
でもマンション行ったら、何かうやむやなうちに高彬のペースになりそうな気もするしなぁ。
迷っていると
「そう言えば、少しばかり捜査に進展があったんだよ」
高彬が思ってもみないことを言いだした。
「え」
と言いつつ、実はあたしも高彬に報告しなきゃいけないことがあるのよねぇ。
怒るの分かってるから出来れば言いたくないんだけど、でも、話さないわけにはいかないし。
「実は・・・あたしもあるのよ」
歯切れ悪く言うと
「よし、じゃあ『捜査本部』に決まりだ。行こう、瑠璃さん」
高彬はホームを歩き出した。
*****
「えーとね、高彬。捜査会議を開く前にひとつふたつ聞きたいことがあるんだけど・・」
リビングのテーブルで向かい合い、高彬がいれてくれたカフェオレを一口飲んだところで切り出す。
「うん、何だい」
コーヒーを口に運びながら機嫌よく高彬は言い
「あのね」
「うん」
「高彬って、高校生の時、外泊ってしてた?」
「はぁ?外泊?高校の時?」
「うん」
「なんだよ、急に」
高彬は訝しそうな目付きであたしを見てきた。
「いえね、えーと、あたし、実は昨日、わけあって渋谷に行ったのよ。そしたら、これがまぁ、色んな若者がいてさ。それが驚いたことに、何だかみんな大人びて見えるのよ。それで、この子たちって外泊とかしてるのかなぁ、なんて思っちゃってさ、ははは。で、ふと、思ったのよ、高彬も高校の頃は外泊とかしてたのかなぁ、なんて」
しどろもどろに、それでも何とか聞きたいことを織り交ぜて言うと、しばらくじっとあたしを見ていた高彬は
「瑠璃さん・・」
何だか感極まったような声で呟いて、薄っすらと頬を染めた。
「・・・」
高彬ったら、何、頬を染めているのかしら・・
不思議に思っていると
「それってもしかしたら、自分の子どもはどんな風に育てたいかってこと?」
「え」
「そんな風に聞いてくるってことはさ、瑠璃さん、もしかしたら・・・」
「・・・」
「いつかので、・・・その・・・、出来た、とか?」
「ち、ち、違うわよ!って言うか、まだ分からないわよ!」
何をどう勘違いしたら、今の質問でそっちの方に頭が行くのよ!
「もうっ。そ、そんなんじゃないわよ。高彬が高校の時、ちょくちょく外泊してたって大江から聞いたのよ!こうなったらはっきり聞かせてもらうけど、外泊してどこ行ってたの?何してたのよ」
身を乗り出して詰め寄ると
「・・・」
高彬は黙り込んだ。
…To be continued…
高彬の外泊の真相は?!楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
↓↓

(←お礼画像&SS付きです)
新幹線から降り立った高彬は、すぐにあたしを見つけてニコニコと笑いながら近づいてきた。
「はい、これ。由良からのお土産」
紙袋を手渡され
「ありがと」
受け取りながら高彬を見ると───
─Up to you !Ⅱ─side R <第68話>
「瑠璃さんが迎えに来てくれるなんて嬉しいな」
「・・・」
嬉しさを隠そうともしない高彬の口調に、あたしは心の中では(うーむ)と唸ってしまった。
こんな風に手放しで喜ばれちゃうと、何だか言い出しづらいわねぇ・・
何を隠そうあたしが迎えに来た目的は───
ズバリ、学生時代の外泊の理由を聞くためなのよ。
だって気になるじゃない。
<外泊>に<寝不足>に、極めつけは<疲れた顔>よ!
モテモテだったって言うし、これはもう考えられることと言ったらひとつしかないじゃない!
