*** 筒井筒のお約束をもう一度 ~秋の宵夢~最終話<高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度~秋の宵夢~最終話 <高彬・初夜編> ***  









「何する気って・・・」

かき寄せた単で身体を隠し目を見開いている瑠璃さんに向かい、ぼくは呆然と呟いた。

何する気って・・・つまり、その・・・何と言うか、それこそが最終目的と言うか、目指す着地点と言うか・・・

結婚すると言うことは、ありていに言ってしまえば、ここが<未>か<既>かが大きな分かれ目なわけで、今まで瑠璃さんとは何度も「結婚したいね」「もうじき結婚だね」と話していたけれど、そいえば瑠璃さんは何をもってして<結婚>と考えていたのだろうか。

今の反応からして、まさかとは思うけど・・・。

「瑠璃さん」

さっき脱ぎ捨てた単を掴むと肩に掛け、瑠璃さんに近づく。

「まさかと思うけどさ・・・・瑠璃さんは、結婚するってどういうことだと思っていたの」

「え、どういうって・・・」

瑠璃さんの目が自信なさそうに瞬かれた。

「面と向かって聞かれると・・・困っちゃうんだけど・・な。・・・はは・・」

「・・・・・」

この様子からして・・・

「まさか・・・瑠璃さん、知らないの?」

顔を覗きこむと

「く、詳しくは・・・・知ら・・・ない・・・かも・・・」

「・・・・」

やはり、か・・・。

単を握り締めながら瑠璃さんが言い、ぼくは心の中でがっくりと肩を落としてしまった。

ここは四の五の言わせずに強行するか、きちんと手順を説明してからコトに及ぶか、ぼくの選ぶ道は二つに一つなわけで、そうしてぼくの事情を鑑みれば、強行したい気持ちは山々だけれど・・・。

