*** 筒井筒のお約束をもう一度・・2<高彬・初夜編> ***
『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』
※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
*** *** 筒井筒のお約束をもう一度・・2<高彬・初夜編> *** ***
牛車の中、ぼくは小さく息を整え唇を引き結んだ。
気付けばさっきから何度もこんなことをしている。
自分でもわかってるんだけど、どうにも落ち着かない。
ばくが瑠璃さんちで風邪で倒れたのが、きっかり一週間前、つまり瑠璃さんにプロポーズしてから一週間がたった。
<もう>なのか<まだ>なのかわからないけど、何とも落ち着かない一週間だった。
あの夜、気が昂ぶっていてなかなか寝付けず、結局、明け方頃にウトウトしただけで起きだしてしまった。
三条邸の方々にお礼を言い、最後に瑠璃さんにも挨拶に行こうかと思ったんだけど、少し考えてやめた。
気恥ずかしさももちろんあったけど、次に会った時に返事を聞かせてもらえると言う約束をしたのに、昨日の今日で会いに行くのは、どうにも締まらない。
瑠璃さんにだって考える時間が必要だろうし、ここは潔く会わずに帰ろう────。
そう思ったぼくは、そのまま三条邸を辞した。
少し回復していた身体は、夜風にあたったのがいけなかったのか、それとも他の理由があるのかわからないけれど、家に着いたとたん熱がぶり返し、結局、数日間は参内を見合わせることになってしまった。
熱もすっかり下がり、体調も安定した今日、こうして瑠璃さんの返事を聞きに三条邸に向かっているのだけれど。
瑠璃さんに何て言われるのかなぁ。
大丈夫だ、と訳もなく自信が持てる時と、きっと断られるだろう、と気弱に思うときが交互にやってきて、何と言うか・・・疲れる。
それよりも何よりも、一週間前の出来事を思い出すと、本当に自分の身に起こったことなのか?!と信じられないような気持ちになる。
その、つまり・・・瑠璃さんを抱き寄せたり、頬に接吻をしたり・・・。
もし今、目の前に瑠璃さんがいて「さぁ、どうぞ」と言われても、絶対に出来ないような、気がする。
風邪もひいてたし、夜だったし、告白しようと決めてた時だったし、つまりは特別な時だったから出来たことなんだろうなぁ。
それにしても・・・・。
瑠璃さんの身体の細さと柔らかさ。
童の頃は、それこそ何も考えずに相撲を取ったり、隠れ鬼しながら身体を引っ付けあったりしてたけど、さすがに最近はそんなことしなくなっていたから、考えてみたら瑠璃さんの身体に触れたのなんか久しぶりだった。
背丈を追い越していたことは判っていたけれど・・・・。
そうか、女の人って・・・瑠璃さんってあんなに柔らかいのか。
何となく、敵わないよなぁ・・と思ってしまう。
すぐにふくれっ面するかと思うと優しくて、気が強いくせに泣き虫で、そのくせ柔らかいなんて・・・敵うわけないよな。
これで瑠璃さんに断られたりでもしたら、立ち直れない気がする。
すでに全面降伏してるっていうのに、この上、振られたら・・・・
またしても小さく息を付く。
考えたって仕方がない。泣いても笑っても、瑠璃さんの返事を聞くまでだ。
そう思ったぼくの気持ちに応えるかのように、車は三条邸の東門をくぐっていた。
*******************************************************************************
女房の先導を受けて瑠璃さんの部屋に向かう。
足早に部屋に向かいたいような、反対に逃げ出してしまいたいような気持ちを抱えながら、それでもゆっくりと歩いた。
瑠璃さんの部屋が見えてきたところで、ぼくはグッと腹に力を入れ、自分に気合を入れた。
女房が何事かを告げる声が聞こえ、誘導するような仕草に促され、ぼくは部屋に足を踏み入れた。
