***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>5

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。閲覧は自己責任でお願いいたします。
               
        






***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>5 ***






「瑠璃さんが吉野に行っている?いつから?」

「うーん、確か発ったのは一週間くらい前だったと思うけど」

「何でまた吉野なんかに・・」

「桜を見に行くとか言ってたよ。ここらの桜は散っちゃったけど、吉野はこれからだからね」

「そうか・・、桜を見に・・」

呟いた途端、はっとした。

数日前から秋篠中将が休暇を取っていて、確か「山桜を見に行く」とかそんなことを言っていたのを思い出したのだ。

「・・・」

まさかと思うけど、瑠璃さんと秋篠中将が吉野で逢引してる・・・?

「あ、高彬!どこ行くの!」

融の声を背中に聞き流し、ぼくは右近衛府の部屋を飛び出した。



******



「え?今から、吉野に行かれるのですか?」

突然の帰宅に驚く大江に、吉野に行くことを告げると、更に驚いた顔になった。

「うん。明日、明後日はどっちみち公休だし、今日の分の仕事の算段も付けてきたから」

「・・何かございましたの?」

「いや、分からないんだ、何も。ただ、妙な胸騒ぎがしてさ」

「胸騒ぎ?」

「とにかく行ってくる。そう言えば・・・守弥がいないな」

「兄なら家司部屋で帳簿を付けていると思いますわ。呼んできますか?」

「いや、それなら好都合だ。このまま出るから守弥には適当に言っておいてくれ」

「適当ってそんな・・!高彬さまぁ・・」

情けなさそうな声を出す大江に手を上げると、そのまま厩舎に向かう。

今から出て走り通せば、夜には吉野に着くはずだ。

見慣れた京の風景が鄙びたものになり、一番星が出る頃、ようやく吉野に入った。

三条邸所有の吉野山荘には、童の頃に2度ほど来たことがある。

山荘には瑠璃さんが先に滞在していて、ぼくは融に誘われる形で遊びにきたのだ。

日がな一日3人で遊んだのは今でも忘れられない楽しい思い出で、思えば、ぼくはその頃から瑠璃さんのことが好きだったんだと思う。

ズケズケと思ったことを言い、お転婆で気が強く、だけど、ここぞと言うところで瑠璃さんはいつも優しく、ぼくの瑠璃さんとはいつでもこうして会いたい時には会えると信じて疑わなかった。

それが、ある日を境にふいに会えなくなってしまうなんて・・・

山荘は吉野でも奥まったところにあったはずで、記憶を頼りに行きつ戻りつしながら進んで行く。

とっぷりと陽も暮れ、ぼくは馬を降りると手綱を引いて歩き始めた。

月もない暗闇では馬が足を取られてしまうかも知れず、起伏の激しいこの山道をこのまま馬で行くのは危険だ。

歩いても歩いてもなかなか山荘は見つからず、やはり記憶だけで辿り着くのは無理だったかも知れないと、不安が胸を掠め始めた頃、遠くにボゥとそこだけ明るく見えるものがあった。

時折り吹く風に煽られるように、大きくなったり小さくなったりしている。

篝火だろうか?

だとしたら山荘である可能性は高く、自然と足が速くなる。

どれくらい歩いたのか、ふいに道が開けたと思ったら、広い野原に出た。

篝火はこの野原の先にあるようで、突っ切ろうと一歩を踏み出したぼくは、ギョッとしてそのまま固まってしまった。

野原に───

人らしいシルエットがあったのだ。

息を殺してじっと見ていると、段々と目が慣れてきて、それと同時にシルエットの全容が見えてきた。

野原の少し端寄りに立ち、何かを見上げているように顔を上げて・・・

桜、だろうか?

桜を見上げているようにも見え、まさか、と言う思いで一歩踏み出すと、一陣の風が吹き、辺りが急に明るくなった。

月明りだった。

月のない夜と思っていたのは勘違いで、どうやら雲が月を隠していただけらしい。

月の明りに照らされ、浮かび上がったのは

「瑠璃さん・・」

やはり、瑠璃さん、その人だった。






<続>


果たして高彬の恋心は、瑠璃かぐや姫に届くのでしょうか?
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***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>4

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






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***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>4 ***






