**特別編***ジャパネスク・ハロウィーン~Trick or Treat! ~***

『なんて素敵にジャパネスク~二次小説*特別編』



注)このお話は特別編です。
時は平安、今宵はハロウィン・パーティー・・・・
「妄想もここに極まれり」のスペシャル・バージョン第五弾です。
はちゃめちゃな設定がお好きでない方は読むのをお控えください。
どんな妄想もウェルカム!の方は、どうぞご覧くださいませ。





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ジャパネスク・ハロウィーン~Trick or Treat!










部屋中にあふれたかぼちゃと格闘すること二刻半───。

ようやく30個のジャック・オ・ランタンが完成し、あたしは大きく息を付いた。

自分で言うのも何だけど、ほんと、あたしって不器用なのね。

そういえば童の頃に大根の皮をむいたことがあって、その時も散々苦労したんだったっけ。

思えばその時に自分の不器用さを自覚して、精進していれば良かったのよ。

そうすれば、あたしの不器用も少しは改善されていたかも知れないのに。

でも、後悔先に立たずとはよく言ったもので・・・

「まぁまぁ、姫さま。これはまたずいぶんとたくさんのかぼちゃをお彫りになりましたのねぇ」

こもごも思っていたところで、部屋に入って来た小萩が呆れたように言い、足元に転がるかぼちゃをよけながら近づいてきた。

手にはコウモリやオバケをあしらったリースと、かぼちゃの形をしたガラス玉がいくつもユラユラ揺れるオブジェを持っている。

「注文してたもの届いたのね」

「えぇ、今しがた」

良く目立つ場所にリースを掛け、二階厨子にガラスのオブジェを置くと、部屋が一気にハロウィンらしくなった。

そう。明後日はハロウィンなのよ。

前はハロウィンなんて特に注目されてなかったんだけど、数年前に御世が代わってから急にクローズアップされるようになって、それはどうやら今の帝がハロウィン好きだかららしいのだけど。

高彬が言うには、何でも新帝に立たれた年には仮装した帝自らが諸大臣らをお供にそれぞれの殿舎を回ったらしくて、それを聞いた時は

(いい大人が何やってんのかしら?)

なんて思ったものだけど、でも、そういうくだけた行事は、ともすればガチガチに固まりがちな宮廷内の空気や人間関係を和らげる効果があり、それにより政(まつりごと)が滞りなく進み、それがひいては泰平の世につながる・・・と言う新帝のご配慮なのではないか───

と高彬は拝察申し上げちゃったらしく、その深慮遠謀に涙がこぼれそうになっちゃったそうなんである。

ふーん、あ、そう、勝手にこぼしてればって感じなんだけど。

果たしてハロウィンが泰平の世に繋がるのかどうかは定かではないんだけど、でも、都ではハロウィンが定着しつつあり、何を隠そうあたしもこうしてすっかり楽しみにしていると言うわけなの。

魔女にオバケにジャック・オ・ランタン、子どもたちはお菓子がもらえるし、更に極めつけは仮装だもの、お祭り好きな都人がこういうイベントを放っておくはずがなく、今や老若男女、貴賎入り乱れてハロウィンを心待ちにしているのよ。

まぁ、そういう意味では帝のヨミもあながち外れてないってことなのかしらね。

「姫さま、こちらのかぼちゃはどうされますの?全部、お部屋に?」

「ううん、3つ以外は全部、渡殿に置いてちょうだい。中のロウソクも忘れずに、暗くなったら灯すのよ」

今日は高彬がやってくるから、きっと驚いてくれるはずよ。




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夜になりやってきた高彬は、思ってた通り、渡殿に等間隔に置かれたかぼちゃを見て目を丸くしていた。