「こんにちは。瑠璃さん」
いつも通りに振る舞えた・・・と思うけど、内心ドキドキした。
用意してあった円座に腰を下ろし、ちらりと瑠璃さんを見ると、瑠璃さんは扇で顔を隠していて、ぼくは一瞬、嫌な予感がしてしまった。
瑠璃さんが扇で顔を隠すなんてことあまりないし、と言うことは色よい返事ではない・・・と言うことなのかも知れないから。
ともすれば落ち込みそうな心を叱り付けて、ぼくは意を決して口を開いた。
「瑠璃さん。ずっと黙っているけど、この間のことを怒っているの?」
振られるのならしょうがないけど、とりあえずは確認しておきたい。
返事がなく、これはいよいよ振られるな、と覚悟が決まると、素直に謝罪の言葉が出てきた。
「・・・ごめんなさい」
やっぱり瑠璃さんは女性だし、好きでもない男に抱きしめられたり接吻されたりしたら、そりゃあ怒るだろう。
筒井筒の気安さを利用したわけでは決してないけれど、そう思われても仕方ない状況だったし・・・。
「別に・・・怒っちゃいないわよ」
ふいに瑠璃さんの声が聞こえた。
不機嫌そうながらも瑠璃さんが口を開いてくれたことが嬉しくて、ぼくは心底ほっとしてしまった。
「よかった」
このまま一生、口を聞いてもらえなくなるんじゃないか、なんてことも覚悟していたから、良かった。
良かったけど・・・ぼくにはもうひとつ確認しなきゃいけないことがある。
もう一度、腹に力を入れて瑠璃さんに話しかける。
「瑠璃さん」
目が合った。
「・・・それで、瑠璃さんの返事は?今日は聞かせてもらえるんだよね」
一気に言い、もう一度、瑠璃さんの顔を見た。
一瞬、瑠璃さんの表情が変わり、胃が縮み上がりそうになる。
沈黙が流れ、堪えきれずに、瑠璃さんが何か言うより先に言葉をかけていた。
「言いづらい答えなの?ぼくは大丈夫だよ」
瑠璃さんは優しいから、きっと言えないでいるんだろう。
でも。
やっぱりはっきり振ってもらわないと、ぼくだって踏ん切りが付かない。
「はっきり瑠璃さんの口から聞きたいんだ」
そう、瑠璃さんの口から。
またしても沈黙が流れ、と思ったら、瑠璃さんが口を開いた。
「・・・するわよ」
「え」
する?
「だからするわよ。結婚」
思ってもみなかった言葉に思考が飛んだ。
「えっ。誰と」
まさか、権少将か?
「誰とって・・・。あんた以外にいないじゃない」
え・・・・。
ぼくと?
結婚、する・・・?
瑠璃さんが・・・・?
カチッと思考が噛み合った瞬間、一気に頭に血が上ったのがわかった。
身体中の血が、逆流してる。
瑠璃さんがぼくと結婚・・・。
すぐには、この状況に頭も身体も付いていけずに呆然としていると
「高彬。わかってるとは思うけど、あたし、浮気な男はきらいよ」
落ち着いたいつもの瑠璃さんの声が聞こえてきた。
「わかってるよ、瑠璃さん」
我に返ったぼくは、慌てて返事をした。
「妻は生涯、あたし1人じゃなきゃいやよ」
気持ち、唇を尖らせて、じっとぼくの目を見ながら瑠璃さんが言い
「もちろんだよ!」
ぼくは再度、力強く返事をした。
「妻は生涯、瑠璃さん1人だよ。誓うよ」
当たり前じゃないか。
何年、瑠璃さんに懸想してると思ってるんだ。
瑠璃さん以外の女性をぼくが好きになることなど・・・・
そこまで考えて、ふと大事なことを思い出した。
すぐに大納言さまにご報告に参らなければ。
昨日、宮中で見かけた権少将は、公達仲間相手にすでに三条邸の婿君とでも思ってるような発言をしていた。
今のところは延期となっている権少将との見合いのための宴を、なんとか中止にしていただかなくては。
「ごめん、瑠璃さん。また今度」
呆気に取られたような顔の瑠璃さんを残し、ぼくは寝殿へと向かった。
瑠璃さんに受け入れてもらえたという嬉しさと、早く大納言さまにお伝えして結婚のお許しをいただけなければ・・と言う思いで、気持ちが昂ぶっている。