強行か、説明か。うーむ。

かなりぼくも切迫した状況だしなぁ・・・。

だけど、瑠璃さんが驚きすぎてヘソ曲げて、次回からお預けなんてことになったら、目も当てられないし。

それにこういうのは最初が肝心だと聞くしな。

ちらりと瑠璃さんを見ると、緊張した面持ちで微動だにせずぼくを見ている。

「・・・・・・」

仕方ない。ここは納得しておいてもらった方がいいだろう。急がば回れ、だ。

「惚れ抜いた人と結婚すると後々苦労するぞ」と重行に言われたけれど、まさかこういう形で<苦労>するとは思ってもいなかった。

瑠璃さんの隣に座り、しばし考えをまとめる。

どうしたらロコツな表現を避け、かつ的確に伝えられるだろう・・・。

「あのさ、瑠璃さん」

隣でかすかに身じろぎする気配があった。

「瑠璃さんはさ、御ややってどうして出来るかを知ってるかい」

「はぁ・・御やや・・」

思わぬ言葉だったのか、気の抜けた声で瑠璃さんが言い

「そう、御ややだ」

ぼくは大きく頷いた。

「もしかして、出雲の神さまが授けて下さる・・・と思ってる?」

「そんなことは思ってないわ。馬鹿にしないでよ」

瞬時に瑠璃さんが答え、間髪入れずにぼくは畳み掛けた。

「じゃあ、どう思ってるの」

ここが肝心なところだ。

「だから・・・女の人の身体には御ややの卵があって、男の人の身体にも御ややの卵があるのよ」

「うん、そうだね。それで?」

「それで・・・だから、その卵が合わさって、御ややに・・・なるのよ」

「うん、そうだ。じゃあ、その卵はどうやって合わさるの?」

「だから、何かの方法で女の人の身体に入るの・・・よ・・・」

だんだんと口調があやふやなものになり、一拍おいて、瑠璃さんが悲鳴に近い声を上げた。

「い、入れるのー?!」

驚愕の表情を浮かべている。

「そう、挿れるんだよ」

結局、ロコツな表現になってしまったけれど、話してる内容が内容だけに仕方ないだろう。

「入れるって、入れるって・・・そんなの無理よ・・・だって、だって・・・」

「それが大丈夫なんだよ」

いや、ぼくも経験がないけれど、大丈夫なはずだし、百聞は一見にしかずと言うし、大丈夫かどうかは実践して二人で証明するしかないのだった。

「とにかく瑠璃さん、ぼくにまかせて」

瑠璃さんの手を取り言うと、瑠璃さんはごくりと唾を飲み込むとこくりと頷いた。

焦る気持ちを抑えて、もう一度、瑠璃さんの身体を横たえる。

瑠璃さんの反応は気に掛かるけど、正直、ぼくも限界が近づいていて、だけどなるべくゆっくりと驚かせないように身体を進めて行く。

ぼくが身体を進めれば、その分、瑠璃さんの身体が逃げて行き、なかなか思うように行かない。

「瑠璃さん、動かないで・・・」

「う、動いてるつもりはないんだけど・・・身体が勝手に・・・」

ぼくの下で言い訳するように言い、泣きべそでもかきそうな顔だった。

「・・・・・」

こうなったら、ある程度、強引に進めるしかないだろう。

ぼくも、もう・・・ダメだ。

瑠璃さんが動けないように押さえ込み、脚を開かせて身体を進める。

押し開くような感覚があり、瑠璃さんが息を飲む気配が伝わってきた。

「・・・いや・・・高彬・・・痛い・・・」

イヤイヤするように瑠璃さんが頭を振り、逃げようともがいている。

「ごめん、瑠璃さん・・・。少しだけ、我慢して」

「いや・・お願い、やめて・・」

泣きそうな声が聞こえ、だけど、可哀相だけど瑠璃さんのお願いを聞いてあげるわけには行かないのだった。

一気に身体を進めると、瑠璃さんは眉根に皺を寄せ、何かの衝撃に耐えるかのように目を閉じている。

瑠璃さんの中は信じられないくらいに気持ち良かった。

世の中にこれほどの強い感覚があるかと思うほどの気持ち良さで、身体中の神経が一点に集中しているようだった。

身震いと同時に抑えがたい衝動が湧き上がってくる。

「瑠璃さん・・」

なけなしの理性をかき集め、瑠璃さんに接吻をする。

繋がったまま接吻するたび、背中をぞくりと震え、本当にもう限界だった。

「瑠璃さん、動くよ・・・」

そう言ったか言わないか、定かではないけれど、ぼくは身体を動かし始めた。

「・・・・・い・・や・・!」

動きだした途端に瑠璃さんが顔をゆがめ、その顔があまりに辛そうで

「・・・痛い?」

ぼくは尋ねた。

「・・・ううん・・・・平気よ・・・」

「・・・・・」

とてものこと平気そうには見えず、強がりを言ってくれてることはすぐに判ったけれど、瑠璃さんの身体を慮る余裕はこれっぽちもなかった。

ごめん、瑠璃さん、我慢してもうらうしかないんだ・・・。

心の中で身勝手な謝りの言葉を口にして、欲望の赴くままに動いた。

「瑠璃さんっ・・」

その瞬間、強烈な快感が身体を貫いていき、ぼくはそのまま瑠璃さんの身体に倒れこんでいた。

完全に息が上がっている。

オトコとして馴染みのある快感だけれど、でも、比べ物にならないほどのもので、ぼくはしばし言葉を失ってしまった。

「瑠璃さん・・・」

ようやく息が整ったところで、顔を上げて瑠璃さんの顔を見ると、気のせいか瑠璃さんの目が潤んでいるように見える。

「高彬・・・」

瑠璃さんがそっと腕を回してくれて、その力は弱々しかったけれど、充分に幸せな気持ちだった。

「瑠璃さん」

目があって接吻をする。

何度かの接吻の後、そっと身体を離すと、瑠璃さんが全身で息を付いた。

瑠璃さんの肩を抱きしばらくは天井を眺めながら、瑠璃さんを自分のものに出来たという実感がじわじわと沸いてきてぼくは感無量だった。

「瑠璃さん」

顔を覗き込むと、目をそらされてしまい

「どうしたのさ、瑠璃さん」

頬をつつくと

「結婚するって・・・・大変なのね」

しみじみと瑠璃さんが言い、ぼくは思わず吹き出してしまった。

「そうかな」

「そうよ。あんなこと・・・するなんて」

うーん、瑠璃さんにして見たら確かにそうかもな。

「とりあえず、少し休むといいよ」

「・・・うん」

いつになく素直に瑠璃さんが頷き、次の瞬間、ぎょっとしたように身体を固まらせた。

「やだっ、怪我・・・?」

瑠璃さんが見ていたものは単に付いた赤いシミで、ぼくはすぐにそれが何かが判ったのだけれど、すっかり動転したように瑠璃さんは「血が・・血が・・」と顔を引きつらせている。

「瑠璃さん、怪我じゃないよ。その・・・初めての時、女の人は・・・そうなる・・・らしいからさ・・・」

痛い思いをさせた張本人としては何ともバツの悪い気がされるけれど、はっきり教えておいた方が良いと思い伝えると、放心したような顔をしていた瑠璃さんはやがてポロポロと泣きだし、ぼくはびっくりしてしまった。

「どうしたの、瑠璃さん」

「・・・・すごく痛かったんだから」

「瑠璃さん・・・・」

「高彬のせいなんだからね。高彬が、いけないんだからね・・。びっくりして、痛くて・・」

「ごめん、ごめんよ、瑠璃さん」

抱き寄せ謝りながら、安堵感が広がっていく。

───瑠璃さんの相手がぼくで本当に良かった。痛い思いをさせたのがぼくで良かった・・・。

瑠璃さんは怒るだろうけど、まごうことなき本心だった。

「痛い思いをさせてしまったね。ごめんよ」

なぐさめてもなだめてもベソベソと泣き続ける瑠璃さんの背をさすりながら、そういえば、ずっと遠い昔、転んで泣きべそをかくぼくを、瑠璃さんもこんな風になぐさめてくれたことを思い出す。

