***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>5

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。閲覧は自己責任でお願いいたします。
               
        






***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>5 ***






守弥の秘策とやらを聞いてみよう───

それがぼくの出した結論だった。

結局、今の段階でぼくに出来ることは何もないわけで、だったら守弥の秘策を聞いてみるのも悪くないと思ったのだ。

「何だ、言って見ろよ」

促すと、守弥は心得顔で頷き膝を進めてきた。

大江も興味津々と言う感じで身を乗り出してくる。

「入内を阻止すること。それはすなわち帝に瑠璃姫を諦めていただくと言う事です」

「うん」

それはその通りなので素直に頷くと、守弥も大きく頷き返した。

「それが出来れば、もちろん一番いいに決まってるさ。だけど、一体、どうやって帝に諦めていただくと言うんだ」

「そうですわ、兄さま。帝はもう長いこと、瑠璃姫さまを狙ってらっしゃるのですわ。そんな簡単に諦めるとは思えません」

大江が横から言うと

「簡単なことです」

守弥はぼくの顔を見ながら、にやりと口の端をあげ

「瑠璃姫に月にお帰りいただけばよろしいのです」

「はぁ?月に?」

大江が頓狂な声を上げた。

「月って、守弥、おまえ・・」

「瑠璃姫は『その美しさはかぐや姫もかくやあらん』と巷で言われている姫です。でしたら、いっそ、その噂を利用し、瑠璃姫は十五夜の月の日に月に帰ってしまったことにするのです」

「・・・」

「いなくなった姫に宣旨を下ろすことはさすがの帝も致しますまい」

「致しますまい、って言ったって、瑠璃姫は月に帰ったなんて話を誰が信じると言うんだ。戯言と笑われておしまいだろう」

「いえ、ですから、帝の御目の前で月に帰るのです。それなら信じざるを得ないでしょう」

「・・・」

「わかったわ!兄さま。そう言う芝居をすると言うことね。瑠璃姫さまは誰の掌中にも落ちずに月にお帰りになった・・・。そうして高彬さまが密かにご結婚をなさるんですのね」

守弥は大江の言葉に小さく頷きながらも、ぼくの目をじっと見てくる。

確かに物の怪や鬼の怪異の噂がまことしやかに語られる世の中だ。

「かぐや姫」の異名を持つ一人の姫が月に帰ったとしても、それはある一定の信憑性を持つだろうとは思われる。

いや、さすがに月に帰ったと言うのは無理があるとしても、物の怪に魅入られたかのように姿を掻き消した、と言う線なら十分に信じてもらえそうな気はする。

それでぼくが瑠璃さんと結婚をして・・・

「待てよ、守弥。でも、瑠璃姫が月に帰ってしまったら、ぼくは誰と結婚したことにすればいいんだ。右大臣家の息子の正式な婚儀ともなれば世間の注目を集める」

「そうですわ、兄さま。高彬さまの正妻の家柄を、いつまでも隠し通せるものではありませんわ」

「もちろん、若君は堂々と瑠璃姫と結婚なされば良いのです。つまり、月にお帰りになるのは、瑠璃姫ではありません。瑠璃姫の身体に乗り移っていた<かぐや姫>です」

「・・・」

「一芝居打った後、瑠璃姫にはしばらく身を隠していただきます。そして、ほとぼりが冷めた頃、竹林辺りで発見させるのです。瑠璃姫は記憶を失くしている。世間は<かぐや姫に身体を乗っ取られていた時の記憶はないのだ>と都合よく解釈してくれるはずです。そう言う噂を流してもいい。よもや、帝もそのようないわく付きの姫を入内させようとは思わないでしょうし、何よりも重鎮たちが許すとは思えません」

「・・・」

そんなに都合よく行くのだろうか・・・

懐疑的な気持ちで守弥を見ていたら

「さすが兄さまですわ」

大江は手を叩き喜んでいる。

「いかがですか?若君」

守弥に聞かれ、ぼくはまたしても(うーむ)と腕を組んだ。



******



夜になり内大臣さまから文が届いた。

それによると、確実なことではないとは言え、瑠璃さんに宣旨を下す方向で水面下での働きかけがあるのは事実ということだった。

文面からは、内大臣さまはもう抵抗しても仕方がないと諦めかけているのが察せられた。

宣旨が下り、父親である内大臣さまがお受けするつもりなら、もう瑠璃さんの入内は決まったも同然である。

そんな───

そんなことをさせてたまるか。

ぼくはイライラと部屋の中を歩き回った。

こうなったら、守弥の秘策に掛けてみるしかないのか?