渡殿を足早に歩きながら、それでも、見慣れた三条邸の庭の景色に少しずつ気持ちが落ち着いてくるのがわかった。
良かった・・・。
これから、始まるんだ、色んなことが。
とりあえずスタート地点に立てたことが嬉しい。
一歩一歩進みながら、大納言さまに何て切り出そうか、と考えを巡らす。
まずは官位をあげなければ。
従五位上ぐらいじゃ瑠璃さんにも大納言さまにも申し訳ない。結婚はそれからだ。
今以上に仕事に励んで、そして────。
すでに瑠璃さんとの結婚に思いを巡らせていたぼくは、この時は、全く、予想だにしていなかったのだ。
その夜、瑠璃さんが大変な目に合うと言うことを。
<続>
<高彬・初夜編>の連載スタートしました。
連載と言っても、ストーリー自体は完結済みの瑠璃編と同じですのでシーンも重複しますし、目新しい展開はありません。
でも、この時期、高彬には高彬の時間が流れていたわけで、そのあたりを書けていけたらいいなと思っています。
── 逢ひ見ての後の心にくらぶれば 昔はものを思はざりけり ──
恋が成就したあとのこんな気分も良いですが
─── しのぶれど色に出でにけり我が恋は ものや思うと人の問うまで ──
こんな時期もとても素敵です。
約束をコロッと忘れていた瑠璃と、長いこと想いつづけていた高彬。
どちらにとっても<ここから始まる───>と言う感じが、とてもドラマチックな時期だと思います。
「筒井筒のお約束をもう一度」を通しタイトルにして、連番をふっていくことにしました。
初夜編を読み直しながらの作業になりますし、短編や現代編も更新していきたいので、とてもゆっくりとした連載になると思います。
初夜編は34話ととても長い話ですので、正直、書ききれるか不安もあります。
出来れば、高彬視線での「秋の宵夢」まで心折れることなくたどりつきたいと思っていますので、暖かく見守っていただければ嬉しいです。
よろしければお付き合いくださいませ。
瑞月
(←拍手お礼。時々更新してます)
※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
*** *** 筒井筒のお約束をもう一度・・2<高彬・初夜編> *** ***
牛車の中、ぼくは小さく息を整え唇を引き結んだ。
気付けばさっきから何度もこんなことをしている。
自分でもわかってるんだけど、どうにも落ち着かない。
ばくが瑠璃さんちで風邪で倒れたのが、きっかり一週間前、つまり瑠璃さんにプロポーズしてから一週間がたった。
<もう>なのか<まだ>なのかわからないけど、何とも落ち着かない一週間だった。
あの夜、気が昂ぶっていてなかなか寝付けず、結局、明け方頃にウトウトしただけで起きだしてしまった。
三条邸の方々にお礼を言い、最後に瑠璃さんにも挨拶に行こうかと思ったんだけど、少し考えてやめた。
気恥ずかしさももちろんあったけど、次に会った時に返事を聞かせてもらえると言う約束をしたのに、昨日の今日で会いに行くのは、どうにも締まらない。
瑠璃さんにだって考える時間が必要だろうし、ここは潔く会わずに帰ろう────。
そう思ったぼくは、そのまま三条邸を辞した。
少し回復していた身体は、夜風にあたったのがいけなかったのか、それとも他の理由があるのかわからないけれど、家に着いたとたん熱がぶり返し、結局、数日間は参内を見合わせることになってしまった。
熱もすっかり下がり、体調も安定した今日、こうして瑠璃さんの返事を聞きに三条邸に向かっているのだけれど。
瑠璃さんに何て言われるのかなぁ。
大丈夫だ、と訳もなく自信が持てる時と、きっと断られるだろう、と気弱に思うときが交互にやってきて、何と言うか・・・疲れる。
それよりも何よりも、一週間前の出来事を思い出すと、本当に自分の身に起こったことなのか?!と信じられないような気持ちになる。
その、つまり・・・瑠璃さんを抱き寄せたり、頬に接吻をしたり・・・。
