***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>4

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。閲覧は自己責任でお願いいたします。
               
        






***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>4 ***






「さすがは伝説の瑠璃姫、随分と無理な要求を突きつけてくるものですね」

「まったくもって・・・」

「いやはや、どうしたものですか・・・」

秋篠中将の言葉に、帥の宮、権少将は続けて相槌をうち、昼御座の中の今上も深く頷かれた。

清涼殿の母屋、今上の御前に集まったのは、秋篠中将、帥の宮、権少将、そしてぼく右近少将の4人で、孫廂に正装した女房らが控えているサマは宮廷絵巻そのものである。

春の陽がやわやわと今上の昼御座にも届き、厚畳の繧繝縁畳を輝かせている。

その中で今上は渋面を作られ、しきりに笏を弄ばれ、口元を隠したり頬にあてがったりしておられる。

「いくらなんでも無理難題が過ぎますね。我々にならばともかく、今上にまでそのような文が届くとは、一体どのようなおつもりなのか・・」

帥の宮が穏やかながらもどこか非難の含みをもたせた声音で言った。

「そうですね。今上が入内をお望みになれば、瑠璃姫とて無視は出来ぬものを・・・」

秋篠中将の言葉を今上は遮り

「いやいや、いいのだ、秋篠。それは命じないと言ったのは私なのだからね。そんなことをしたら私が勝つことが決まってしまい面白くない。入内は禁じ手だ」

面白そうにおっしゃられ、それを受けて

「ありがたき幸せ」

権少将はおどけた風に頭を下げてみせた。

皆がどっと笑い、その中でぼくは気付かれないように小さく息を吐く。

「どうした、高彬。おまえには何か秘策でもあると言うのか」

今上に言われ、ぼくははっと顔を上げた。

ぼくがあれ以来、文を送っていないと言うことは、ここいいる皆はご存知ないので、当然、ぼくにも瑠璃さんからの無理難題の文が届いていると思われているのだろう。

「仏の御石の鉢」「鼠の裘」「龍の首の珠」「燕の産んだ子安貝」と来たら、残るひとつは「蓬莱の玉の枝」────

「いえ、秘策などと言うものは何も。そもそもが伝説の話ですし・・・」

慎重に言葉を選んで言うと

「いかにも」

帥の宮は深く頷き、皆で顔を見合わせながら目配せし合っている。

その様子は本当に手の打ちようがなくて途方に暮れているようにも見えるし、何かアテが合って、お互いに腹の探り合いをしているようにも見える。

皆に合わせ、適当に頷きながら、ぼくの心は穏やかじゃなかった。

何しろぼくには文すら届いていないのだから。

まだしも「蓬莱の玉の枝」を用意しろ、とでも言ってもらえれば、頑張りようがあるというものだ。

ぼくは恋のレースのスタート地点にすら立たせてもらってないと言うことで・・・

出るのはため息ばかりなり、だ。



******



「高彬さま、いかがなされましたの?最近、お元気がないようでございますけど・・」

自室で漢詩の勉強をしていたら、白湯を持ってきた大江に話しかけられた。

漢詩の勉強とは名ばかりで、ついついぼんやりとしていたらしい。

「ひょっとしたら、瑠璃姫さまのことで何かございましたの?」

大江はぼくの恋を応援してくれている数少ないうちの一人なのである。

数少ないと言うか、融の他は大江だけかも知れない。

いや、一応、小萩も応援めいた気持ちは持ってくれていそうだから、まぁ、それにしたって3人だけだけど・・・

瑠璃さんの文をことを教えると、大江は(うーん)と腕組みをして少し考えると

「それでは腕の良い金細工職人に<蓬莱の玉の枝>を作らせたらいかがですか?」

「文ももらってないのに?」

「そこがいいんですわ。サプライスって感じで」

「だけど職人に作らせたことがバレたら・・」

「バレるも何も実際にあるものではないんですもの。瑠璃姫さまだって本物が欲しいとは思ってないはずですわ。自分のために職人にわざわざ作らせた、そのお気持ちが嬉しいものなんです」

「・・そういうものなのか?」

「ええ。お金はいくらでもあるんですもの」

「・・・」

そうか・・、先回りして<蓬莱の玉の枝>を贈ってしまう、か・・・

だけど、そんなこと、皆も考えそうだし。

いや、何よりもぼくは文すらもらえてないんだしな。

どうしたものか。

もう一度、文を書いてみようか。

それよりも、御簾越しでもいいから思いのたけをぶつけてみようか。

あれこれ思い悩むうちに日は過ぎて行き、桜も散り透いたある日の午後、右近衛府の一室で書き物をしていたぼくの元に融がやってきた。

「融。今日あたり、その・・、また瑠璃さんのところに行かないか」

ダメでもともと、当たって砕けろの精神で、はっきりと思いを伝えようと思い定めていたぼくは融に言った。

並々ならぬ決心で言ったのに、融は呑気そうな口調で

「姉さん?姉さんなら、今、吉野にいるよ」

そう言ったのだった。





<続>




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