いや、何か他にも良い方法があるのではないだろうか・・・

じりじりとした思いで考えるうち、ふと、瑠璃さんの顔が浮かんだ。

瑠璃さんに会いに行ってみようか・・

瑠璃さんは何と言うだろうか。

瑠璃さんの気持ちを聞いてみたかったし、何より、瑠璃さんに会いたかった。

翌朝───

早いうちにぼくは吉野を目指し出発した。






<続>


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***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>4

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






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***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>4 ***






「内大臣さま!」

大内裏の宴の松原の辺りで、足早に行く内大臣さまの後姿を見つけたぼくは、声を掛けた。

「おぉ、高彬どの!」

振り向いた内大臣さまの額には大粒の汗が光っており、かなり慌てているように見える。

「瑠璃姫に宣旨が下りると聞いたのですが、本当のことでしょうか」

若輩者の身で不躾な聞き方だとは思ったけれど、聞かずにはいられなかった。

果たして内大臣さまも、そんなことには気が回らないのか

「邸で休んでるところで耳にしてな、こうして取るものも取り敢えず参内した次第じゃ」

「もし正式に宣旨が下りた時には・・・」

「わしにも判らん。わしは瑠璃を後宮などに上げたいとは思ったこともない。瑠璃に後宮暮らしが務まるとも思えん。わしの気苦労が増えるだけじゃ」

「はい」

「今、瑠璃は吉野におる。仮に入内ともなれば、支度に時間がかかる。どっちみち今日、明日の話ではないと思うてな」

「はい」

「ともかくわしは殿上の間で情報を集めてくる。何かあったら高彬どのに遣いをやるからそのつもりでいてもらいたい」

「はい。わかりました」

せかせかと足早にその場を立ち去る内大臣さまを見送りながら、ぼくは知らずに拳を握っていた。

いてもたってもいられないような焦燥感が襲い掛かってくる。

だけど、確かに内大臣さまが仰った通り、正式な宣旨は右から左にすんなりに出るものではない。

一人の姫が入内するともなれば政治的分布も大きく塗り替えられるわけで、いくら帝と言えども、その辺りは入念な根回しが必要になってくるのだ。

瑠璃さんが吉野にいることも幸いした。

のんびり構えてる時間はないけど、少なくとも今すぐどうこうと言うほど喫緊の問題ではないはず・・・

自分に言い聞かせると、ひとつ大きく息を整える。

まずは落ち着いて善後策を講じよう───

世間的に認められていないとは言え、瑠璃さんはもうぼくの妻になったのだ。

おめおめ入内などさせてたまるか。

瑠璃さんはぼくのものだ。

踵を返し歩き出すと、沓の下で玉砂利が小気味のいい音を立てる。



******



「そんな・・!瑠璃姫さまが入内だなんて・・!」

ぼくの話を一通り聞いた大江は絶句したかと思ったら、ポロポロと泣きだしてしまった。

「いや、大江。泣かなくても」

「瑠璃姫さまとの仲もこれきりかと思うと、高彬さまがお気の毒で・・」

「・・・決めつけるなよ」

思わず舌打ちがでると、守弥が部屋にはいってきた。

「何を騒いでいる、大江。若君の間で失礼だぞ」

さすがに兄らしく大江を叱りつけると

「若君。内大臣家の姫君が入内すると言うのは本当でございますか」

「何だ、守弥、耳が早いな。もうそんなに噂になっているのか?」

「いえ、私の情報収集力が長けているだけでございます。まだ噂と言うほどではございません。それよりもそれは真実なのですか?」

「まだわからないんだ」

ヤケに熱心なのが不思議で、でも守弥はぼくが瑠璃姫に懸想してるのが気に喰わないから、どうせ瑠璃さんの入内が確定したら喜ぶに違いないと思っていたら

「入内は何としてでも阻止致します」

思ってもみないことを言いだした。

「え」

守弥が瑠璃さんの入内を阻止するって、どうして?

