***第二十四話 予期せぬ訪問者*** 

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




          注)このお話は連続ものです。
            カテゴリー「二次小説」よりお入りいただき
            第一話からお読みくださいませ。



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*** 第二十四話 予期せぬ訪問者 ***




脇息に寄りかかり、あたしはぼんやりとしていた。

二日前、お使者が待つと言う部屋に急ぎ行ってみると、お使者はなんと承香殿女御さま付きの女房だったのだ。

女御さまとは、入内されて後宮に住まわれている方で、手っ取り早く言うと、帝の妃であられる。

女房は伊勢と名乗った。

それを聞き、慌てて高彬も部屋にやってきた。

なんでも、承香殿女御さまは高彬の姉上さまだと言うことで、当然、お付きの女房の伊勢とも面識があるので、双方(どうしてここに・・・)と言う思いがよぎったらしく、しばし言葉も出ないようだった。

毎日、宮廷に行き、禁中を警衛している高彬ならともかく、あたしには後宮なんてまったく関係のない場所で、ますますあたしのところに来た理由がわからない。

わけが分からず面食らっていたんだけど、伊勢の話を聞いて、あたしと高彬は腰を抜かすほど驚いてしまった。

あたしがあの日、助けたお子は、なんと承香殿女御さまのお子さまだったというのである。

女御さまのお子さまであるということは、今上帝のお子さま。

驚くなかれ、あのお子は、御歳三歳の今東宮さまでいらっしゃったと言うのだ。

「東宮さま・・・」

あまりのことにあたしは呆然としちゃったし、高彬は目をむいて驚いていた。

伊勢は話しだした。

「これは内々のことで、本来なら決して口外してはならぬことなのですが・・・・承香殿女御さまと東宮さまは、お忍びでここ吉野に来ておられたのです・・・」

高彬の姉上である承香殿女御さまは明るく活発な方であられるらしく、時おりはお忍びで後宮を抜け出して息抜きをされていたらしい。

あたしには何となくその気持ちがわかってうなづいちゃったんだけど、隣で高彬は渋い顔をしていた。

東宮さまがお生まれになってからは、さすがにお忍びも控えておられたらしいのだけど、また久しぶりに吉野に行きたいとおっしゃったと言うのだ。

帝も承香殿女御さまにはお甘いみたいで、しぶしぶ認めてくれたらしかった。

あくまでも内密ということで、高彬の耳にも入ってこなかったらしい。

お忍びなんてものは、誰にも言わずにこっそりと行くから、お忍びなんだもんね。

右近少将、つまりは帝の親衛隊であり、承香殿女御の弟である高彬が同行なんてしちゃったら、かえって目立ってしまって危険なのかもしれない。

それで、あの日、お付きの者が少し目を離した隙に東宮さまが別邸を抜け出され、てんやわんやの大騒ぎになっていたと言うのだ。

発見された時、あたしは東宮さまを抱きかかえていて、東宮さまにはかすり傷ひとつなかったそうである。

発見した者も混乱しているし、もちろんあたしの家の者も混乱しているし、何よりも東宮さまがあわやの大怪我と言うことが人の口に上れば、口さがない者たちに女御さまが何と言われるかわかったものではない。

なので、お付きの者たちは身を明かす気はなかったのだけど、風の噂であたしが記憶を失っていることを女御さまはお知りになり、責任を感じたいそうお心を痛めていらっしゃると言うのだ。