もし今、目の前に瑠璃さんがいて「さぁ、どうぞ」と言われても、絶対に出来ないような、気がする。
風邪もひいてたし、夜だったし、告白しようと決めてた時だったし、つまりは特別な時だったから出来たことなんだろうなぁ。
それにしても・・・・。
瑠璃さんの身体の細さと柔らかさ。
童の頃は、それこそ何も考えずに相撲を取ったり、隠れ鬼しながら身体を引っ付けあったりしてたけど、さすがに最近はそんなことしなくなっていたから、考えてみたら瑠璃さんの身体に触れたのなんか久しぶりだった。
背丈を追い越していたことは判っていたけれど・・・・。
そうか、女の人って・・・瑠璃さんってあんなに柔らかいのか。
何となく、敵わないよなぁ・・と思ってしまう。
すぐにふくれっ面するかと思うと優しくて、気が強いくせに泣き虫で、そのくせ柔らかいなんて・・・敵うわけないよな。
これで瑠璃さんに断られたりでもしたら、立ち直れない気がする。
すでに全面降伏してるっていうのに、この上、振られたら・・・・
またしても小さく息を付く。
考えたって仕方がない。泣いても笑っても、瑠璃さんの返事を聞くまでだ。
そう思ったぼくの気持ちに応えるかのように、車は三条邸の東門をくぐっていた。
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女房の先導を受けて瑠璃さんの部屋に向かう。
足早に部屋に向かいたいような、反対に逃げ出してしまいたいような気持ちを抱えながら、それでもゆっくりと歩いた。
瑠璃さんの部屋が見えてきたところで、ぼくはグッと腹に力を入れ、自分に気合を入れた。
女房が何事かを告げる声が聞こえ、誘導するような仕草に促され、ぼくは部屋に足を踏み入れた。
「こんにちは。瑠璃さん」
いつも通りに振る舞えた・・・と思うけど、内心ドキドキした。
用意してあった円座に腰を下ろし、ちらりと瑠璃さんを見ると、瑠璃さんは扇で顔を隠していて、ぼくは一瞬、嫌な予感がしてしまった。
瑠璃さんが扇で顔を隠すなんてことあまりないし、と言うことは色よい返事ではない・・・と言うことなのかも知れないから。
ともすれば落ち込みそうな心を叱り付けて、ぼくは意を決して口を開いた。
「瑠璃さん。ずっと黙っているけど、この間のことを怒っているの?」
振られるのならしょうがないけど、とりあえずは確認しておきたい。
返事がなく、これはいよいよ振られるな、と覚悟が決まると、素直に謝罪の言葉が出てきた。
「・・・ごめんなさい」
やっぱり瑠璃さんは女性だし、好きでもない男に抱きしめられたり接吻されたりしたら、そりゃあ怒るだろう。
筒井筒の気安さを利用したわけでは決してないけれど、そう思われても仕方ない状況だったし・・・。
「別に・・・怒っちゃいないわよ」
ふいに瑠璃さんの声が聞こえた。
不機嫌そうながらも瑠璃さんが口を開いてくれたことが嬉しくて、ぼくは心底ほっとしてしまった。
「よかった」
このまま一生、口を聞いてもらえなくなるんじゃないか、なんてことも覚悟していたから、良かった。
良かったけど・・・ぼくにはもうひとつ確認しなきゃいけないことがある。
もう一度、腹に力を入れて瑠璃さんに話しかける。
「瑠璃さん」
目が合った。
「・・・それで、瑠璃さんの返事は?今日は聞かせてもらえるんだよね」
一気に言い、もう一度、瑠璃さんの顔を見た。
一瞬、瑠璃さんの表情が変わり、胃が縮み上がりそうになる。
沈黙が流れ、堪えきれずに、瑠璃さんが何か言うより先に言葉をかけていた。
「言いづらい答えなの?ぼくは大丈夫だよ」
瑠璃さんは優しいから、きっと言えないでいるんだろう。
でも。
やっぱりはっきり振ってもらわないと、ぼくだって踏ん切りが付かない。
「はっきり瑠璃さんの口から聞きたいんだ」
そう、瑠璃さんの口から。
またしても沈黙が流れ、と思ったら、瑠璃さんが口を開いた。
「・・・するわよ」
「え」
する?