「内大臣家は、我が右大臣家と並ぶ権門です。そこの姫が入内したら、公子姫の強敵になることは目に見えています」

「・・・」

「この場合、姫の資質がどうであろうと、肝心なのは家柄ですから」

「・・・」

「右大臣家の威光に傷が付けば、それは若君にとって喜ばしからぬ事態です。でしたら、瑠璃姫を妻にし、内大臣家を取り込んだ方がよろしいでしょう。妻は一人きりと言うわけではございませんしね」

「・・・」

「若君。瑠璃姫の入内を阻止する秘策が私にございます。若君に何の落ち度もなく、瑠璃姫の評判にも傷を付けず、世間的に見ても誰もが納得するやり方です。ぜひ、お耳を」

「秘策・・」

「高彬さま、私も協力いたしますわ」

隣から大江が身を乗り出して言い、ぼくは(うーむ)と腕を組んだのだった。





<続>


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***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>3

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






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***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>3 ***






翌日は公休を返上し参内した。

さすがに身体は疲れていたけれど、何だか気持ちが高揚していて、じっと邸にいるような気分ではなかったし、それに、瑠璃さんとの結婚のことをどうしても伝えておきたい人がいたのだ。

朝の御前会議を終え、いくつかの書類に目を通し仕事が一段落したところで、後宮に向かう。

「右近少将さま」

出てきた女官に承香殿女御───姉上に取り次ぎを頼むと、ほどなくして御簾の向こうに人の座る気配があり

「まぁ、高彬。久しぶりですね」

笑みを含んだ穏やかな姉上の声がした。

「この間、来たのが年が明けての挨拶の時でしたから・・・、優に四月ぶりではありませんか」

「申し訳ありません、姉上。何かと仕事が立て込んでおりまして」

「いつもあなたはそればかり。その割りには休日には、ご友人の融さまと遠乗りを楽しんでいると言うではありませんか」

「・・・」

・・バレてたか。

果たしてそんな思いが顔に出たのか、恨みがましい顔をしていた姉上が、ふいに吹きだした。

「まぁ、いいですけどね、こうしてたまには顔を見せにきてくれるのですから。さぁ、お話と言うのは何ですの?もしや、とうとう結婚でも決まりましたか?」

「えっ」

カッと顔が熱くなると

「まぁ」

姉上は笑み崩れた。

「どうやら言い当ててしまったようですね。お相手はどなたですの?高彬、あなたは・・・」

ふいに真面目な顔になった姉上は、心配そうにぼくの顔を覗き込んできた。

声を落とし

「あなたは長年、瑠璃姫に懸想していたではありませんか。諦めてしまわれたのですか?」

「いえ。実は・・・、相手は瑠璃姫なのです」

「・・・まぁ!瑠璃姫ですの。どなたにも靡かず、帝ですら難攻不落の姫君だと聞いていましたが、どうやって・・」

「直接、会いに行き、気持ちを伝えました」

「そうでしたの・・・」

姉上はしみじみと呟き、ほぉ・・と大きなため息をついた。

「それを、この姉を安心させるためにわざわざ伝えにきてくれたのですね。高彬、あなたは優しい子ですね」

「いえ。姉上にはぼくの気持ちが知られていましたし、すぐにお伝えしたいと思っただけです」

姉上は黙って頷き、ぼくは後宮を後にした。

姉上には、いつだったかの時に瑠璃さんへの気持ちを話してあった。

聞きだされた、の方が合ってるかもしれないけど。

どんな縁談を勧めても断るぼくに手を焼いた母上が、どうやら姉上に相談したらしく、ぼくに結婚を勧めるように、姉上に頼み込んだことがあったらしい。

それで姉上に呼ばれ、あれこれ話すうちに、気が付いたらぼくは瑠璃さんが好きなことを自白させられていた。

それ以来、姉上は数少ないぼくの片想いの応援者になってくれていたのだけど、だけど、姉上には姉上のある思いがあることをぼくは見抜いていた。

もしも、帝が瑠璃さんの心を射止め、入内するようなことになれば、また姉上の気苦労が増えることになる。

すでに何人もの女御、更衣がいるとは言え、そしてそれが仕方のないことだとしても、出来ることならこれ以上、増えて欲しくないと願うのは当然の気持ちだろう。

それは政治的な思惑とは掛け離れたところでの、自然な感情だ。

ぼくが瑠璃さんと結婚すれば、ひとつ姉上の気がかりがなくなることにもなり、だからぼくはすぐに姉上に報告をしたいと思ったのだった。

右近衛府に戻ると、秋篠中将がいた。

どうやら長い休みを終え、昼過ぎから出仕していたらしい。

「高彬」

ぼくの顔を見ると、苦りきった顔で近づいてきて

「今、帝からのお召で伺候してきたのだがな、いよいよ帝がお動きになられるようだ」

「は?」

帝がお動きになる?何に?