あの時、瑠璃さんはいつまでも泣きやまないぼくに業を煮やし、最後は背中をどやしつけてきたんだっけ・・・。

ま、ぼくはどやしつけたりしないけどな。

気付いたら静かになり、そっと覗きこむと、瑠璃さんは眠ったようだった。

ぼくも目を閉じて───

だけど眠れるわけなどないのだった。

腕の中に瑠璃さんがいる。

頬に残る涙をそっとぬぐってやり、額に接吻をする。

瑠璃さんの規則正しい呼吸に自分の呼吸を合わせ、もう一度、目を瞑り、少し考えてそっと腕を抜くと小袖を羽織って外に出た。

風に当たって、興奮しすぎた身体と頭を冷やしたかった。

勾欄に手を付き見上げた夜空には、あの日───瑠璃さんに初めて思いを伝えた日と同じ、上弦の月がぽっかりと浮かんでいる。

あの日から色んなことがあったけど、こうしてぼくは瑠璃さんを妻にすることが出来たわけで・・・

物音が聞こえた気がして室内に戻ると、いつのまに目を覚ましたのか、単姿の瑠璃さんが夜具の上にぺたんと座っており

「高彬・・」

寝ぼけているのか、ぼくの顔を見るとぼんやりと呟いた。

「どうしたのさ、瑠璃さん」

隣に座りながら聞くと、瑠璃さんは力なく頭を振り

「いなくなったのかと思っちゃった・・・」

聞き取れないほどの小さな声だった。

ぼくは瑠璃さんを抱きしめた。

「いなくなるわけないじゃないか。少し風に当たってただけだよ」

「うん・・」

一緒に横になり、ひとつの衾にくるまる。

虫の音だけが聞こえる静かな秋の宵、ぼくたちは今この都にたった二人しかいないかのように、ぴったりと身を寄せ合って眠った。 




***************************************




翌朝、まだ夜も明けきらぬうちに白梅院の自室に戻ると、見計らったかのようにすぐに大江がやってきた。

「高彬さま、どうでしたの?無事、結婚できましたの?私、帝が譲位などされないように祈っておりましたの!」

異様に興奮し矢継ぎ早に質問してくる。

「さ、何はともあれ、御文ですわ。後朝の文は早さが大事ですのよ」

部屋の隅には文机が置かれ、料紙と硯まで揃っている。

用意周到とはこのことで、大江が走って直々に三条邸に文を届けそうな勢いだった。

文机の前に腰を下ろす。

後朝の歌───

一夜を共にしたあとに贈る歌のことで・・・

───瑠璃さんは今頃、どうしているだろうか。

思いはすぐに瑠璃さんに飛んで行く。

さっき別れたばかりだと言うのに、もう瑠璃さんに会いたい。

会って好きだと言い、接吻をしたい。抱きしめたい。

そうだ、この気持ちが伝わるような、一世一代の歌を贈ろう。

願わくば瑠璃さんが、ぼくの歌で心を蕩かせてくれたらいいのだけれど。

格子の向こうが白み始め、遠く鳥のさえずりが聞こえている。

もうじき朝がくるのだろう。

瑠璃さん───

ぼくは勇んで筆を取ったのだった。






<終>


これにて完結です。

第1話をアップしたのが昨年の1月で、連載開始から実に一年半以上もかかっての完結でした。

たくさんの拍手や応援コメントをありがとうございました。

皆さんのお陰でゴールまで辿り着くことができました。感想などありましたらコメント欄よりお待ちしています。

長らくのお付き合い、本当にありがとうございました。

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*** 筒井筒のお約束をもう一度・・60 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・60 <高彬・初夜編> ***  









「若君、お車の準備が整いました」

将人に声を掛けられ立ち上がったところで、大江に付き添われた按察使が部屋に入ってきた。

「按察使・・・。大丈夫なのか、起きだしたりして」

一度、倒れたことのある按察使は、体調を崩しがちで、なるべく横になって身体を休めてもらっているのだ。

「高彬さまのこの佳き日に寝付いてなどいられませんわ。瑠璃姫さまとのご結婚おめでとうございます。ほんにようございました」

「ありがとう」

「行ってらっしゃいませ、高彬さま」

「うん、行って来る」

按察使の言葉に合わせ、一緒に頭を下げた大江にも目で合図して部屋を出る。

さすがに母親の前でミーハーっぷりをさらせないのか、神妙な顔をしているのが可笑しかった。

普段の大江だったら、ぼくが瑠璃さんとの結婚へと出向くとなれば、興奮のルツボと言うか、ドトウの質問攻めと言うか、そんな感じになるんだろうけどな。

───瑠璃さんと結婚。

そう。

今日、と言うか今夜は瑠璃さんとの結婚の日なのだ。

三条邸へと向かう牛車に揺られながら、不思議と心は凪いでいた。

一月前、瑠璃さんの記憶が戻った頃の方が落ち着かなかったような気がする。

重行には厳重注意を食らったけれど、権少将へ<夫>としての申し入れも果たしたし、「いよいよ瑠璃さんと結婚するんだ」と言う意識が常に心にあり、いつも気持ちが昂っていた。