「だからするわよ。結婚」
思ってもみなかった言葉に思考が飛んだ。
「えっ。誰と」
まさか、権少将か?
「誰とって・・・。あんた以外にいないじゃない」
え・・・・。
ぼくと?
結婚、する・・・?
瑠璃さんが・・・・?
カチッと思考が噛み合った瞬間、一気に頭に血が上ったのがわかった。
身体中の血が、逆流してる。
瑠璃さんがぼくと結婚・・・。
すぐには、この状況に頭も身体も付いていけずに呆然としていると
「高彬。わかってるとは思うけど、あたし、浮気な男はきらいよ」
落ち着いたいつもの瑠璃さんの声が聞こえてきた。
「わかってるよ、瑠璃さん」
我に返ったぼくは、慌てて返事をした。
「妻は生涯、あたし1人じゃなきゃいやよ」
気持ち、唇を尖らせて、じっとぼくの目を見ながら瑠璃さんが言い
「もちろんだよ!」
ぼくは再度、力強く返事をした。
「妻は生涯、瑠璃さん1人だよ。誓うよ」
当たり前じゃないか。
何年、瑠璃さんに懸想してると思ってるんだ。
瑠璃さん以外の女性をぼくが好きになることなど・・・・
そこまで考えて、ふと大事なことを思い出した。
すぐに大納言さまにご報告に参らなければ。
昨日、宮中で見かけた権少将は、公達仲間相手にすでに三条邸の婿君とでも思ってるような発言をしていた。
今のところは延期となっている権少将との見合いのための宴を、なんとか中止にしていただかなくては。
「ごめん、瑠璃さん。また今度」
呆気に取られたような顔の瑠璃さんを残し、ぼくは寝殿へと向かった。
瑠璃さんに受け入れてもらえたという嬉しさと、早く大納言さまにお伝えして結婚のお許しをいただけなければ・・と言う思いで、気持ちが昂ぶっている。
渡殿を足早に歩きながら、それでも、見慣れた三条邸の庭の景色に少しずつ気持ちが落ち着いてくるのがわかった。
良かった・・・。
これから、始まるんだ、色んなことが。
とりあえずスタート地点に立てたことが嬉しい。
一歩一歩進みながら、大納言さまに何て切り出そうか、と考えを巡らす。
まずは官位をあげなければ。
従五位上ぐらいじゃ瑠璃さんにも大納言さまにも申し訳ない。結婚はそれからだ。
今以上に仕事に励んで、そして────。
すでに瑠璃さんとの結婚に思いを巡らせていたぼくは、この時は、全く、予想だにしていなかったのだ。
その夜、瑠璃さんが大変な目に合うと言うことを。
<続>
<高彬・初夜編>の連載スタートしました。
連載と言っても、ストーリー自体は完結済みの瑠璃編と同じですのでシーンも重複しますし、目新しい展開はありません。
でも、この時期、高彬には高彬の時間が流れていたわけで、そのあたりを書けていけたらいいなと思っています。
── 逢ひ見ての後の心にくらぶれば 昔はものを思はざりけり ──
恋が成就したあとのこんな気分も良いですが
─── しのぶれど色に出でにけり我が恋は ものや思うと人の問うまで ──
こんな時期もとても素敵です。
約束をコロッと忘れていた瑠璃と、長いこと想いつづけていた高彬。
どちらにとっても<ここから始まる───>と言う感じが、とてもドラマチックな時期だと思います。
「筒井筒のお約束をもう一度」を通しタイトルにして、連番をふっていくことにしました。
初夜編を読み直しながらの作業になりますし、短編や現代編も更新していきたいので、とてもゆっくりとした連載になると思います。
初夜編は34話ととても長い話ですので、正直、書ききれるか不安もあります。
出来れば、高彬視線での「秋の宵夢」まで心折れることなくたどりつきたいと思っていますので、暖かく見守っていただければ嬉しいです。
よろしければお付き合いくださいませ。
瑞月
(←拍手お礼。時々更新してます)