「すごいね、瑠璃さん。これ全部、1人で作ったの?東門から続く渡殿にずっと置かれてあったよ」

「そうよ」

妻戸を明け放した部屋からは、暗闇にジャック・オ・ランタンがまるで浮かんでいるように見え、ロウソクの灯がチロチロと揺れているのが何とも幻想的ではある。

「ところで瑠璃さんは、仮装は決まったのかい?」

しばらく外を見ていた高彬が思いだしたように聞いてきた。

「それがまだなのよ」

明後日の31日には宮廷主催のハロウィンパーティーがあって、それにあたしも行くことになっている。

あたしが特別に呼ばれたってわけではなくて、誰でも自由に行くことが出来るから、京に住んでる人なら皆行くんじゃないかしら。

小萩も女房友だちを誘って行くと言うし、当日にどんな仮装をして行くかが、今、都では一番ホットな話題なのだ。

あたしとしても年の一度のことだし、せっかくならパーっとやりたい気はするんだけど・・・。

ほら、人間誰しも変身願望と言うか、そういうのってあるじゃない。

だけど・・・

「えーとね、高彬。一応、聞いておくけど、どんな仮装してもいいの?怒らない?」

「例えば?」

「そのぅ・・・バニーちゃん、とか」

「バニーガール?!・・・論外だね。露出が多すぎる」

ギョッとしたように高彬は目を剥き、あたしの提案は言下に却下されてしまった。

やっぱりね、そう言われると思ったのよ。

「じゃあ、初音ミクは?髪染めて、ここで二つに結んで・・・」

「誰それ」

「え?知らないの?初音ミク。千本桜とか、聞いたことない?」

「うーん、ぼくは今様には不案内だからなぁ・・・」

気まり悪そうな声で高彬が言い、まぁ確かに高彬は知らないかもねぇ。

そうなると、高彬の知らない仮装してもあまり面白くない気もしてくるし・・・

「そういう高彬は決まったの?仮装」

何でもその日は老いも若きも宮廷人は何かしらの仮装をするようにとのお達しが出ているらしくて、数日前にやってきた時も高彬はそれで頭を悩ませていたのだ。

「それが・・・」

高彬の顔が一気に曇り

「今日、帝に呼ばれてね、御前に伺候したんだ。そこで・・・」

ふぅ、なんて大きなため息をついている。

「どうしたのよ」

「帝がおっしゃるには、帝は今年、武官に仮装されたいと思し召しのようなんだ。それで、ぼくの束帯を貸してくれないかと言われて・・」

「いいじゃない、束帯くらい。お貸しすれば」

帝が武官になることが仮装と言うのか判らないけれど、何と言ったって武官は宮廷でも花形役職なわけで、束帯姿に憧れる女官も多いって聞くしさ。

それを年若い帝が着てみたいと思うのは少し判る気もする。

「もちろんそれに異論はないよ。ただ、代わりにぼくは「今上」に仮装しろと勧められてしまって・・・」

「あんたが帝に?!」

「うん・・・」

「へぇ・・・」

要は着るものを交換しようと言うことなんだろうけど、何だかすごい着眼点だわ。女子高生みたい。

「例えハロウィンの仮装と言えども、ぼくごときが帝の格好をして玉座に座るだなんて、そんなこと出来ないよ」

高彬はほとほと困ったと言う様に首を振り、その様子は本当に困り果てているようだった。

まあねぇ、『畏れ多くも畏くも』が口癖の高彬には帝になれなんて、無理な注文かも知れないわね。

「仕方ないわ、お断りしないさいよ」

「もちろん、丁重にお断りしたさ。そしたら今度は、帝になれないなら女官になれと言われてしまって・・・」

「女官?・・・ってことは女装?!」

「うん・・・」

情けなさそうに高彬は頷き、あたしは吹き出してしまった。

高彬が女官にねぇ・・。

「・・新年用にあつらえた装束一揃えあるわよ。何なら着る?」

高彬は決してナヨナヨした感じではないけど、だけど無骨な感じでもないし、何より綺麗な肌してるし、かもじ(付け毛)付けて正装させれたら、案外、イケルんじゃないかしら?

「瑠璃さん、ぼくの女官姿、想像してるだろ」

あたしの心の中なんてお見通しだと言う様に、嫌そうな顔をして睨んで見せた。

「してないわよ」

してたけど。

だけど、あまりからかって高彬の機嫌を損ねたりしたり面倒だからと、あたしは話題を変えた。

「そういえば融はどんな仮装するのかしら」

「あぁ、馬って言ってたかな」

「馬・・・」

「カボチャか馬か迷って、馬にしたらしい」

「ふ~ん」

馬ねぇ・・。姉として何ともコメントしずらい仮装だわ。

こういう時、少しでもかっこよく仮装してキャーキャー言われたいって気持ちがあの子にはないのかしら?