だけど、結婚を一週間後に控えた辺りから妙に落ち着いてきて、近づけば近づくほどドキドキするかと思っていたのに、そこが自分でも不思議だった。

もしかしたら、肝が据わったとか、余裕が出て来たとか、そんな心持になれたのかも知れない。

物見窓からは秋の夜風が入り込み、八月に入り一気に季節が進んだようだった。

見上げた夜空は澄んでおり、窓からは見えないが、月が出ているのか牛飼童や車副の長い影を作っている。

壁に寄りかかり、ぼくは目を閉じた。

───瑠璃さん。





***********************************************





牛車を降り、庭を回って瑠璃さんの部屋を目指す。

遠く野犬の遠吠えが聞こえ、やがてそれも夜空に吸い込まれていった。

小砂利を踏みしだく音と、虫の音が聞こえる以外は怖いほどに静まり返っている。

階を上がると小萩が手を付いて待っており、ぼくの姿を認めると深々と頭を下げ、黙ったまま妻戸を押しあけた。

御簾の向こう、灯台のやわやわとした明りにぼんやりと浮かび上がる人影が目に入り、御簾の片端が持ち上がった。

そっと入って行くと、当たり前だけど瑠璃さんがいて、ぼくは───

度を失い、一瞬、立ち尽くしてしまった。

そうして、その瞬間、嫌と言うほど判ってしまったのだ。

心が凪いでいたのは、何も余裕が出て来たとかそんなことではなく、ただ単に実感がわかなくて、つまりは呆けてるような状態だけだったってことが。

瑠璃さんを目の当たりにして、息苦しいくらい鼓動が跳ね上がる。

「座ったら?」

瑠璃さんの視線に促されて腰を下ろしかけ、思いついて、円座に座らずに瑠璃さんの近くに座る。

「・・・瑠璃さん」

「高彬」

手を取ると、少し紅潮した顔で瑠璃さんが笑ってくれ、それだけで嬉しくなってしまった。

何か気の利いたことを、と考えている内、瑠璃さんが口を開いた。

「ねぇ、高彬」

「なんだい」

瑠璃さんのペースだなぁ、情けない、と思いつつ返事をすると

「吉野で言ってくれたこと・・・もう一度、聞きたいわ」

「え」

思いがけないことを言ってきた。

吉野で言ったこと?

「ほら・・・好きだって言ってくれたじゃない」

「え」

「もう一度、聞かせてよ」

「・・・・」

うーむ、と心の中で唸る。

「あの時は・・・、瑠璃さんが記憶を失っていたから・・・言えたことで・・さ・・・」

確かにプロポーズやら何やら色々言ったけれど、あれは瑠璃さんが記憶喪失だったことや、霊験あらたかな、み吉野と言う地、つまりは<非日常>だったからこそ言えたことであって、こうして京に帰ってきて改まって言ってくれと言われると・・・・

「なによぉ。記憶が戻ったら、言ってくれないの」

瑠璃さんが頬を膨らませる。

「い、いや、その、そういうわけじゃないんだけど・・・。男たるもの、そういうことをあまり軽々しく言うのは、ちょっと・・・」

「・・・じゃあ、いいわよ」

ふんと瑠璃さんがそっぽを向き、その横顔を見てたら、腹が決まった。

男たるもの、ここで言わなければ、それこそオトコじゃないだろう。

瑠璃さんが聞きたいと言うのなら、何度でも言ってやろうじゃないか・・・。

ひとつ息を吐き、瑠璃さんを抱き上げると、部屋の奥に設えられていた夜具にそっと運ぶ。

少し迷ったけど、直衣と単を脱いで小袖ひとつになった。

どうせ後で脱ぐんだし、ぼくが先に脱いだ方が瑠璃さんも、その・・・脱ぎやすいに違いない。

髪を梳き接吻をする。

瑠璃さん、好きだ、瑠璃さん、好きだ───

何度も何度も接吻をする。

好きだよ、瑠璃さん・・・。

このまま唇を離したくなかった。

だけど、離さなけらば言ってやることが出来ず、ぼくはほんの少しだけ唇を離した。

「瑠璃さん・・・好きだよ。・・・・好きだ」

わずかに唇が触れたまま、伝わるように心を込めて言う。

「瑠璃さんは?・・・瑠璃さんはどう?ぼくのこと・・・」

「・・好き・・・よ・・・」

かすかに触れたままの瑠璃さんの唇が震え、気が付いたらぼくは強く唇を押しあてていた。

深く強く唇を吸い、手は半ば無意識に瑠璃さんの単を開いていく。

すべてを剥ぎ取りたい欲望に流されないように気持を引き締め、だけどそんな理性が保たれるのはごくわずかな時間だと言うことは自分で判っていた。

「・・・瑠璃さん・・」

首すじに唇を這わせると、わずかにのけぞった瑠璃さんの細い喉と白い肌が露わになり、それだけのことで目が眩みそうになる。

首すじから喉、むき出しになった肩になぞる様に舌を這わせ、胸元を伝い先端に接吻をするとそのままそっと口に含んだ。

瑠璃さんの胸は信じられないくらいに柔らかかった。

瑠璃さんの身体が強張った気がして、ふと我に返る。

吉野での傷がまだ痛むのだろうか。

「まだ胸が・・・痛む?」

「ううん・・・そうじゃないの。ただ・・・恥ずかしくて・・・」

「・・・・・・・」

思ったことを言っただけなのだろうに、こんな言葉に身震いするなんて、ぼくは少しおかしいのかも知れないな・・・

そんな自嘲がふと胸を掠めたけど

「大丈夫だよ」

おくびにも出さずに接吻をし、そのまま単の合わせを開き、瑠璃さんの身体を全て剥き出しにすると、胸から腰まで身体の線をなぞるように手を這わせ、ぼくはためらうことなくその先まで指をすべらせた。

