社会人編<47>

「さっきの・・・話なんだけど・・・。その・・・信じていいのかな。瑠璃さんがぼくのこと・・・」

顔を赤らめながら高彬が言い、あたしの動悸は更に激しくなってしまった。

さっきの話って言ったら、やっぱり、アレ、よね。

白昼堂々、公衆の面前で高彬のことが好きだと激白した世紀の大告白・・・・

そっと高彬を見ると、至極真面目な顔をしており、どうやらあたしの言葉を固唾を呑んで待っているようだった。

あたしは返事をするべく、一度、大きく息を吸い込んで息を整えた。

「あの・・」

嗚呼!口から心臓が飛び出てしまいそう───






─Up to you !─side R <第47話>






「あの・・・」

口を開いては見たものの、次に続く言葉がどうしても出てこなくて、結局、コクリと頷くだけになってしまった。

あの大告白の言葉はね、切羽詰まった時だったからこそ出てきた言葉だったのよ。

火事場の馬鹿力とでも言うかさ。

だからあれはサプライズ、いやいや、それを越えたミラクルだったってわけで、切羽詰まっていない今、あたしにさっきの素直さを求められても困るのよ・・・

「じゃあ、瑠璃さんもぼくと気持ちは同じってことで・・・いいんだね」

頷いただけでは不安だったのか高彬は念を押すように慎重に言い、あたしは恥ずかしさも手伝ってコクコクと慌てて頷いた。

あぁもう、何度も頷かせないでよ。

恥ずかしいじゃない。

あれだけきっぱりはっきり言ったんだから素直に信じればいいものを、きちんと確認してくるあたりが、まぁ高彬らしいと言えばらしいんだけど。

気のせいか店の人がこちらの様子を窺っているようでもあり、あたしとしては一通りの話も聞けたことだしもう店を出たくてたまらなかった。

だけど高彬はそんなあたしの気持ちに気付く素振りもなく、それどころかようやく信じることが出来たのかホッとしたような顔をしている。

そうして

「いつかは瑠璃さんから返事を聞かせてもらえるんじゃないかと思ってたけど、まさかこんなに早く、しかもあんな形で聞かせてもらえるなんて・・・」

あたしの顔を見ながら呟き、もうその顔付きからして<あんな形>の場面を回想しているのに違いなかった。

だから、もうそこは思い出さないでよー!

「この間、車の中で携帯が鳴った時は、正直なんでこのタイミングなんだって思ったけど、でもこうなって見れば、それがきっかけでこうして瑠璃さんの気持ちが聞けたんだから、ひょうたんからコマ、案外いいタイミングだったのかも知れないな。ほんと、人生なんて何がどう転ぶか判らないもんだよなぁ・・・」

あたしに言うと言うよりかは自分に言い聞かせるみたいにしみじみと言い、相変わらず視線はあたしに当てたままである。

「・・・・・・」

高彬の口調から、あたしはふと、さっき話した「結婚の話で親父と揉めた」とかそこら辺のこと、高彬はさらりと言っていたけれど、案外、本当に大変だったのかもしれないなぁ・・なんて思ってしまった。

可愛い妹が政略結婚なんて、兄としては耐え難いことだろうし。

かと言って自分が家のために好きでもない人と結婚するなんてそれだってもちろん嫌だろうしね。

「・・・・・」

あたしは何だか改めて高彬を見てしまった。

仁菜子さんと結婚するんじゃないか、なんて疑って悪かったかなぁ・・・

もっと高彬の気持ちを信じてあげていれば良かった。

しばらくは高彬と黙って見つめ合う形になってしまい、高彬の視線の強さにふと目を逸らしかけると

「店、出ようか?」

と高彬が顔を覗き込んでいた。

頷くと

「クルマ回してくるから、瑠璃さん一人で待てる?家まで送るよ」

そう言うとあたしの返事も聞かずに店を出て行ってしまった。

少しして店に入ってきた高彬に、半ば寄りかかるようにして通りに出る。

店の前にはクルマが横付けされていて、高彬はあたしの足を気遣いながら抱きかかえるよう助手席に座らせてくれた。

「時間あったら・・・、少しドライブでも、どうかな?」

エンジンを掛ける前、ハンドルに手を置き前を向いたまま高彬が言い、ドキンと心拍数が跳ね上がる。

ドライブと言われたら、どうしたって先日のことが思い出されてしまう。

横浜の海辺で、キスをされかけて・・・・

「あ、あの、そういえば由良ちゃんはどうしたの?」

唐突に思い出して慌てて聞いてみたんだけど、必要以上に声が大きくなってしまい、更に心拍数が上がってしまった。

「由良はあのままタクシーで帰らせたよ。今は家で休んでいる」

「そう」

「ドライブ、行ける?」

「高彬の時間は大丈夫なの?」

「ぼくは大丈夫だよ」

「・・・うん。それなら・・」

「よし、なら決まりだ」

エンジンが掛かりクルマは滑らかに走り出し、しばらく市街地を走ったあと段々と緑の多い道路へと入って行く。

「この先に京都の街を一望出来る展望台があるから、そこまで行こうか」

「うん」

緩やかな坂道を上り、クルマはどんどん山間へと入り、あたしは辺りの景色に目を奪われてしまった。

人工的な建築物が作り出す景色もきれいだけど、やっぱり自然の美しさには敵わない。

隣の高彬を横目で盗み見て、あたしはそっと小さなため息を付いた。

「どうしたのさ、瑠璃さん。ため息なんか付いて」

目敏く見つけた高彬に突っ込まれ、今度は聞こえよがしの大きなため息を付いて

「何だかね、バレンタインに小さなチョコを一粒もらったのに、ホワイトデーにものすごく大きなキャンデーをあげちゃった気分」

肩をすくめて見せると、それがさっきの告白の話だと気が付いた高彬は、大きな声で笑った。

「ぼくだって瑠璃さんに、ちゃんと好きだと言ったじゃないか」

「まぁ、それはそうだけど」

「何だよ、瑠璃さん。ぼくの告白じゃ不満だった?」

「不満ってわけじゃないけど」

「まぁ、確かに瑠璃さんほどのインパクトはなかったかも知れないけど」

「インパクトって何よ、インパクトって」

「何しろあんな人混みの中で大声で・・」

「だからそこはもういいからっ」

むくれて言うと、高彬はクックと笑い、少し黙ったと思ったら

「何ならぼくも大声で叫ぼうか?」

そう言いながら、クルマを路肩に止めたのでびっくりしてしまった。

シートベルトを外したかと思ったら、早やドアに手を掛けている。

叫ぶってここで?

まさかの山びこ?!

「ちょ、ちょっと・・・」

引き留めようと慌てて高彬の腕を掴み、振り向いた高彬と目が合ったと思ったら、その顔がだんだん近づいてきて、唇と唇が触れた。

「・・・・」

いったん唇が離れると高彬はきちんとあたしに向き直り、あたしの頬にそっと手を当てた。

やがて両手であたしの頬を包み込むと、もう一度、唇を合わせてくる。

対向車が通った気がしたけれど、何だかもうどうでも良かった。

初めてのキスは海じゃなく山かぁ・・・、なんてぼんやりと考えていると、だんだんキスに熱がこもってきたような気がして、でもそれは絶対に気のせいなんかじゃなくて、あたしはクラクラとしてしまうのだった・・・・






…To be continued…


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