「さすがは伝説の瑠璃姫、随分と無理な要求を突きつけてくるものですね」

「まったくもって・・・」

「いやはや、どうしたものですか・・・」

秋篠中将の言葉に、帥の宮、権少将は続けて相槌をうち、昼御座の中の今上も深く頷かれた。

清涼殿の母屋、今上の御前に集まったのは、秋篠中将、帥の宮、権少将、そしてぼく右近少将の4人で、孫廂に正装した女房らが控えているサマは宮廷絵巻そのものである。

春の陽がやわやわと今上の昼御座にも届き、厚畳の繧繝縁畳を輝かせている。

その中で今上は渋面を作られ、しきりに笏を弄ばれ、口元を隠したり頬にあてがったりしておられる。

「いくらなんでも無理難題が過ぎますね。我々にならばともかく、今上にまでそのような文が届くとは、一体どのようなおつもりなのか・・」

帥の宮が穏やかながらもどこか非難の含みをもたせた声音で言った。

「そうですね。今上が入内をお望みになれば、瑠璃姫とて無視は出来ぬものを・・・」

秋篠中将の言葉を今上は遮り

「いやいや、いいのだ、秋篠。それは命じないと言ったのは私なのだからね。そんなことをしたら私が勝つことが決まってしまい面白くない。入内は禁じ手だ」

面白そうにおっしゃられ、それを受けて

「ありがたき幸せ」

権少将はおどけた風に頭を下げてみせた。

皆がどっと笑い、その中でぼくは気付かれないように小さく息を吐く。

「どうした、高彬。おまえには何か秘策でもあると言うのか」

今上に言われ、ぼくははっと顔を上げた。

ぼくがあれ以来、文を送っていないと言うことは、ここいいる皆はご存知ないので、当然、ぼくにも瑠璃さんからの無理難題の文が届いていると思われているのだろう。

「仏の御石の鉢」「鼠の裘」「龍の首の珠」「燕の産んだ子安貝」と来たら、残るひとつは「蓬莱の玉の枝」────

「いえ、秘策などと言うものは何も。そもそもが伝説の話ですし・・・」

慎重に言葉を選んで言うと

「いかにも」

帥の宮は深く頷き、皆で顔を見合わせながら目配せし合っている。

その様子は本当に手の打ちようがなくて途方に暮れているようにも見えるし、何かアテが合って、お互いに腹の探り合いをしているようにも見える。

皆に合わせ、適当に頷きながら、ぼくの心は穏やかじゃなかった。

何しろぼくには文すら届いていないのだから。

まだしも「蓬莱の玉の枝」を用意しろ、とでも言ってもらえれば、頑張りようがあるというものだ。

ぼくは恋のレースのスタート地点にすら立たせてもらってないと言うことで・・・

出るのはため息ばかりなり、だ。



******



「高彬さま、いかがなされましたの?最近、お元気がないようでございますけど・・」

自室で漢詩の勉強をしていたら、白湯を持ってきた大江に話しかけられた。

漢詩の勉強とは名ばかりで、ついついぼんやりとしていたらしい。

「ひょっとしたら、瑠璃姫さまのことで何かございましたの?」

大江はぼくの恋を応援してくれている数少ないうちの一人なのである。

数少ないと言うか、融の他は大江だけかも知れない。

いや、一応、小萩も応援めいた気持ちは持ってくれていそうだから、まぁ、それにしたって3人だけだけど・・・

瑠璃さんの文をことを教えると、大江は(うーん)と腕組みをして少し考えると

「それでは腕の良い金細工職人に<蓬莱の玉の枝>を作らせたらいかがですか?」

「文ももらってないのに?」

「そこがいいんですわ。サプライスって感じで」

「だけど職人に作らせたことがバレたら・・」

「バレるも何も実際にあるものではないんですもの。瑠璃姫さまだって本物が欲しいとは思ってないはずですわ。自分のために職人にわざわざ作らせた、そのお気持ちが嬉しいものなんです」

「・・そういうものなのか?」

「ええ。お金はいくらでもあるんですもの」

「・・・」

そうか・・、先回りして<蓬莱の玉の枝>を贈ってしまう、か・・・

だけど、そんなこと、皆も考えそうだし。

いや、何よりもぼくは文すらもらえてないんだしな。

どうしたものか。

もう一度、文を書いてみようか。

それよりも、御簾越しでもいいから思いのたけをぶつけてみようか。

あれこれ思い悩むうちに日は過ぎて行き、桜も散り透いたある日の午後、右近衛府の一室で書き物をしていたぼくの元に融がやってきた。

「融。今日あたり、その・・、また瑠璃さんのところに行かないか」

ダメでもともと、当たって砕けろの精神で、はっきりと思いを伝えようと思い定めていたぼくは融に言った。

並々ならぬ決心で言ったのに、融は呑気そうな口調で

「姉さん?姉さんなら、今、吉野にいるよ」

そう言ったのだった。





<続>




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***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>3