「何としてでも瑠璃姫を我が物にしようと入内させることをお考えのようで、近いうちに宣旨を下されると言うようなことまで仄めかせられてな。もしそんなことになったら、もう我々には手も足も出ない」

「・・・」

瑠璃さんが入内させられるだって?

───そんな馬鹿な!





<続>


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***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>2

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***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>2 ***






朝餉を食べ終え、ぼくはそのまま京に戻ることにした。

「昨日の今日で疲れてるんじゃない?もう少しゆっくりしていきなさいよ」

「そうですわ、少将さま。せめてもう一泊なさってお疲れを取ってから・・」

口々に引き留めてくれたけど、馬を引かせ跨る。

「色々、京でやらなきゃいけないことがあるから。瑠璃さんは少しここでゆっくりしてきたらいい」

帰る頃までには婚儀を整えておくから。

そう言いたかったけど、回りに人がいたから止めておいた。

代わりに瑠璃さんの目を思いを込めて見ると、瑠璃さんもぼくの目を見返して来て、そうして何も言わずにコクンと頷いた。

「気を付けて帰ってね」

「うん」

腹を蹴ると、嘶きをひとつ上げて馬が走り出す。

同じ道を走ってるはずなのに、来る時とは全く違う心持ちだった。

二度、馬の給水のために止まった以外は、休むことなく走り続け、夕刻前には京に戻ることが出来た。

自邸で着替えを済ませると、そのまま三条邸に向かう。

見慣れた女房が出迎えてくれ、ぼくの顔を見ると

「まぁ、右近少将さま。融さまはまだ宮中よりお戻りになられておりませんが・・」

「いや。今日は融じゃないんだ。内大臣さまはご在宅だろうか」

「大臣(おとど)さま、ですか・・?はぁ、いらっしゃいますが」

女房は首を傾げながら奥に下がって行き、少しすると母屋に通された。

「これはこれは高彬どの」

内大臣さまはぼくの手を取るようにして出迎えてくれ、ぼくは用意されていた円座に腰を下ろすと

「内大臣さま。今日はお願いがあって参りました」

両手を床に付いた。

「おぉ、どうなされた、高彬どの。そんなに畏まらんでも・・」

「瑠璃姫との結婚をお許し願いたく存じます。必ず幸せに致します」

一息に言い、深く頭を下げる。

しばらくたっても内大臣さまからの言葉がなく、不安に押しつぶされそうになった時

「ズズ」

と言う音が聞こえた。

ズズ・・・?

恐る恐る顔を上げると、内大臣さまは目を真っ赤にして盛大に鼻をすすっている。

「内大臣さま・・」

「嬉しい。嬉しいのじゃよ、高彬どの」

「・・・」

「今まで、こうして、わしにこんなことを言ってくる公達はおらんかった」

「でも、瑠璃姫は名だたる公達から求愛されて・・」

「うむ。確かに婚姻を持ちかけられたことは多々あった。しかしじゃな、瑠璃を必ず幸せにすると言ってくれたのは、高彬どのだけじゃ」

「・・・」

「高彬どののお人柄は、良くわかっておる。ぜひ瑠璃を頼みたい。瑠璃からはわしが説得しよう」

「いえ、あの・・」

すでに合意は取れていると言い掛けて、口をつぐんだ。

それを言うとしたら、吉野でのモロモロを言わなければならず・・・

いや、いいのか。気持ちは通じ合っているとだけ言っておけば・・・

「あの・・」

言い掛けた途端

「大臣さまに申し上げます。源定之さまがお見えでございます。いかがなさいましょうか」

いつ来たのか、廂に女房がやってきて手を付き口上を述べた。

「おう、定之どのか。・・・悪いがな、そう言うわけでな、高彬どの」

「内大臣さま、あの・・」

「何、心配はいらん。必ずや瑠璃を説得するからの。この内大臣に任せてもらいたい」

うんうん、と内大臣さまは頷かれ、そのまま部屋を出て行かれた。

「・・・」

まぁ、仕方ないか。

説得も何も、瑠璃さんは同意してくれてるんだし。

出された白湯を一口飲んで立ち上がり、三条邸を後にした。





<続>


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***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>1

