*** 筒井筒のお約束をもう一度・・27<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        






***  筒井筒のお約束をもう一度・・27<高彬・初夜編> ***  









殿上の間から見える桜の木は、すっかり葉を落としてしまっている。

ついこの間まで、抜けるような秋空に色付いた葉が揺れていたと思っていたのに、季節の移り変わりと言うのは早いものだ。

───ふぅ。

ざわめく殿上の間の片隅で、ぼくは回りに気取られないように小さく息を吐いた。

瑠璃さんとの結婚が流れたのが十月。

今は一月も半ば。

気が付けば年が明けてしまっている。

結婚が流れた日、つまりは御世が代わった日から今日までの忙しさは生半可なものではなかった。

人事異動があり、ぼくは近衛の少将を任ぜられ、右近少将と呼ばれるようになった。

大納言さまは内大臣へと位を進められ、融は・・・・・まぁ、あいつは変わらずにこにこと元気に過ごしている。

「これはこれは新右近少将どの」

重々しい声で呼びかけられ振り向くと、何のことはない、同僚の源重行がにやにや笑いながらたっていた。

「何が新右近少将どの、だ。お前だって左近少将になったじゃないか」

重行は、ついとぼくの方に身体を寄せると

「で、おまえの方はどうだ?」

小声でひそひそと聞いてきた。

「どうって、何が」

「文だよ、文」

「文?」

「あぁ。近衛少将になってからと言うもの、女官からの意味ありげな文が一気に増えた。3倍はある。やっぱり近衛がもてるって言うのは本当みたいだな」

重行は考え深げに腕を組んだかと思うと

「そろそろ結婚を考えていたんだけど、こうなるともう少しこの状況を楽しむのも悪くないかもしれないよなぁ」

などとブツブツと呟いている。

バカらしくなって立ち去ろうとすると、重行は慌てたようにぼくの腕を掴んできた。

「で、おまえの方はどうなってるんだ」

「別に意味ありげな文なんてもらってないよ」

確かにここのところ、女官からの文が増えた気はするけど、重行が言うような思わせぶりな文なんてひとつもない。

『今度、折り入ってお聞きしたいことがあるから時間を作って欲しい』と言う内容が多いとは思うけど、人事異動があったばかりなので聞きたいことがあるのだろうと思えば、別段、不思議ではない。

まぁ、ぼくが答えられることかどうかは定かではないけれど。

忙しさにかまけてそのままになっているから、おいおいにでも返事を・・・

「文じゃない、結婚だよ、結婚」

あれこれ考えていると、じれったそうに重行は更に顔を寄せてきた。

「おまえ、恋人いるんだろ。いつだったか、ほら、夜中に某少将と夜中に鉢合わせしたじゃないか。その姫さんと結婚はしないのか?」

途中まで・・・・結婚した。

・・・・・と心の中で答えるに留めて、ぼくは重行を見返した。

結婚に関してはうかつなことは言えない。

気の置けない重行と言えども、ことこれに関してはノーコメントだ。

「衛門府でここんとこ結婚したやつが2人いるだろう。1人は浮かれてるし、1人は早まったと後悔してる。高彬もよくよく考えて結婚することだな。おまえのポジションと後ろ盾を持ってすれば、よりどりみどりだぞ」

ぼくが返事しないのを何と思ったのか、重行は真面目な顔で言い

「ま、俺からの昇進祝いのアドバイスだ」

にやりと笑って立ち去っていった。

一人残されたぼくは、もう一度、外の桜の木に目をやった。

まったく、重行のやつ。

守弥と同じようなこと言いやがって。

よりどりみどりと言ったって、好きな人と結婚出来なければ意味がないじゃないか。

───ふぅ。

またしてもため息だ。

瑠璃さんに文を送ったけれど、二通とも返事をもらえていない。

昨年のまだ秋の名残のある頃、何度か瑠璃さんに会いに行こうと思ったけど、守弥に反対されてしまった。

ただ反対されたくらいならぼくも構わず行ったのだけど、守弥の反対した理由を聞きぼくは内心、唸ってしまった。

『人事異動のあったばかりのこの時期は、皆、どこの流れに乗ろうか、どこに権力に付こうかと腹の探りあいをしています。この時期、右大臣家のご子息であられる若君が三条邸に行かれるのは、右大臣さま、若君が痛くもない腹を探られるばかりでなく、内大臣さまにもご迷惑がかかるやも知れません』

確かに守弥の言う通りで、この時期にわざわざ邸まで足を運ぶと言うのは、ある意思表示と取られてしまう恐れがある。

宮廷内ではぼくと瑠璃さんの婚約は知られていないのだから尚更だ。

いくら融と親友だと言っても、そうとは受け取ってくれないのが世間と言うもので、それを踏まえれば守弥の判断は反論の余地がないほどの正論なのだった。

てっきり嫌がらせで反対しているかと思ったぼくは、大いに反省した。

何だかんだ言って守弥はぼくのために色々考えてくれてるんだよな。

でも、年が明けて宮中行事も一段落が付いたのだ。

そろそろ三条邸に行ってもいいだろう。

文がないのも少し、───いや、かなり気がかりだ。

明日は瑠璃さんに会いに行こう。

そう決めた瞬間、あの日触れた瑠璃さんの柔らかい肌の感触がまざまざと掌によみがえり、ぼくはぎゅっと右手を握り締めた。






<続>



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