初めて触れるその場所は、温かくほんの少し湿っていて───

「・・・好きだよ・・・瑠璃さん」

言い終わらないうちに接吻をし、舌を割り入れ、瑠璃さんの舌を追いかける。

堪え切れなくなりぼくは態勢を変えると、瑠璃さんをしっかりと組み敷いた。

膝を開かせ、そのまま身体を進めて行くと

「ちょ、ちょっと!何する気よ!」

ぎょっとしたように瑠璃さんが跳ね上がり、ぼくは突き飛ばされてしまった。






<続>


一体全体、瑠璃はどうしたというのでしょう?・・・・などと書くのも白々しいくらい、皆さん、この先の展開はとうにご存じだとは思いますが、ここはひとつ、感情のこもらない棒読みで結構ですので

「瑠璃ってば、どうしちゃったのかしらー?」

とワクワクと(した振りをして)次の更新をお待ちいただけると、非常にありがたいです。

次回、いよいよフィナーレです。よろしくお付き合い下さい。


瑞月

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*** 筒井筒のお約束をもう一度・・59 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・59 <高彬・初夜編> ***  









車宿りで牛車を降りたところで、折りよく向うから権少将が従者を引き連れ歩いてくる姿が目に入った。

どうやら宿直明けで、今日はこのまま退出するらしいと言うのが、途切れ途切れに聞こえてくる、従者との会話でわかった。

「六条の邸に行く前に、右京の七条に寄ってくれ。辛気臭い文ばかり寄越されて敵わない。まったく少し情けをかけてやったらすぐに妻気取りとは・・・。たいしたご面相でもないくせに」

