***短編*** <続>夕暮れに ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




         注)このお話は短編『夕暮れに』の続編です。

        






***短編*** <続>夕暮れに ***









足早に歩く高彬に、なかば引きずられるように川原を歩く。

<夜が待ち遠しい>

高彬の言ったその言葉をまるで天が聞いていたかのように、少し前まで夕暮れ模様だった夏の空にみるみる夜がせまってきている。

さっきまで並んで座りながら、高彬の接吻を受けていた。

手を繋ぎながらの接吻はなんだかいつもよりも優しくて、それが無性に嬉しくてあたしは知らずに繋ぐ手に力を入れていたみたい。

それに気が付いたのか高彬の手にも更に力が加わり、いつまでも終わらない接吻に心持ち身体を離そうとすると、空いている方の手で頭を押さえられてしまった。

さらに接吻が深くなってきた頃、ふいに高彬が唇を離して立ち上がった。

「・・・邸に・・戻ろうか」

「うん」

小さく頷くあたしの手を掴んで、高彬は足早に川原を歩き始めた。

追いかけるように、夜がどんどんせまってくる。






************************************







邸に戻ると、高彬はさっさと部屋に入り人払いをした。

半分、上げられたままの格子から望む遠い山際は濃い紫色に染まっており、いくつかの星が瞬いているのが見える。

もうじき真の闇がくる。

空の色に見惚れたのか、それとも庭の虫の声に気を取られたのか、高彬がぼんやりと外に目をやり、そんな高彬にあたしはそっと後ろから抱きついた。

びっくりしたように高彬の身体が一瞬震え、息を飲む気配があり、それきり動かなくなってしまった。

「何よ」

背中に頬を当てながら言うと

「・・・いや。瑠璃さんの方からこんなことされるの初めてで・・・正直、どうしていいかわからずに・・・困っている」

うめくような、搾り出すような声で高彬が言い、その声が本当に困ってそうだったので、あたしは笑ってしまった。

「馬鹿ね・・。抱きしめ返してくれたらいいだけじゃないの」

そう言ってやると、高彬は「そうか・・」ともごもごと言い、ゆっくりと振り向くとあたしを抱きしめてきた。

その仕草は、まるで初めてそういうことをする人のようなぎこちなさで、あたしは何だか懐かしい姉気分が戻ってくるようだった。

強引な接吻をするかと思えば、妙なところでウブなんだから。

「もっと」

高彬の腕の力に不服をもらすと、気持ちばかり力が加わった。

「もっとよ。ぎゅうっと」

ますます姉気分で命令すると、高彬が素直に腕に力を込めたので

「それでいいわ」

満足して目を閉じ、あたしは深く深呼吸をした。

高彬の匂いと、ほんの少しの汗の匂いがする。

「座って」

そう言うと、またしても高彬は素直に従い、あたしは高彬の膝の上で丸くなった。

そのまま高彬の指先に触れ、手元に引き寄せる。

目の前にかざし、とみこうみしてから、そのまま手首に指を回してみた。

骨ばった手首。あたしの指じゃつかめない。

童の頃の高彬の手首はもっと細っこくて、あたしはその手首をつかんではぐんぐんと先を歩いていたっけ。

「何してるのさ、瑠璃さん」

上から声がして

「何って。見てるのよ。あんたが、見えるものだけを見ていたらいいって言うから」

澄まして言うと、高彬は言葉に詰まったように押し黙った。

見上げると至近距離で高彬の首筋が目に入り、顎のラインとか、男っぽさを感じる喉元とか─────

あたしはまじまじと見てしまった。

高彬ってこんな身体してたっけ?

見えるものだけを見ていたらいい、かぁ。

高彬を見てるの、確かに飽きないわ。

心で笑うと

「何だよ、瑠璃さん。そんなにじろじろ見られたら落ち着かないよ」

ほとほと参ったというような声で高彬が言い、ふと声音を変え

「見られるより、見るほうが好きなんだけど」

なんて言うので、あたしは今度こそ声をあげて笑ってしまった。

「だめよ」

「だめって、瑠璃さん・・」

「思い出したけど、あんたは年下なのよ。だからおとなしくあたしの言うことを聞きなさい」

ぴしゃりと言うと、高彬は諦めたように小さく肩をすくめ、腹をくくったのか座り直した。

「手、出して」

落ち着いたところで、あたしはもう一度高彬の手を取り、今度は指の1本1本をなぞったり、手の平の線をたどったり、自分の手の大きさと比べてみたりした。

高彬の手とあたしの手。

じっと見てると、だんだんふたつの手の境界線がわからなくなってくる。

ぐっと握り─────

「先に・・・死んだりしないでね」

ふいにそんな言葉が口をついて出た。

高彬が死んだら、あたしは。

この手がなくなったら、あたしは・・・。

こみ上げてきそうな涙を小さな咳でごまかす。

「大丈夫だよ。瑠璃さんの言うとおり、ぼくは年下のガキだからね。一応、瑠璃さんより長生きすることになってる」

笑いを含んだ声で高彬が言い、あたしの身体をゆすった。

「そんなこと言って、先に死んだりしたら許さないわよ」

顔を上げずに呟くと、高彬は喉の奥で笑ったようだった。

「もしも」

高彬が少し身じろぎをした。

「もしも、ぼくが先に死んだ時には、浄土で瑠璃さんを待ってるから。・・おとなしく和歌の勉強でもしながらさ」

「・・・一人で?」

「もちろん。妻は生涯、瑠璃さん一人だけって言ったろう」

「・・・・・」

「ね」

ゆっくりと髪をなぜながら高彬は言い、あたしは小さく頷いた。

「瑠璃さん。考えてもどうしようもないことってあるよ。いつかは来るけど、まだその時じゃない。考え込みそうになったら・・・・2人で考えるって言うのはどうかな」

「・・・うん」

またこみ上げそうになってしまい、あたしは慌てて唇を引き結んだ。

高彬の肩越しに見える空には、まだわずかばかりの明るさが残っている。

それでも星が煌きを増しており、夏の空が闇に包まれるのは時間の問題だった。

────夜が待てないのは、高彬だけじゃないわ。

そう言いたいのに言えなくて、代わりにあたしはぎゅうっと高彬に抱きついた。








<終>




瑞月です。

いつもご訪問ありがとうございます。

かなり時間がたってしまいましたが「夕暮れに」の続編です。

夏の終わりの話しだったので季節外れになってしまいました。すみません。

そして、私事ですが、新年度のPTA役員になってしまいました。

実際の活動は4月からなのですが、一体、どれくらいの仕事量になるのかとおののいています。

今は「目を通しておいてね」と手渡された分厚いファイル2冊とCD-ROMを前にあわあわしております。

明日も非公式ながら集まりがあり、せめてもの救いは回りの方が優しい方ばかりだということです。

何とか足手まといにならないようにと願うばかりです。

とりあえず始まってみないとどれくらの時間が取られるのかが判らないのですが、更新もしていきたいと思っていますので、どうかよろしくお願いします。



(←お礼画像&SS付きです)
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