「こちらの姫さまが、少将さまのご婚約者であられたとは・・・・!」

あたしと高彬の関係を知った伊勢は、心底びっくりしたようだった。

そりゃあそうよね。

普段、後宮の奥深くで過ごしている女御さま付きの女房が、一貴族の姫の噂話などを耳にするはずがないもの。

この分だと、女御さまもご存じではなかったにちがいないわ、あたしが高彬の婚約者であるということを。

貴族なんて家族同士でもお互いの動向を知りえているわけではないし、ましてや後宮に入られている方なんて、普段おいそれと会えるわけでもないものね。

伊勢はふと手をついて

「本当に姫さまのお陰でございますわ・・・。東宮さまの身に何かがございましたら、それはそれは恐ろしいことになっておりましたもの・・・・」

東宮さまと言ったら、次の帝におなりになる方だものね。

「実は女御さまは、三日後に京に戻られるのでございます。つきましては、その前に、ぜひ姫さまにお詫びとお礼を申し上げたいとの由にございます」

別にお詫びもお礼もよかったんだけど、高彬の姉上さまだと言うことだし、お受けすると、あたしの身体を気遣って下さり、恐れ多くも女御さまがお越し下さるというのだ。

それが今日で、もうじきいらっしゃる頃ではないかと思っていると、まずは高彬が部屋にやってきた。

女御さまとの対面に、高彬も同席するためである。

少しすると、小萩が音もなくやってきて手をついた。

「少将さま、姫さま、女御さまがお見えになられました」

そういう小萩の顔は緊張のためか強ばっている。

それも無理のないことで、小萩にとって後宮なんて雲の上のことの話で、そこに住まう方々なんて、普通なら一生、会うことのない方なのである。

やがて現れた女御さまは、お美しく気品があり、どことなく目元が高彬に似ていた。

伊勢から聞いていたらしく、高彬がいることも、とうにご存じであられた。

高彬に軽く合図をしたのち

「瑠璃さま、このたびのこと、本当に申し訳なく、ありがたく思いますわ」

と手をつかれた。

高貴な方に手をつかれて困ってしまった。

実際、どうして、あたしが東宮さまをお助けしたのか、あたし自身覚えていないのだし。

「あの・・・」

なんて言っていいかわからずに口ごもっていると、高彬が横から口を出してきた。

「姉上。承香殿女御と言わずに、あえて姉上と申し上げます。この度のお振舞いは、あまりにご軽率なのではないでしょうか」

姉とは言え、身分が上なので敬語を使ってはいるのだけど、言葉の端々に怒りがこめられている。

そうなのだ。伊勢から話を聞いた高彬は、にわかに臣下としての意識を取り戻したようで、ずっと怒りまくっていたのだ。

一歩間違えれば東宮の身が危うかったのだから、日々、帝の身を護衛している近衛府の少将として怒るのはもっともだとも言えるのだけれど。

でも、それはあくまで男の見方で、あたしは何となく承香殿女御のお気持ちがわかってしまう。

だって、後宮なんて窮屈そうだもの。

息抜きのひとつやふたつしたくなるわよ。

お可哀そうに。高彬にきつく言われて、承香殿女御はしょんぼりと俯かれてしまっている。

「えぇ・・・本当に。高彬、あなたの言うとおりですわ。東宮さまの身も危うかったし、瑠璃さままで・・」

と言って涙ぐまれてしまった。

「あの・・・、あたしは全然、大丈夫ですわ。怪我も大分、良いのですわ、女御さま」

急きこんで言うと

「でも、瑠璃さまのご記憶が・・・」

女御さまはそう言って口ごもってしまわれた。

「記憶なんてすぐに戻りますわ。戻らなかったら、その時はその時。新しい思い出を作っていけば良いだけですもの。東宮さまがご無事で何よりでしたわ」

そういうと、女御さまはまじまじとあたしをご覧になり

「明るい方ね、瑠璃さま。明るくて、そうして優しい方。・・・ありがとう」

あたしの手を取り微笑まれた・・・・。


             <第二十五話へ続く>

〜あとがき〜

ふたりのらぶらぶを楽しみにして下さっている皆さま。

今日はらぶらぶ無しのあっさりティストですみません!

でも、らぶらぶばっかりだと、いかんせんストーリーが進まず・・・(笑)

今日の「あっさり」が今後の甘々に繋がっていきますので〜。

気長にお付き合いくださいませ。

またご感想などございましたら、コメント欄よりお寄せください。

読んでいただきありがとうございました。


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