ぶつぶつと当り散らすように言い、正面に立つぼくに気付くとぎょっとしたように立ち止まり、次の瞬間、くるりと踵を返し足早に立ち去った。

「あ、若」

権少将の従者が呼びかける声を耳にしながら、すばやく後を追う。

───逃がすものか。

ぼくの顔を見てあからさまに逃げ出すなんて、やましいことがあると言ってるようなもんじゃないか。

後ろをチラチラと確認しつつ時に小走りになりながら先を急ぐ権少将を射程距離で追い続け、ようやく立ち止まったのは、宴の松原の北、図書寮の裏手だった。

これ以上逃げられないと悟ったのか権少将は悔しさを滲ませた顔で突っ立っている。

「お、俺に何か用か、右近少将」

勇ましい台詞の割には声が震えているようで、ぼくは(勝負あったな)と心の中で算段をつけた。

「用があったから、こうして追いかけてきたのですよ、権少将どの」

じりっと一歩近づくと、権少将が一歩後ずさる。

構わずに更に近づきつつ

「額の痣はいかがされましたか。陰ながら心配しておりました」

ことさらにゆっくりと言うと

「こ、こ、この痣は・・・・転んだ・・・・、いや、馬から落ちたの・・だ・・」

「ほぉ、馬から、ですか。私はてっきり・・・」

じりじりと間合いを詰めていくと、権少将も同じように後ずさり、やがてドンと背中が殿舎に当たった音がして動きが止まった。

「てっきり、意中の姫のお邸に忍び込み無理やり手篭めにしようとしたところを、二階厨子でも投げつけられたのかと思いましたよ」

「・・・・!」

ひゅうっと声にならない声が聞こえ、傍目にもそれと判るほどに顔を引き攣らせている。

「私の妻に、今後一切近づかないで頂きたい」

畳み掛けると、権少将はごくりと唾を飲み込み

「つ、つ、妻だなどと、お前と瑠璃姫はまだ所顕しをしていないじゃないか」

裏返った声で反論してきた。

「これは妙なことを、権少将どの」

ぼくは権少将を真正面から見据えた。

「な、何がだ」

「私は一言も<瑠璃姫>だなどと言っておりませんよ」

「・・・・・!」

「権少将どの。仏の顔も三度まで、と言う言葉をご存知ですか。次にもしこのようなことがあった時には、その時は・・」

「──右近少将!」

ふいに後ろから声を掛けられ、驚いて振り向くと、同僚の源重行が立っていた。

「高彬、おまえに客人だぞ」

「客人?」

ガサッと言う音と共に「覚えていろよ」の声が聞こえ、権少将はあたふたと立ち去って行き、よほど慌てていたのか沓が片方残されている。

左右に大きく揺れながら走り去る後姿を見ていると、いきなり背中を小突かれた。

「怖い顔して歩くおまえを見て、気になって付いて来て見れば・・・」

「・・・・・」

「ま、今のやり取りで大体の話は判ったけどな。・・・相変わらず、気に食わん奴だ」

権少将が走り去った方を見ながら言い

「うむ。・・・ところで客人とは?」

「嘘だ。ああでも言わなければ、殴りかかりそうだったからな」

「・・・・・」

「まったく、真面目で堅物が聞いて呆れるよ。熱くなりやがって。言質を取られるようなこと言う奴があるか、馬鹿」

「・・・すまん」

しばらくじろじろとぼくを見ていたかと思うと、にやりと笑い

「おまえがそこまで入れ込む姫さんとやら、気になるな」

「重行!」

「冗談だよ、冗談」

またしても背中を小突かれ、そのまま重行はぼくの肩に手を置くと

「そこまで惚れ込んだ姫さんを妻にすると、後々苦労するぞ。結婚は2番目に好きな相手とするのが良いらしいからな」

重々しく言い放った。

「放っておいてくれ。2番目なんか、いないし」

憮然と言うと

「おまえ・・・」

重行は目を見開き

「可愛いな」

くっくと笑ったのだった。




<続>

次回、いよいよ「秋の宵夢」です。ようやくここまで話が進みました。

それにしても

───じりじりと間合いを詰めていくと、権少将も同じように後ずさり、やがてドンと背中が殿舎に当たった音がして

この一文を書いた時

(あー、これでは高彬が権少将に『壁ドン』してるみたいではないか!)と突っ伏してしまいました。

前後を読まずに、ここだけ抜粋したら、これは明らかに高彬が迫ってますよ、ね。

そこに、嫉妬に駆られてやってきた重行・・・・。

いえいえ、そういう話ではありません。

男子(鷹男や守弥)にもてる高彬、宮廷で高彬を狙っているのは女官だけではないような気がして、守弥ではありませんが「御身、お大切に」と言ってあげたくなります。

物語りもいよいよ大詰め、夏休みの宿題をギリギリになってやりだす小学生並みの集中力でがんばっていますので、よろしくお願いいたします。


瑞月

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*** 筒井筒のお約束をもう一度・・58 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・58 <高彬・初夜編> ***  









ぼくの予想がまったくの見当違いならそれで良し、だけどもし当たっていたとしたら見過ごすわけには行かない。

瑠璃さん本人に聞くのが一番なんだけど、だけど以前に権少将が夜這いに来た時、その後、瑠璃さんはぼくと権少将が職場で上手くいっているかを気にしていたことを考えると、聞いたって本当のことを言わないかも知れない。

手っ取り早いのは小萩に聞くことなんだけど、小萩がぼくに話してくれるとも思えないしな・・・。

あれこれ考えて、浮かんできたのは大江だった。

大江は、ぼくが吉野に行ってからこっち小萩と文のやりとりをしてるみたいだし、何か有力な情報を耳にしてるんじゃないだろうか。

自邸に戻ると、白湯を持ってきた大江に

「大江、そういえばね、瑠璃さんの記憶が戻ったよ」

さりげなく、だけど探りを入れてみると

「まぁっ!本当でございますの、高彬さま!」

白湯を放り投げるようにしてぼくの近くに座り込んできた。

「いつでございますの?記憶は戻ったけど、すっかりぽっかりと高彬さまのことはお忘れになっているとか、そういうことはございませんの?」

「いや、そういうことはないけど・・・」

うーむ、この調子だと大江も何も知らないみたいだな。

「それで、どうやって瑠璃姫さまの記憶は戻りましたの?何かこう、劇的と言いますか、ロマンチックな出来事がおありになりましたの?」

「さぁ、どうだろうね」

それを知りたいと探っているんじゃないか、と思いつつ、適当に相槌を打つと、それをどう受け取ったのか

「まぁ、高彬さまったら内緒になんかされて。うふふ。いいですわよ、高彬さまがその気なら、私、自分で調べて見せますわ」

握りこぶしなんか作り、一人で盛り上がっている。

「・・・大江。若君の前で何を騒いでいるのだ、はしたない。下がりなさい」

急に声がして振り向くと、いつからいたのか部屋の隅に守弥が控えていた。

「若君。ご所望の「白氏文集」の鈔本が先ほど届きました」

そう言ったきり、眉ひとつ動かさずに座りこんでいる。

瑠璃さんの記憶が戻ったことは、今の会話で知ってるはずなのに、守弥は触れる気がないらしい。

「守弥、瑠璃さんの記憶が戻ったんだよ」

「はい、そのようですね」

「・・・・」

陰と陽、暗と明。

両極端で、ほんと疲れる兄妹だよ、まったく。




**************************************************




翌日の朝の早い時刻に、大江が息せき切って部屋にやってきた。

「高彬さま、聞きましたわよ。何てドラマチックなのでしょう・・!」

言うなり「ほぉ・・」と大きなため息を付き、胸をかき抱いている。

「瑠璃姫さまに横恋慕する公達が、夜半、部屋にやってきて、想いを遂げようとしたところ、瑠璃姫さまは婚約者を想い抵抗を続け・・・・あ、婚約者とはもちろん高彬さまのことですのよ」