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






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***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>3 ***







ぼくは一度だけ、瑠璃さんに文を送ったことがあった。

瑠璃さんが簾中から出てこなくなり、少したってからのことだったと思う。

その時にはぼくは瑠璃さんへの恋心を自覚していたし、それに段々と宮廷でも瑠璃さんのことが噂され始めてきて、我こそはと名乗りを上げる公達が増えてきていたから、早めに何とか気持ちを伝えておきたいと言う焦りもあった。

それで無い歌才を捻って歌を詠み、瑠璃さんに送ったのだけど、一向に瑠璃さんからの返事はなかった。

まさかと思うけど、届いていないのではと思い、融に会いに行くのを口実に三条邸に寄り、それとなく小萩に聞いてみたら、間違いなく文は瑠璃さんに届いていると言う。

「そうか、届いているのか」

それならもう少し、待ってみようかな。

もしかしたら瑠璃さんも返歌を吟味してくれてるのかも知れないし・・・

なんて都合の良いことを考えていたら、どうやらそれが顔に出たのか、小萩が何とも気まづそうな顔をぼくに向けてきた。

何かを言いたくて、でも、言いだせないでいる、と言った表情である。

「小萩、何か・・?」

「それが、そのぅ・・」

上目づかいでチラチラとぼくを見ると

「実は姫さまは、高彬さまからのお文を見た途端、泣きだしてしまわれたのでございます」

「瑠璃さんが泣いた?ぼくの文を見て?」

「・・はい」

「それは・・・、嬉しかったから、とかではなくて?」

自分で言うのは恥ずかしかったけど、一応、その可能性もないわけだから聞いてみると

「いいえ」

小萩は首を横に振った。

「『ひどい!』と叫ばれて、そのまま突っ伏してしまい、それでお文をこう、ギュッと」

小萩は手を絞り、どうやら瑠璃さんはぼくの文を握りつぶしてしまったということらしい。

「・・・」

『ひどい』?

そんな失礼なことを書いた覚えもないし、なのに瑠璃さんはぼくの文を握りつぶした・・・

それ以来、瑠璃さんに文を書いていない。

書けないじゃないか。

また泣かれて、文を握り潰されてしまうと思ったら・・

結局、その文のことはそのままで、どうして泣いたのかもわからないまま今に至っている。

こうして御簾越しでも会えば瑠璃さんは気軽に話してくれるわけだから、ぼくを嫌ってると言うわけではなさそうで、だけどそれはある意味、辛いことだった。

はっきり嫌いと言ってくれたらまだ諦めもつくのに───

いや、諦めないかも知れないけど。

「姉さんさ、一人一人にちゃんと返事書いてるの?」

ぼくが聞きたいことを融がズバリと聞いてくれた。

「書いちゃないわよ。ろくに読んですらないもの」

「父さまが嘆いてたよ。今上はもちろんのこと、皆さん、将来は宮廷の重鎮になられる方ばかりなのに、こうも無下な振舞いばかりしていたら、いつかお咎めがあるって」

「ふん、だったら父さまが結婚すればいいのよ」

瑠璃さんはどこまでもサバサバと言い、ぼくは安心していいんだか、落ち込んでいいんだか、わからない気持ちになった。

今上始め、名だたる公達に求婚されても全く靡く気配のない瑠璃さんは、やっぱり本当に結婚するつもりがないと言うことなのだろうか。

だとしたら、ぼくとも結婚しないわけで───

「でも・・・」

少し黙っていた瑠璃さんが、もの思う風情で口を開いた。

「一回くらい、返事を書いてみようかしら」

「え」

思わず腰が浮きかけると

「それってOKって意味で?」

またしても融がぼくの気持ちを代弁してくれた。

だけど瑠璃さんはそれには返事をせずに

「<仏の御石の鉢><火鼠の裘><龍の首の珠><燕の産んだ子安貝>を持って来て下さいって書くの」

簾中で小さく笑う気配があった。

「それを持って来てくれたら結婚します、って。どうかしら」

瑠璃さんが言ったものは、いずれも「竹取物語」の中でかぐや姫が公達に言い付けたもので、どれも話にしか聞かない珍しい宝ばかり、手に入れるのは困難・・・と言うか無理なものばかりだった。

小萩に用意をさせると、瑠璃さんはサラサラと文を書き始めた。





<続>




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***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>2

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






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***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>2 ***