「大江は白雪姫になるって息まいてるよ。毎晩、衣装作りに余念がないらしい。今年は初の試みとして仮装コンテストが開催されて優勝者には豪華景品が出ることになっているからね、大江の気合がすごいんだよ」

「大江ならやりそうね」

「それでぼくの側近らに『7人の小人』になれって言ってるそうでさ、皆、嫌がって逃げ回ってるよ」

「7人には守弥も入ってるの?」

「うん」

「そりゃあ嫌がるでしょうね」

「可愛い妹のためなんだからやってやれよ、やらなければぼくの側近から外すぞって言っておいたけどね」

「意地悪言うわねぇ、高彬も」

2人して笑い合う。

「ともかく瑠璃さんの仮装もほどほどにしておいておくれよ」

「わかってるわよ」

請け合うと、高彬は安心したように頷き、それでも自分の仮装を思い出したのか憂鬱そうに小さく息をついた。




***************************************




ハロウィン当日、大内裏はものすごい人出だった。

皇嘉門で受付を済ませ、待ち合わせ場所の豊楽殿の前に立ちながら、ふと不安になってくる。

これだけの仮装した人ばかりの人ごみの中で、高彬を見つけることが出来るかしら?

結局、高彬が何に仮装するのか聞いてないし・・・

───と思ったのも束の間

「瑠璃さん!」

向こうから高彬がやってきて、その姿を見てあたしは拍子抜けしてしまった。

高彬は何てことはない普段の武官束帯姿だったのだ。

「あんた仮装は?女官にならなかったの?」

内心、ほんの少しは高彬の女官姿を楽しみにしていたので、ついつい咎める口調になってしまう。

「うん。これだけのイベント、警護する役人も必要なんじゃないかと言うことになってね。衛門府、近衛府から数名ずつ、仮装せずに職務に付くことになったんだよ。栄えある女官の仮装はあいつに譲ったよ」

顎でしゃくった先には、明らかに女装と判る、すさまじい女官の姿があった。

厚塗りされた白粉に、はみ出た紅、ふざけた様に書かれた頬紅、たくましい肩幅に不釣り合いな正装・・・

「・・・・・・」

夢に出てきそう・・・。

「よ、良かったわね、高彬。女装、免れて」

「だろ」

横で高彬が真顔で頷き、逃れられた災難に心底安堵しているようだった。

まぁ、もし高彬が女装したらあれよりは数段綺麗になるだろうけど、だけど、ある程度、笑い者になるのは避けられないわけで、そう思えば妻としてあたしもホッとした気持ちだわ。