別に質問したわけでもないのに勝手に注釈を入れると

「『姫!』『お止めくださいませ』『嗚呼、姫!私をお忘れですか?!』『わたくしには想う方が・・』そこに現れたのが、驚くなかれ、煌姫さまなのですわ。瑠璃姫さまの一大事とばかり、そばにあった二階厨子を公達めがけて投げつけたのです!」

「・・・・・」

「公達が倒れこみ、巻き添えを食った形で瑠璃姫さまも倒れ、何とまぁ、その拍子に記憶を取り戻したのですわ。煌姫さま付きの女房の若狭が言うのですもの、間違いありませんわ。ついこの間まで白梅院にいた煌姫さまが瑠璃姫さまをお助けしたなんて、私も嬉しい・・・・あ、高彬さま、どちらへ・・・!」

ぼくはすっくと立ち上がると、そのまま車宿りに行き宮廷へと向かった。

やっぱりだ。

牛車の中でぼくは奥歯を噛み締めた。

煌姫が出てきたことは意外だったけど、だけど大まかではぼくが睨んだ通りだった。

あの日、権少将が右近衛府にやってきたのは、ぼくに用があって所在を聞きにきたわけじゃなかったんだ。

重行の言葉通り、ぼくが宿直かどうかだけを確認しにきたんだ。

宿直ということは、つまりは三条邸に行かないということだから。

通りで一晩待っても控えの間にやってこない筈だよ。

融があれだけぼくを避けていたのは、口止めされていたことが<瑠璃さんの記憶が戻ったこと>だけじゃなかったからなんだろう。

ぼくが権少将と揉めないように気を回したんだろうな。

怖い思いをしたと言うのに、まったく瑠璃さんは・・・・

我儘なようでいて、どっか気を遣う人なんだから───

こもごも思ううち、牛車は大内裏の門をくぐった。





<続>

いよいよゴールが見えてきました。

おそらく、あと5~6話で最終話を迎えられると思います。

よろしければもうしばらくお付き合いくださいませ。


(←お礼画像&SS付きです)

*** 筒井筒のお約束をもう一度・・57 <高彬・初夜編> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

           ※このお話は初夜編(完結済み)の高彬サイドの話です。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度・・57 <高彬・初夜編> ***  









「ねぇ、瑠璃さん、もう一度聞くけど、ここがどこだがわかっているよね」

瑠璃さんを座らせ、声を改めて問いただすと

「わかってるわよぉ・・・だから記憶が戻ったことを早く高彬に・・・・」

下を向き、決まり悪そうにしきりに扇をいじりながら、それでも言い募ってくる。

「それは女御さまから伺ったよ。ぼくをびっくりさせるために、瑠璃さんが後宮に来たいと言って、女御さまもそれをご承知したと」

「そうなのよ、ただ、それだけの気持ちで、つい・・・」

「つい、後宮にきたってわけだね」

「白梅院に行こうかとも思ったんだけど、いつも同じじゃ芸がないかな、なんてさ。あはは・・・」

「芸、がね」

瑠璃さんにこれ以上、芸を磨かれたりでもしたら、ぼくの命はいくつあっても足りないに違いない。

じろりと睨んでやると

「まさか・・その・・帝に、会うなんて・・・思ってもいなくて、まして、あんな風に転がり出るなんて・・・その・・・・」

つかえつかえにぼくの目を見ながら話していた瑠璃さんの言葉が、最後には消え入るように小さくなり、やがて口をつぐんで俯いてしまった。

「恥かかせちゃって・・・本当にごめんな・・・さい」

俯いたまま唇をかみ締め、思案気に眉を寄せている。

伏せた瞼が細かく振るえているのが見て取れて、ぼくは内心慌ててしまった。

せっかく記憶が戻ったと言うのに、しょっぱなに泣かせてどうするんだ。

ぼくに早く知らせたいと思ってくれた気持ちは本当なんだろうし。

瑠璃さんだってこんなに反省しているじゃないか・・・。

気付けば瑠璃さんを叱らない理由ばかりを考えていて、ぼくは小さく笑ってしまった。

───まったくぼくは瑠璃さんに甘いよな。

「記憶が戻ってよかったね、瑠璃さん」

顔を上げた瑠璃さんに笑いかけると

「・・・怒ってないの?」

恐る恐ると言う感じで瑠璃さんがぼくの顔を覗きこんできた。

「もういいさ。帝が承香殿に来られたのは、本当に偶然だったんだろうし」

「ほんとにほんとに、もう怒ってない?」

「怒ってないさ。考えてみたら、瑠璃さんらしいと言えば、こんなに瑠璃さんらしいことはないからね。女御が瑠璃さんを後宮に誘ったときに、こうなることまで想像しておけばよかったんだ。それが出来なかったぼくの判断ミスだね」

本当にそこが悔やまれる。

姉上と瑠璃さんのノリが似ていると思った時点で、何か防御策をたてておくべきだったのだ。

瑠璃さんだけを責めるのは可哀相だし、何より、早くにぼくに会いたいと思ってくれたわけだし・・・。

「高彬」

瑠璃さんがぼくの名を呼んだのと、ぼくが瑠璃さんを抱き寄せたのが同時だった。

「記憶が戻って、本当によかった」

「うん」

腕の中の瑠璃さんが頷き、ぼくは更に回した腕に力を込めた。

───最初にこの言葉を言ってあげれば良かったな・・・・

そう思いながら瑠璃さんの顎に手をかけそっと近づいて行くと

「だめよ、人が来るわ」

瑠璃さんに押し戻されてしまった。

「大丈夫だよ」

「高彬の『大丈夫』は信じないんだから!この前だって・・・」

この前・・・?