「高彬、良かったらさ、これから姉さんのとこ行かない?」

「え、今から?」

突然の融の申し出にびっくりしていると

「うん、父さまから姉さんに渡して欲しいって頼まれてるものがあるんだよ。まだ早いし、どうせだったら今日、渡しに行っちゃおうかなと思って。高彬だって、久しぶりに姉さんの声くらい聞きたいだろ」

「う、うん」

「良し、じゃあ行こうよ」

立ち上がる融に続き、慌ててぼくも立ち上がった。

これから瑠璃姫に会える───

もちろん御簾越しなのは承知してるけど、それでも前に簾中の瑠璃姫の気配を窺ったのは、内大臣さま主催の残菊の宴の席だったから、もうかれこれ半年も前のことになる。

逸る気持ちを抑え、融と共に牛車に乗り込むと、九条別邸を目指した。



********



「姉さん」

気軽に声を掛け円座に座る融の隣で、ぼくは緊張して腰を下ろした。

「融、良く来たわね。あら・・、高彬?」

ふいに声を掛けられて、カッと顔が熱くなる。

「瑠璃姫・・」

「やぁねぇ、何、気取ってんのよ。前みたいに<瑠璃さん>でいいわよ。久しぶりね、元気だった?」

「はい」

「だから気取らないでよ。あたしたち筒井筒なんだし。昔はよく庭を転げ回って遊んだ仲じゃない」

「・・う、うん」

「あんた、右近少将になったんですって?すごいわね。若い公達の中では一番の出世頭だって父さまが話してたわよ。・・ね、融。おまえ、高彬の爪の垢でももらったら?」

瑠璃姫、いや、瑠璃さんはからかうような口調で融に話しかけ、融は

「何だよ、姉さん、ひどいや」

と唇を尖らせた。

ケラケラと瑠璃さんは笑い、そんな瑠璃さんを見ていると

(やっぱり瑠璃さんだよなぁ)

と思う。

瑠璃さんは童の頃は元気いっぱいの姫で、融と3人でよく遊んでいた。

それが裳着を迎えた辺りから、だんだんと声を掛けても簾中から出てこなくなり、ついには御簾越しでしか話をしなくなってしまった。

もちろん、それが姫のあるべき姿ではあるけれど、裳着を迎えたばかりの瑠璃さんは、女房たちの制止も聞かずに相変わらず平気でぼくらの前に顔を出していたし、瑠璃さん自身もまったく気にするそぶりはなかったのだ。


瑠璃さんには、いつでも会えると思っていたから、瑠璃さんの突然の変化はぼくに取って驚きでもあり、また淋しくもあった。

それで、その淋しさを辿ってみて、初めて瑠璃さんへの恋心に気付いたんだから、ぼくも大概、間が抜けている。

今では瑠璃さんは都中の貴公子の憧れの姫だし、本当にこんなことになるのなら、もっと昔にプロポーズでも何でもしておけばよかった。

「姉さん、はい。これ、父上から」

融が無造作に文の束を差しだした。

ここに来る前に立ち寄った三条邸から融が持ってきたもので、どうやらこれが融が言っていた<内大臣さまが瑠璃さんに渡して欲しいと頼んだもの>らしい。

瑠璃さんは一応、世間的には三条邸に住んでいることになっているし、瑠璃さんあてに届いた文を、内大臣さまがこうして転送しているらしいのだ。

御簾の下から受け取った瑠璃さんは、文をぱらぱらと見ているらしく

「ふぅん」

なんて呟く声が聞こえてくる。

この文の中には、おそらく今上を始め、秋篠中将どのや、宮さまからの文が入っているに違いなく───

「高彬。高彬も文、書いてるの?」

隣から小声で融に聞かれ、ぼくは小さく頭を横に振った。

前に一度───

一度だけ文を送ったことがあるのだけど・・・

でも、その時、瑠璃さんは・・・・

ぼくはもう一度、首を振った。

あんなことがあったら、もう文なんて書けないさ・・・。





<続>




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***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>1

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






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***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>1 ***







