*** 筒井筒のお約束をもう一度・・51 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・51 <高彬・初夜編> ***  









「高彬さま、朝でございますわよ!」

やけに気合の入った大江の声が頭に響き、ぼんやりと目を開けるとすでに室内には六月の強い日差しが隈なく回っていた。

風にひらめく几帳に日があたり、床に大きな影を作っている。

「今日は瑠璃姫さまのところに行くのでございましょう?もうお起きにならなくては」

「うむ」

畳み込むように言われ、ぼくは立ち上がった。

すっかり寝過ごしてしまった。

今日は久しぶりに瑠璃さんに会えるので、昨夜はよく眠れなかったのだ。

文のやり取りはしていたとはいえ、会うのは実に三月ぶりで、ぼくが落ち着かない気持ちになるのは無理からぬことだと言えるだろう。

「高彬さま、今日のお召し物はこちらに致しましょう。二藍のお直衣はことのほかお似合いですもの」

ウキウキと大江が言うが早いが寄ってたかって女房らに取り囲まれ、気が付けばぼくはあっと言う間に準備が整い、車中の人になっていた。

ギシと車輪が回り、三条邸を目指し動き出す。






**************************************************





「まぁ、少将さま。ようこそおいで下さいました。ささ、こちらへ。姫さまがお待ちでございますわ」

車寄せで小萩に手を取られんばかりの歓迎を受け、渡殿を歩き瑠璃さんの部屋を目指しながら、ぼくは庭に目をやった。

三条邸の庭はいつ見ても手入れが行き届いているのだけど、今日はことのほか見事に見える。

部屋の前には出迎えのための女房が手を付いており、軽く会釈をしながらぼくが部屋に入ると、巻き上げられた御簾の中央に瑠璃さんが座っていた。

「・・・・久しぶりだね、瑠璃さん」

用意されていた円座に腰を下ろしながら、ぼくはドキドキしてしまった。

記憶が戻っていないとは言え、やはり三条邸のいつもの部屋にいる瑠璃さんはしっくりときていて、それがどうにも大人びた雰囲気を醸し出しているのだ。

瑠璃さんってこんなに髪が綺麗だっただろうか?

こんなに華奢だっただろうか?

こんなに───

こんなに綺麗な人だっただろうか・・・・?

正面から見るのも憚られる気がしてちらちらと見惚れているうち、瑠璃さんが黙りこくったままなのが気になった。

「どうしたの、瑠璃さん。黙り込んで」

言ってから、はたと思いつく。

「・・・・ひょっとして具合でも悪いの」

「高彬さま。姫さまは高彬さまにお会いできて、嬉しすぎて言葉が出ないのですわ」

瑠璃さんの代わりに答えたのは小萩だった。

「え」

ぼくに会えたことが嬉し過ぎて・・・?

自分でもかぁっと顔が火照るのがわかり、ごまかすように慌てて咳払いをした。

「小萩!」

怒ったような声で瑠璃さんが言い、小萩はと言えば笑いをこらえてるような奇妙な顔のまま一礼をして部屋を出て行った。

小萩の姿が渡殿の角を曲がったのを確認したところで、そのまま瑠璃さんに近寄る。

「久しぶりだね、瑠璃さん」

「・・うん」

こくんと頷きながらごく小さな声で瑠璃さんが答え

「元気そうだね」

顔を覗きこむようにして言うと

「うん」

さっきよりは大きな、だけどやっぱり遠慮がちな声が返って来た。

俯いたまま扇をもて遊んだりしている。

「ちゃんとこっちを向いて。瑠璃さん」

両頬をはさみ少し強引にこちらを向かせると、ようやく瑠璃さんと目が合った。

「瑠璃さん、・・・会いたかったよ」

「うん・・・」

「瑠璃さん、さっきから『うん』しか言ってないよ」

「うん・・」

「瑠璃さん」

「・・・うん」

「ほら、また」

「うん」

あまりに「うん」としか言わないから、思わず吹き出してしまった。

いや───待てよ。

もしや記憶喪失の新手の症状で「うん」としか言えなくなったとか?

・・・・いや、さっき「小萩」と言ってたし、何よりそんな症状聞いたことないしなぁ。

「どうしたんだよ、瑠璃さん。もしかして、またぼくのこと忘れちゃった?」

吉野の山荘で、記憶喪失の瑠璃さんと再会した時のことを思い出す。

瑠璃さんは当然、ぼくのことが誰だか判らなくて、ぼくは自己紹介をしたのだ。

まさか、と言う思いと、ありえなくもない、と言う思いが交差して気もそぞろになってきてしまった。

あの時と同じように居住まいを正し瑠璃さんに向き直る。

「ぼくは藤原高彬だ。右近少将を務めている。それで瑠璃さんの婚約者で・・・」

そこまで言ったところで瑠璃さんに忘れられていたと言う吉野でのせつないような痛みが甦ってきて、たまらずに瑠璃さんを抱きしめて接吻をする。

「高彬・・・」

唇を離すと、至近距離の瑠璃さんが囁いた。

そのまま額をくっつけて

「良かった。思い出してくれたみたいだね」

同じように囁くと

「わ、忘れるわけないじゃない。文のやり取りしてたし、それに・・・求婚までしてくれた・・・人を」

多少、つかえながらもはっきりと瑠璃さんはそう言い、ぼくはすっかり安心して嬉しくなってしまった。

「うん、良かった」

改めて瑠璃さんを抱きしめる。

「ちょ、ちょっと苦しいわ、高彬」

「うん」

「だから、もう離して」

「うん」

「もう!うん、ばっかり!」

「うん」

目を合わせ、二人同時に吹き出した。





<続>

高彬初夜編、再開いたしました。

楽しみにして下さっていた方(が、いらっしゃるとしたらですが)お待たせしてしまいすみません。

夏休みと言うこともありハイスピード更新は無理そうですが、コンスタントにアップして行きたいと思います。

よろしければお付き合いください。


(←お礼画像&SS付きです)
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