あぁ、この間の三条邸でのことか。

あの時は途中で小萩が来て邪魔されたんだっけ・・・。

それならと瑠璃さんを更に奥の部屋へと連れ込み、続きを試みようとすると

「もう、高彬ったら!ここがどこだかわかっているの」

その言い方はさっきのぼくの口調を真似しているに違いなく、こういう茶目っ気はまさしく瑠璃さんのもので、変な言い方だけど記憶が戻ったということがしみじみと実感されるのだった。

「後宮、です」

今度はぼくが瑠璃さんの口調を真似て答え、目が合って笑い合う。

瑠璃さんが何かを言いかけ、それより先にすばやく接吻をした。

瑠璃さんがびっくりしている気配が伝わってきたけど、構わずに強引に唇を合わせると、解放された途端

「もう!」

と、瑠璃さんが睨みつけてきた。

軽くいなしながら、ふと思いついたことがあった。

「そういえば、融に口止めしてただろ」

ここのところ融がぼくを避けていたのは、きっと記憶が戻ったことを口止めされていたからなのだろう。

「だってあの子、すぐ顔に出るタイプだし、あんたはあんたで変にするどいとこあるし。ともかく、あっと驚かせたかったのよ」

「ふぅん、じゃあ大成功だよ、瑠璃さん。本当にびっくりしたから。座りながらでも腰って抜かすものなんだって判ったよ」

「あの時の高彬の顔ったら」

その時を思い出したのか瑠璃さんは含み笑いをし

「ひどいな」

「ふふふ・・・」

と何だかいい雰囲気になってしまい、思えば滅多に見ることのない瑠璃さんの正装姿はなかなかに魅力的でもあり、ぼくは瑠璃さんをもう一度、抱き寄せた。

「早く・・・結婚したいね」

「・・・うん」

こくりと瑠璃さんは頷き

「あと一月で、瑠璃さんと・・・」 

言いながら、あと一月もお預けなのか・・と落胆してるところもあり、やはり薄暗い奥の部屋に2人きりと言うのは、かなり酷な状況なのだった。

いい雰囲気に押されて、思わず回した腕に力が入ってしまい、何とも妖しい心持になりかけたところを制したのは瑠璃さんだった。

「もう仕事に戻った方がいいわ」

女の勘で何かを察したのか、キビキビ言うとさっと身体を離した。

「あ・・・・、うん」

かなり名残惜しい気がするけど、さっき自分で言った通りここは後宮なわけで、いつまでもいい雰囲気に浸っているわけにはいかず、ぼくは部屋を出た。

右近衛府へと戻る前、用があって立ち寄った太政官府で、長い簀子縁の向こうからやってくる人影があった。

近づいてみたら権少将で、ぼくだと気付いてるはずなのに、会釈どころか目線すらこっちによこさない。

すれ違いざまにちらりと見た感じでは、いつぞやの痣はまだうっすらと残っているようだった。

まぁ、ぼくには関係のないことだ。

痴話喧嘩だろうが、立ち回りだろうが、好きにやっていればいいわけで・・・・

次の瞬間、ふと脈絡もなくある疑問が胸にわいてきた。

───そういえば瑠璃さんの記憶は、どうやって戻ったんだろう?何かきっかけでもあったのだろうか・・?

当然、思うはずの疑問で、だけど、今の今、唐突にわいてきた疑問だった。

何か強い衝撃があって記憶が戻った人がいると聞いたことがあるけれど・・。

衝撃・・・?

立ち止まり、権少将を振り返る。

記憶が戻った経緯は、今度会った時、瑠璃さん本人に聞けばいいだけのことだ。

それだけのことじゃないか・・・。

そう思うそばから、どうしようもなく胸が騒ぎだす。

権少将がぼくを訪ねて来たこと、翌日こさえてきた痣、更には融がぼくを避けだした時期などが頭の中でぐるぐると回り、やがてひとつの疑惑が浮かび上がってきた。

───まさか、な。

『あんたはあんたで変にするどいとこあるし』

奇しくも瑠璃さんがさっき言った言葉で、もしそれが本当で、ぼくのこの考えが当たっていたとしたら───。

遠のいていく権少将の足音を聞きながら、ぼくは金縛りにあったかのようにその場に立ち尽くしていたのだった。





<続>

高彬、権少将をロックオンです。


(←お礼画像&SS付きです)
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