<原作オマージュ>6~原作一巻より 

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




注)このお話は原作のあるシーンを高彬目線で書いていますのでネタバレとなっています。
原作未読の方はご注意ください。
          
          




***<原作オマージュ>6~原作一巻より***








差し出した文を見て、父上と母上の視線が一瞬交差したのをぼくは見逃さなかった。

「読んでいただければわかりますが、どうやら二の姫にぼくから文が届いているようなのです」

一言一言はっきりと強めの口調で言うと、父上はごくり、と唾を飲み込み、母上に至っては扇で顔を隠してしまっている。

この様子を見れば、ぼくの読みで間違いないだろう。

やっぱり、ぼくの名前で二の姫に文を送っていたんだ。

まったく・・・

「ぼくは二の姫との縁談はお断りしたはずです」

「じゃがのぅ、高彬。そう悪い話ではないと思うがのぅ、二の姫と言えば、当代きっての才媛の呼び声も高い姫ではないか」

父上が言えば

「そうですとも。母の目から見て、高彬さんに一番、相応しい姫さまだと思えますわ」

隣から母上も大きく頷きながら言い、ぼくは気付かれないようにそっと息を付いた。

才媛だとか、相応しいとか、そんなことはどうでもいいことだと前に話したじゃないか。

父上や母上は、ぼくの名前で文を送るということが、どういうことだか判っているのだろうか。

二の姫サイドから見れば、ぼくもこの縁談に乗り気だと言う事になるのだ。

後になって実はあれは間違いでした、なんてことになったら兵部卿宮のご不興を買う事にもなりかねないし、何より二の姫に恥をかかすことになる。

「・・・・」

ぼくは腹を決めた。

好きな姫がいるとはっきりと言おう。その姫と結婚したいのだ、と。

何となく言いだすタイミングを見計らってずるずると言わずにいたぼくも悪いんだ。

大納言さまと話を詰めてからと言う気持ちもあったし、想う姫がいると告白する気恥ずかしさもあった。

だけど、こんな風に文を密かに送られていたとなると、のんびり構えているわけにもいかない。

ぼくはじり、と膝を進め、居住まいを正した。

「父上、母上、実はぼくには・・・」

「実はのぅ、高彬」

意を決して話し出したのに、話の腰を折られてしまった。

「これは大尼君のお計らいなのじゃよ」

「え?・・・お祖母さま?」

どうしてここにお祖母さまの名が出てくるのかわからなくて聞き返すと

「そうじゃ。誰あろう、大尼君がおまえと二の姫との結婚を望んでおるのじゃ。なんでも、若かりし頃、大尼君は兵部卿宮と許されぬ恋に落ちたらしくてな、その記念に孫同士を結ばせようと画策しておるらしいのじゃ」

「・・・・」

「文を送っておったのも、大尼君じゃ」

「・・・・」

余りと言えばあまりの話に、とっさに言い返す言葉も出てこなくて黙っていると、そんなぼくに向かい父上は

「こうして大尼君がお倒れになった今、祖母孝行だと思って、今一度、二の姫との縁談を考えて見ると言うのはどうであろうかのぅ、高彬」

父上は情緒たっぷりに言い、母上はと言うと

「そうですよ、高彬さん」

スンと鼻をすすり、そうして、つと目頭を押さえたのであった。



*********



「若君。ご気分でもすぐれないのですか?何やらお顔の色が悪いように見受けられますが」

自室の戻り、ぼんやりと脇息に寄りかかっていると、いつからそこにいたのかも部屋の隅に守弥が控えていた。

「うん・・・。いや・・・」

あやふやに答えながら息を吐く。

さっきの父上との会話の衝撃が続いているのだ。

文を送っていたのがお祖母さまだったなんて、そんなにもぼくと二の姫との結婚をお望みなんだろうか。

だけど、ぼくは瑠璃さんのことが好きで・・・

「どうかされましたか。この守弥めでお力になれることでしたら」

守弥の優しい言葉に、ふと心が動いた。

守弥に相談してみようか。

まだ誰にも瑠璃さんのことは話していないけど、守弥に話したら何かアドバイスをもらえるかも知れない。

さっきの話だって聞いていたんだろうし。

「守弥」

「はい、若君」

「先日来、二の姫との結婚を勧められているだろう?」

「はい」

「実はね、守弥。まだ誰にも言わないで欲しいんだけど・・・・、ぼくには好きな姫がいるんだよ」

守弥の眉が少し上がった。

「だから、二の姫との縁談をお断りしていた、と。そういうことなのでございますか?」

「うん、実はそうなんだ」

少しの間、考える風だった守弥は

「若君。その姫と言うのはどちらの・・?」

と聞いてきた。

うん、そうだよな。そう来るよな。

「三条邸の瑠璃姫だ」

「三条と言ったら大納言さまの・・・」

「うん」

言葉少なに答え、恥ずかしさをごまかすために何となく扇を弄っていると

「大納言と言ったら、確か先代は・・・・関白左大臣で・・・・摂関家・・・・」

何やらブツブツと独り言のような守弥の声が聞こえ

「え、何か言ったかい」

顔を上げると、にっこりと微笑む守弥の顔があった。

「大尼君さまと兵部卿宮さまの許されぬ恋は、それは当事者同士の問題です。お二人でホロ苦い思い出でも共有して懐かしがっておればよいだけのこと。若君のご結婚は関係ないと思われます」

「え、じゃあ守弥は、ぼくが二の姫の縁談を断って瑠璃さんと結婚することに・・・」

「若君の思う通りになさればいいのです」

守弥がゆっくりと大きく頷く。

「守弥・・・、ありがとう」

心からのお礼の言葉だった。

「やっぱり守弥に話して良かったよ」

一礼して退出していく守弥の後姿を見送ると、ぼくは大きく深呼吸をした。

何だか清々しい気持ちだった。

明日、瑠璃さんに会いに行こうかな。

大納言さまも<いつでも歓迎する>とおっしゃってくれたんだし、少し顔を見て、そうして帰ってこよう。

(瑠璃さん・・・)

昨日、会ったばかりなのに、もう瑠璃さんに会いたくなっている。







<原作オマージュ7へ続く>


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