「高彬!」

公務を終え、右近衛府を出たところで遠くから名前を呼ばれた。

頭の上で手を振りながら駆け寄ってくるのは親友の融で、ぼくの前にやってくると膝に手を置いて息を整えると

「今、帰り?」

そのままの姿勢でぼくを見上げるように聞いてきた。

大きく傾いた西日に目を細めている。

「うん」

「だったら一緒に帰ろうよ。久しぶりに高彬とゆっくり話したいし」

「そうだな」

2人で連れ立って牛車に乗り込み、物見窓を開けると、草木の匂いを孕んだ春の空気が流れ込んできた。

この時間の大路はまだ活気に溢れていて、牛飼童の声や物売りの声が飛び交っている。

「融、せっかくだからうちに寄って行くか?」

「え、いいの?」

「うん。その方がゆっくり出来るし」

突然、客人を連れて帰宅したことに驚く女房たちを尻目に、融と2人、部屋に入って行くと守弥が控えていた。

「お帰りなさいませ、若君」

「うむ」

「これはこれは、大夫の君」

守弥は融に向かい慇懃無礼に言い、わざとらしく頭を下げて見せた。

守弥を下がらせ

「相変わらず感じ悪いだろ。悪かったな」

腰を下ろしながら言うと、融は肩をすくめてみせた。

「ううん。もう慣れっこだよ」

女房の持ってきた白湯をゴクリと飲み干すと

「高彬はさ、まだ結婚しないの?」

いきなり聞いてきた。

「まだって・・。融、おまえだってまだ結婚してないじゃないか」

「そうだけどさ。でも、ぼく、今日、右大臣さまに言われちゃったんだよ」

「父上に?何て」

「うん。『高彬は持ってきた縁談を片っ端から断るのじゃ。どうしたもんかのぅ』って」

融は身振りまで父上の真似をして言い

「やっぱり、あれ?姉さんのこと?」

ぼくの顔を覗き込んできた。

「・・・う、うん・・」

曖昧に頷くと

「あのさぁ、前にも言ったと思うけど、皆、姉さんのことを美化し過ぎなんだよ。確かにうちは家柄はいいし、その総領姫がいつまでも婿を取らないってことで注目を集めるんだと思うけどさ」

「・・・」

「それを『あまりの美しさに内大臣さまが婿を取るのを嫌がってる』とか『その美しさは、かぐや姫もかくやあらん』とか言っちゃってさぁ。そんなこと全然ないんだよ。高彬だって姉さんの顔くらい覚えてるだろ?」

「うん、それはまぁ」

「確かに姉さんは家の者に『かぐや姫』とかあだ名で呼ばれてたことはあったけど、それは何もかぐや姫みたいに綺麗ってわけじゃなくて、竹を割ったような性格だからってことだよ」

「う、うん」

「その姉さんを、錚々たるメンバーが取り合ってるんだもん。誤解って怖いよなぁ」

融は心底不思議そうに首を捻り、ぼくは黙って白湯を飲み干した。

そう。

ぼくが持ち込まれた縁談を断る理由は瑠璃姫にあった。

瑠璃姫とは、京でも屈指の名門、内大臣家の総領姫で、京に住まう男なら知らぬものはいないと言う音に聞こえた伝説の姫なのである。

あまたの求婚に見向きもせず、今は内大臣家所有の九条別邸でひっそりと暮らしていると言う。

今、瑠璃姫に名乗りを上げているのは5人、今上帝、秋篠中将、帥の宮、権少将、そしてこのぼく、右近少将────。

果たして瑠璃姫の心を射止めるのは誰なのか。

恋のレースの火蓋が切られた───。






<続>


瑞月です。

いつもご訪問ありがとうございます。

妄想が制御不能のため、いきなりの平安編・古典シリーズのスタートです。

社会人編も並行して連載していきますので、よろしかったらお付き合いのほどお願いいたします。

学校も新年度が始まり、双子も中学2年生になりました。

昨日、保護者会があったのですが、学年委員を引き受けてきました。

来年の3年生でやると、卒業アルバムの製作や謝恩会などの企画をやることになるそうで、今年やっておけば、来年は「くじ」から免除されると言う事で、だったら今年のうちにやってしまおうと思い、手を挙げました。

(どうも私は当たって欲しくない「くじ」で当てられる傾向があるのです。くじ運がいいんだか悪いんだか)

学年委員がどんなことをやるのかまだよくわかっていないのですが、今までよりも更新の頻度が落ちるかも知れません。

(今までが早過ぎただけですが!読むのも大変だったと思います)

26日に学年委員の中の「委員長」を決める集まりがあり、委員長になってしまうと、かなり大変みたいです。

今日から身を清め、神社詣でをし、くじに当たらないように精進しようと思っています。


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**当ブログの簡単な説明です**
当ブログは「なんて素敵にジャパネスク」の二次小説を掲載しております。 二次小説と言う言葉を知らない方や苦手な方は閲覧ご注意ください。 また読後のクレームはお受けできません。 「ごあいさつ<最初にお読みください>」も合わせてご一読下さい。
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