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






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***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>1 ***






薄らと開いた目に飛び込んできた見慣れぬ天井に、一瞬(ここはどこだろう・・・)とぼんやりした頭で考える。

鳥の囀りと同時に、すぐに吉野の山荘であったことを思い出したぼくは、隣を見て、慌てて飛び起きた。

瑠璃さんがいない。

部屋には強くなった陽射しが入り込んできており、どうやら、あの後、すっかり眠り込んでしまったらしい。

あの後、と言うのは、明け方、二度目に瑠璃さんに手を出してしまった後、と言うことなんだけど。

邸内に人の気配はあるのだけど、ウロウロと出て行くのも失礼だし、さてどうしたものか・・と思っていると、衣擦れの音がして瑠璃さんが現れた。

すっかり着替えを済ませている。

「あ、起きたのね、高彬。・・・何よ、変な顔して」

夜具のそばに座りながら言い、ぼくの顔を訝しそうに覗き込んできた。

「いや、目が覚めたら瑠璃さんがいなかったから、てっきり本当に狐に化かされたんじゃないかと思ってたんだ」

「ひどい」

瑠璃さんは唇を尖らせ、目を細めてぼくを睨みつける振りをして───

そうして2人で吹きだしてしまう。

「すっかり寝過ごしてしまって面目ないよ」

「ううん、疲れてたのよ、きっと。京から休まずに吉野入りしたんだもの」

「うん」

「小萩がね、朝餉の用意ができたから持ってくるって。着替えられる?」

「うん」

瑠璃さんに手伝ってもらいながら、簡単に着替えを済ませると、ほどなくして小萩を先頭に数人の女房らが部屋にぞろぞろと入って来た。

皆、手に高杯を掲げ持っている。

ぼくと瑠璃さんの前に置き、その中に見慣れない杯を見つけて、ぼくと瑠璃さんは顔を見合わせた。

銀の杯の上に、丸い餅がある。

「小萩、これは・・」

「三日夜の餅でございます」

瑠璃さんの問いに小萩は顔を上げないままに言い

「ほんの気持ちばかりの真似事ですが・・、急いでご用意いたしました」

さらに頭を下げた。

「小萩・・・」

呟く瑠璃さんの顔が見る見る真っ赤になっていき、それを見ているぼくも、身体中がかぁっと熱くなる思いがする。

良く見ると、平伏している小萩も耳が赤いようで、この分だときっと顔も赤いに違いない。

小萩たちが退がって行った部屋で、ぼくたちはしばらく銀杯を前に黙り込み

「小萩にはバレてたのねぇ・・」

しみじみと瑠璃さんが言い

「・・うん」

ぼくも頷いた。

「三日夜の餅は、三日通った後の正式な露顕で食べるものなのに・・・」

「うん・・」

「小萩ったら本当に気が早いんだから、イヤになっちゃう」

「・・うん」

言ってる内容とは裏腹に、瑠璃さんの口調は湿りがちで、少し涙ぐんでいるようにも見える。

「せっかくだからいただこうよ。ぼくはどうしたらいいんだっけ?」

「三つを食べるのよ。一口で」

「そうか」

ぼくは銀杯から小さな餅を指で摘むと、口に放り込み三つを平らげた。

その間、瑠璃さんは真面目な顔でじっとぼくの顔を見ていた。

「瑠璃さんはどうするの?何個食べるの?瑠璃さんも三つ?」

「ううん、女の人は何個でもいいの。一個でも二個でも」

「じゃあ全部、どうぞ」

「そんなに食べないわよ。やぁねぇ、人を食いしん坊みたいに言って」

また瑠璃さんは頬を膨らませ、でも、すぐに真面目な顔に戻ると、餅に手を伸ばした。

小さな桜色の指先が餅を摘み、そのまま口に運ぶ。

真面目な顔で咀嚼していた瑠璃さんの口元が一瞬、歪んだと思ったら、ぽろりと涙が頬を伝った。

思わず流れた涙を、恥じるように瑠璃さんはごしごしと手で涙を拭き

「美味しい」

真っ赤な目で笑う。

「うん」

ぼくも笑って頷き返しながら、瑠璃さんを抱き寄せる。

抱きしめずにはいられなかった。





<続>


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