どうやって聞きだそうかしら。
いきなり「あんた、高校時代の外泊って何よ。何してたのよ」なんて聞くのも唐突過ぎるしねぇ・・
なんて思っていたら
「それにしても驚いたよ。大江と小萩が知り合いだったなんて。しかも昨日、瑠璃さんとこに泊まらせてもらったんだって?」
タイミング良く、高彬の方から大江の話を持ち出してくれた。
高彬にはメールで大江のことを伝えてあったのだ。
「そうなの。びっくりよねぇ」
「大江は少し前の新幹線で京都に帰ったんだろ?」
「うん」
そう。
結局、昨日、小萩を待ちがてら渋谷をブラブラし、そうしてその後、ホテルに泊まるからと遠慮する大江を半ば強引にあたしのマンションに泊まらせた。
もちろんマンションでは、小萩の初デートの話で盛り上がってしまったわけなんだけど。
小萩も満更でもなさそうだったけど、かと言って次に会う約束をしたとかそういうわけでもなさそうで、まぁ、政文の片思いの行方は、今の段階では「杳として知れず」って感じかしらね。
「どうする?これから。まだ早いからどこか行ってもいいし、ぼくのマンションに来てもらってもいいし」
チラリと意味ありげに横目で見られ、またしても(うーむ)と唸ってしまった。
どうしよう。
聞きだすなら2人きりの方がいいかしら。
でもマンション行ったら、何かうやむやなうちに高彬のペースになりそうな気もするしなぁ。
迷っていると
「そう言えば、少しばかり捜査に進展があったんだよ」
高彬が思ってもみないことを言いだした。
「え」
と言いつつ、実はあたしも高彬に報告しなきゃいけないことがあるのよねぇ。
怒るの分かってるから出来れば言いたくないんだけど、でも、話さないわけにはいかないし。
「実は・・・あたしもあるのよ」
歯切れ悪く言うと
「よし、じゃあ『捜査本部』に決まりだ。行こう、瑠璃さん」
高彬はホームを歩き出した。
*****
「えーとね、高彬。捜査会議を開く前にひとつふたつ聞きたいことがあるんだけど・・」
リビングのテーブルで向かい合い、高彬がいれてくれたカフェオレを一口飲んだところで切り出す。
「うん、何だい」
コーヒーを口に運びながら機嫌よく高彬は言い
「あのね」
「うん」
「高彬って、高校生の時、外泊ってしてた?」
「はぁ?外泊?高校の時?」
「うん」
「なんだよ、急に」
高彬は訝しそうな目付きであたしを見てきた。
「いえね、えーと、あたし、実は昨日、わけあって渋谷に行ったのよ。そしたら、これがまぁ、色んな若者がいてさ。それが驚いたことに、何だかみんな大人びて見えるのよ。それで、この子たちって外泊とかしてるのかなぁ、なんて思っちゃってさ、ははは。で、ふと、思ったのよ、高彬も高校の頃は外泊とかしてたのかなぁ、なんて」
しどろもどろに、それでも何とか聞きたいことを織り交ぜて言うと、しばらくじっとあたしを見ていた高彬は
「瑠璃さん・・」
何だか感極まったような声で呟いて、薄っすらと頬を染めた。
「・・・」
高彬ったら、何、頬を染めているのかしら・・
不思議に思っていると
「それってもしかしたら、自分の子どもはどんな風に育てたいかってこと?」
「え」
「そんな風に聞いてくるってことはさ、瑠璃さん、もしかしたら・・・」
「・・・」
「いつかので、・・・その・・・、出来た、とか?」
「ち、ち、違うわよ!って言うか、まだ分からないわよ!」
何をどう勘違いしたら、今の質問でそっちの方に頭が行くのよ!
「もうっ。そ、そんなんじゃないわよ。高彬が高校の時、ちょくちょく外泊してたって大江から聞いたのよ!こうなったらはっきり聞かせてもらうけど、外泊してどこ行ってたの?何してたのよ」
身を乗り出して詰め寄ると
「・・・」
高彬は黙り込んだ。
…To be continued…
高彬の外泊の真相は?!楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
↓↓

(←お礼画像&SS付きです)