「ところで、瑠璃さんも何で仮装してないの?」

「うん・・・。まぁ、いいのが思いつかなくて。今年はこれくらいでいいかと思って」

手にしていた黒いとんがり帽子を被る。

「ふぅん、そうか・・。何だかぼくがうるさいこと言ってしまって悪かったかな」

「ううん、いいのよ。そういうわけじゃないから。それより大江はどうなったの?7人の小人は調達出来たのかしら」

「あぁ、それなら・・」

言いかけて、思いだしたかのように高彬は吹き出した。

「ぼくの側近が全員、小人に仮装してるよ」

「守弥も?」

「うん。傑作だったよ。これでしばらくはからかえそうだよ。内緒で写真も撮っておいたしさ。・・・仕事が終わったから、一緒に色々見て回ろう。お腹もすいただろう」

酉の刻(午後6時)を回り、辺りはだいぶ暗くなってきているのをいいことに、あたしたちは手をつないで歩きだした。

昼間は子どもたちメインの文字通りのお祭り騒ぎだった会場も、夜が近付くにつれ雰囲気を一変させ、何とも妖しげなムードが漂い始めてきた。

子どもたちの歓声が消え、真のハロウィンナイトがやってくる───

仮面を付けた貴婦人に、フランケンシュタイン、星の涙を流したピエロがいるかと思えば、包帯の解けかかったミイラがふらふらと歩いている。

「瑠璃さん、こういうところには本当にお化けが紛れ込んでるらしいよ」

怖がらせるように耳元で囁かれ、知らずに高彬の手をぎゅっと握ってしまう。

怖くなんかないわよ・・・と、強がって見たところで、夜空には三日月が浮かび、時折りコウモリが飛び交うこの状況だと、さすがにちょっと怖い。

どこからか聞こえてくるホーホーと言うフクロウの鳴き声が、怖さに更に拍車をかける。

向こうからカボチャの馬車がやって来たと思ったら、あたしたちの前で止まり、中からシンデレラが下りてきた。

誰、この美人、高彬の同僚?と思っていたら

「あたくしですわよ、瑠璃姫」

なんてことはない、煌姫だった。

輝く金髪、なめらかな陶器のような肌。きゅっとくびれたウエストに豊かなバストライン・・・

「綺麗ねぇ、煌姫。まるで本物のシンデレラみたい・・・」

思わず呟くと

「何をおっしってますの。本物のシンデレラなんか見たことないくせに」

照れ隠しなのか、ふんと鼻を鳴らして見せた。

「このカボチャの馬車・・・」

「自分で牛車を改造したのですわ。電動ノコやらペンキを使ってね」

「自分で?!」

落ちぶれたとは言え仮にも宮家の姫が、電動ノコって・・・。

「あたくしのこの美貌と根性でコンテストに優勝して、豪華景品をゲットして見せますわ!さ、行きますよ、於兎丸」

どうやら御者は於兎丸のようで、よく見ると馬車の中にはシンデレラの付き添いとして女中に扮した早苗がいるようだった。

「が、頑張ってね・・・」

他に言いようがなくてそう見送ると、窓から顔を出した煌姫はウインクをして去っていった。

「みんな、凝った仮装してるのねぇ」

煌姫もそうだったけど、すれ違う人たちの気合の入った仮装振りにあたしは感心してしまった。

「・・・時に瑠璃さん」

コホンとひとつ咳払いをして、高彬が話しかけてきた。

「なぁに」

「この間のバニーガールの話だけど・・・」

「・・・・」

「その・・・、ぼくの前だけだったら、そういう格好をしても・・・いいよ」

前を向いて歩きながら、言いづらそうにもごもごと言う。

高彬ったら、言下に却下したくせに、色々、思ってたのね。

あたしは眉を上げ

「しても、いい?・・・ねぇ、高彬。言葉の使い方、間違ってるんじゃない?」

意地悪ーく言ってみる。

「えーと・・・・、正しくは、して下さい、かな・・・」

高彬はあたしの言いなりに、言い直してきた。

「それじゃ、何をして欲しいのか判らないわ。最初から言ってみて。はい、どうぞ」

───ふっふっふ。楽しいなぁ。

「えーと。瑠璃さん、ぼくの前でバニーガールの格好を、して・・下さい」

つかえつかえ何とか言い切った高彬には悪いけど、あまりに従順なその態度に大笑いしてしまう。

こういう時の殿方って本当にどういうのかしら。

「ひどいな、瑠璃さん。笑いすぎだよ」

暗闇で見えないけど、きっと高彬は目の淵から頬まで赤くしているに違いないわ。

「ねぇ、高彬」

あたしはピタと身体を寄せて、高彬の耳元に口を近づけた。

「この下にね、実はバニーちゃんの格好してるのよ」

「えっ!?」

ギョッとしたように高彬は立ち止まり、あたしの身体を上から下まで何度も見た。

「なーんてね、ウソ」

1人スタスタと歩き出すと、慌てたように高彬が付いてきた。

「る、瑠璃さん、本当なの?本当にこの下に・・・」

「さぁ、どうかしら?」

高彬は、あたしの重ねた衣装を、穴があくほどに見ている。

この場で確かめたいけど、だけどそれを公衆の面前でするわけにはいかないし・・・と言ったところかしらね。ふふふ。

「どっちなんだよ、瑠璃さん」

「さぁ?」

じれじれしてる高彬に、思わせぶりに笑ってみたりして。

女はねぇ、高彬。みーんな魔女なのよ。

こういう時の殿方の気持ちを、平気で手の平で転がせちゃうの。

誰に教わらなくても、殿方を酔わせる媚薬を夜毎に調合してるものなのよ。

だけど、あたしの作る媚薬が効くのは高彬だけで───

「瑠璃さん。帰ろう」

果たして、媚薬が効きすぎたのか、高彬に腕を取られ車宿りまで連れてこられてしまった。

「コンテスト見たい」

車に押し込まれながら何とか抵抗して言ってみたものの

「明日、聞けばいいさ」

なんて、またしても言下に却下されてしまった。

そうして気が付いたら、あっと言う間に三条邸のあたしの部屋で───

ジャック・オ・ランタンからもれる灯りがチロチロと壁や天井に映る中、高彬に一歩にじり寄られて、あたしは一歩後ずさる。

あたしが魔女なら、高彬はさながら獲物を前にしたドラキュラね。

腕を掴まれ一気に引き寄せられた瞬間、黒いマントがひるがえり───

乱暴に単の合わせをはがされたあたしは、まるでドラキュラに生き血を吸われる娘のように、目を見開き、そうして唾をごくりと飲み込むと覚悟を決めて目を閉じたのだった。





<Fin>




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